エアバス社の最高経営責任者、航空機メーカーの置かれている状況は「非常に厳しい」と述べた

エアバス社の社長兼CEOのギヨーム・フォーリィ氏は報道機関に対し、「これまでにない勢いで現金(預金)が流出している」と同社の現状を説明した。

今月、同社は航空機の生産を3分の1まで削減すると発表した。理由はコロナウイルスによりパンデミックの影響が長期化し、航空・観光産業が大きく縮小すると予想されているためだ。

ロイター通信によると、フォーリィCEOは約135,000人のスタッフ全員が人員削減の対象になり得る、解雇に備えてほしいと述べ、同社が危機的状況にあることを警告した。

今週、エアバス社は2020年第1四半期の財務・業績情報を公開する予定である。パンデミックおよびロックダウンが始まって以降、全世界の航空会社、航空機メーカーは苦境に立たされており、同社だけでなく各社の動向にも注目が集まっている。

航空業界のニュースウェブサイト、フライトグローバルのグレッグ・ウォルドロン氏は、「コロナウイルスはエアバス社などの航空機メーカー、下請け会社などの経営に大きな影響を与えている。かつて経験したことのない危機的状況に置かれ、各社とも対応に苦慮、混乱していると言ってもいいだろう」と述べた。

飛行機と社会的距離/三密を回避したい航空会社の苦悩

コロナショック

今、エアバス社に航空機の新規生産を依頼する航空会社は1社も存在しない。新型機も旧型機も関係なく、新たな受注は全くもって期待できない状態である。ウォルドロン氏は、「エアバス社の業績見通しはこの数カ月で、非常にポジティブ(最高)からネガティブ(最低)に急降下した。他の航空機メーカー、航空会社も同様だ」と述べた。

パンデミックおよびロックダウンの対応に伴い、当社は既にフランスで働く約3,000人の従業員に対し、政府の支援を受けるよう要請(レイオフではない)。同工場の主力生産機であるナローボディ機(A320など)の生産数を大幅に縮小すると発表した。

A320などの機体に使用する主翼は、ウェールズ北部のブロートンおよびブリストル主翼工場で生産されている。両工場で働く従業員は約13,500人。A320他の生産が縮小されれば、両工場の雇用にも影響を与えることは必須であろう。

ロックダウンの終了時期は全く見通せず、仮に経済活動を再開させる国が増えたとしても、航空機に搭乗し他国に移動する人の数がパンデミック前の水準に戻るには、恐ろしい時間がかかるはずだ。そして、航空会社の利用者が減れば、航空機メーカーの生産に甚大なダメージを与えることは誰の目にも明らかである。

この危機を乗り切るためには、政府の支援が欠かせない。アメリカを筆頭に、各国が航空産業への支援を発表している。大手航空会社のアメリカン航空が受けた支援額は58億ドル(約6,200億円)、デルタ航空は54億ドル(約5,800億円)。数十億ドル規模の支援を受けねば、航空会社および航空機メーカーの存続はままならないのだ。

エアバス社のCEOは機体の減産等で危機を乗り切りたいと考えているが、コロナウイルスの終息が見通せぬ今、人員整理は避けられぬ状況であろう。ウォルドロン氏は、「エアバス社は欧州の産業に欠かせない、非常に重要な役目を担っている。各国は同社の存続に力を注ぐだろう。しかし、全てを支援でまかなうことはできない」と述べた。

エアバス社の業績が劇的に回復する可能性はゼロに近い。数十億ドルの支援を投じ急場をしのいだとしても、航空会社に顧客が戻らねば、次の危機がやってくるまでの時間稼ぎにしかならない。同社の現金(預金)流出を減らすためには、工場を縮小・閉鎖し、さらに人員を減らす以外手はない。

フォーリィCEOの公開した文書の内容は、ロイター社、ファイナンシャルタイムズ、ブルームバーグによって報告された。

エアバス社のライバル、ボーイング社は、ベストセラー機であった737MAXの墜落事故(ライオン・エアとエチオピア航空)により、同機の全世界飛行停止処分、生産停止に追い込まれ、コロナウイルスが発生する以前から大きな問題を抱えていた。

25日、ボーイング社はブラジルの大手航空機メーカー、エンブラエル社との提携計画を撤回。一部のアナリストはコロナウイルスが原因と考えているようだが、同社は契約上の問題があったと述べるにとどめている。

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