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欧州熱波、「保険の空白」で企業の損失拡大、売り上げ減少、労働生産性低下

猛暑による売り上げ減少や労働生産性の低下、冷房費の増加などで損失が膨らむ一方、こうした被害の多くは従来の事業中断保険では補償されない。
2026年8月13日/イギリス、ロンドン市内(ロイター通信)

欧州で記録的な熱波が相次ぎ、企業活動への影響が深刻化している。猛暑による売り上げ減少や労働生産性の低下、冷房費の増加などで損失が膨らむ一方、こうした被害の多くは従来の事業中断保険では補償されない。気候変動によって高温が常態化する中、企業の「保険の空白」が拡大している。

イタリア北部パドバでは100年以上続く夕方の習慣「アペリティーボ」が熱波の影響を受けている。例年なら午後6~7時に屋外席で飲食を楽しむ人が多いが、猛暑を避けて冷房の効いた屋内に移動するため、屋外席が空席になるケースが増えている。同市と周辺の約600の飲食関連事業者を対象とした調査では、最近の熱波の際に8割以上が約20%の売上減少を報告した。

米格付け会社ムーディーズによると、昨夏の欧州の熱波による経済損失は430億ユーロに達した一方、保険金の支払いは約5億ユーロにとどまった。熱波は洪水や暴風雨のように建物を直接破壊するとは限らず、消費の減少や業務の停滞、従業員の生産性低下など間接的な損失を引き起こす。そのため、従来型の保険では補償対象とならない。

影響は飲食業に限らない。鉄道の遅延、農作物の収量低下、工場の冷却コスト上昇など、幅広い分野で損失が生じている。欧州の保険規制当局が2023年に中小企業約9000社を調査したところ、財物保険に事業中断補償を付けていた企業は28%にとどまり、物的損害を伴わない事業中断を補償する保険への加入は17%だった。

こうした「保険の空白」を埋める手段として注目されているのが、一定の気温を超えると損害の査定を待たずに保険金を支払う「パラメトリック保険」だ。農業分野ではすでに利用されており、今後は輸送や労働者の保護などへの拡大も期待されている。欧州の市場規模は2031年までに79億3000万ドルに達するとの予測もある。

ただ、保険だけでは対応しきれない。企業には冷却設備への投資や職場環境の見直し、サプライチェーンの耐熱性を検証するなど、損失そのものを減らす対策が求められる。欧州は世界で最も速く温暖化が進む大陸とされる。熱波は一時的な異常気象ではなく、企業が継続的に備えるべきリスクになりつつある。

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