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欧州の海で異常な高温が常態化、「海洋熱波」が漁業と沿岸地域を直撃

海洋熱波は、海水温がその地域の過去の平均を大幅に上回る状態が少なくとも5日間続く現象を指す。
欧州熱波のイメージ(Getty Images)

欧州周辺の海域で今夏、記録的な高温が観測された。ロイター通信によると、欧州の2026年6~8月の海水温は衛星観測で信頼性の高いデータが得られるようになった1982年以降で過去最高となった。地中海からドーバー海峡まで広い範囲で記録が更新され、スペイン・マヨルカ島沖では8月5日、港湾当局の観測網として過去最高となる33.02度を記録した。

海洋熱波は、海水温がその地域の過去の平均を大幅に上回る状態が少なくとも5日間続く現象を指す。欧州では温暖化に伴って海洋熱波の頻度や強度、広がりが増しており、海が吸収した余分な熱が長期間残ることで、生態系そのものが変化している。

影響が顕著なのがフランスとスペインの大西洋岸に広がるビスケー湾だ。6~8月の平均海水温は21.4度となり、1991~2020年平均を2.4度上回った。8月13日には23.2度まで上昇し、衛星観測時代の最高値を記録した。海洋熱波の日数は8月末までに186日に達し、年間の大半を異常高温が覆う状態となった。

海水温の上昇は、漁業資源の生息環境を変えている。スペイン北部では、冷たい海水を必要とするコンブなどの大型海藻が減少し、アストゥリアス沿岸では2010年以降の調査から、その約95%が失われたとする研究者の推計もある。海藻の森は魚介類の餌場や隠れ場所、繁殖場所となるため、その衰退はロブスターやザリガニ、ウニなど周辺の漁業資源にも影響を及ぼしている。

一方、海水温の上昇によって南方の生物が北へ移動する現象も進んでいる。地中海ではスエズ運河を通じて紅海などから外来種が入り込み、在来種との競争や食物連鎖の変化を引き起こしている。地中海にはすでに1000種を超える非在来種が存在するとされ、漁業への影響が懸念されている。

イギリス南部では、これまでほとんど見られなかったマダコの漁獲量が急増している。英国海洋管理機関の集計では、2025年の漁獲量は約2600トンで、2026年は9月時点ですでに3000トンを超えた。温暖化によって幼生が生き残りやすくなったためとみられる。

ただし、マダコの増加は漁業全体にとって単純な恩恵ではない。マダコはカニやロブスター、ホタテなどを捕食するため、英国南部の甲殻類漁業では深刻な打撃となっている。漁業者の一部はマダコ漁への転換を進めているものの、必要な設備を持たない漁船も多く、南デボンと英仏海峡の漁業組合では過去1年間に90隻のうち4隻が廃業したという。

欧州の漁業が直面する問題は、単に漁獲量が減ることだけではない。従来の魚種が減少する一方で新たな生物が増え、漁場や漁法そのものが変化するため、地域の漁業者は従来の経験だけでは対応しにくくなっている。欧州環境庁も、海洋熱波は欧州の地域海でより頻繁かつ長期化しており、漁業や養殖業など、海に依存する沿岸地域社会へのリスクを高めていると指摘している。

海洋の高温化は、気温上昇の影響が陸上だけにとどまらないことを示している。今後、海洋熱波がさらに頻発すれば、魚種の分布、生態系、漁獲量だけでなく、沿岸地域の雇用や食文化にも変化が及ぶ可能性がある。

欧州では温暖化への対応と同時に、変化する海洋環境を前提とした漁業管理や生態系の回復策が求められている。

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