エールフランス=7,500人以上を削減

コロナショックからの脱却を目指すエールフランス社は、フランスの主要グループで働く7,500人以上の人員を削減すると発表した。

欧州第2位の航空会社は、まずグループ子会社の”エールフランスオップ!社”で1,020人のスタッフにクビを告げるという。オップ!社は7月3日に声明を発表。「貴重な人材が失われる」と述べた。なお、人員削減は今後3年間で行われる予定。

エールフランス社はコロナウイルスによって航空業界がこれまで経験したことのない不確実性にさらされ、「危機からの脱却と回復は難しく、険しい。ロックダウンは解除されたが、需要が元の水準に戻ることはないだろう」と述べた。

パンデミックの発生に伴い、同社は収益の95%を失った。これは1日あたり1,500万ユーロ(約18億円)の損失を意味し、3月初旬以降、キャッシュの流出が際限なく続いていた。

同社は乗客が仮に戻ったとしても、満席状態でのフライトは難しいと考えていた。搭乗率制限を課した状態でのフライトは、収益減を意味する。少なくとも2024年まではコロナショックの影響が続くだろうと同社の関係者は見積もっていた。

エールフランス社で働く41,000人のうち、6,000人が2022年までに削減される予定。これに伴い、依願退職するスタッフが増えると予想されており、同社は削減予定の半数が自然離職するだろう、と述べた。

関係者によると、エールフランス社およびオップ!社の労働組合と協力し、スタッフの早期退職手配、新しい職場探しの手伝い等を計画的に実施する予定だという。

今回の厳しい復興計画は7月の終わりに提示される予定。リストラ計画を把握した労働組合メンバーと一部のスタッフは、シャルル・ド・ゴール国際空港のオフィス近くで抗議活動を行った。

ロックダウンに伴い、世界の航空産業および航空会社、それに関連する企業は壊滅的な被害を受けた。フランス政府は旅行者激減の救済措置として、国内の航空会社に対する数十億ユーロの支援を約束している。

エールフランス社が融資を受けるためには、国内線の一部区間を廃止し、二酸化炭素の排出量削減に貢献する必要がある。また、他の航空会社も同様。政府は乗客数がすぐ元の水準に戻るとは思っておらず、便数増で少しでも利益を確保したいと考える航空会社に対し、温暖化対策への協力を要請した。

イギリスの航空大手、イージージェット社は、スタッフを3分の1まで減らすかもしれないと述べ、航空業界の置かれている厳しい現状を憂いていた。

6月、ドイツ最大の航空会社であるルフトハンザドイツ航空は22,000人規模の削減計画を発表。また同月、ブリティッシュ・エアウェイズ社は、スタッフ42,000人中、最大12,000人を解雇すると発表した。

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エアバス=15,000人を削減

航空大手のエアバス社は、コロナショックに対処すべく、15,000人規模の人員削減計画を発表した。これにより、イギリスで約1,700人、ドイツ、スペインなどの工場でも数千人のスタッフが解雇を言い渡されることになった。

今回の発表を受け、イギリス最大の労働組合”ユナイト”は、「イギリスの航空宇宙部門に対する産業破壊行為を容認することはできない」と述べた。

エアバス社では約134,000人のスタッフが働いている。なお、イギリス国内で解雇の対象となる工場(施設)は、フリントシャー地区のブロートン工場および、フィルトンにある2つの民間航空機部門とのこと。

ウェールズのケン・スケーツ大臣は、今回の発表を「壊滅的な人員削減計画」と表現し、ジョンソン政権に航空部門へのさらなる支援を求めた。

ウェールズ、フリントシャーのブロートン工場は、地区の基幹産業である。この地区で生活する6,000人の住民はエアバス社と何らかの関係を構築しており、1,000人規模の人員削減が行われれば、集落全体に甚大な影響を与えることは間違いないだろう。

スケーツ大臣は、フリントシャー地区でかなりの失業者が出ると予想。同社のリストラ計画に一定の理解を示しつつも、政府へのさらなる支援および雇用回復計画実施を求め、「今後3週間以内に宇宙、自動車、製造産業の将来について協議する首脳会談を招集し、ジョンソン政権に支援への圧力をかける。ウェールズの雇用はロンドンのように強固ではない。国に尽くしてきた労働者を守らなければならない」と述べた。

一方、ウェールズの国務長官を務めるサイモン・ハート氏はラジオウェールズに出演し、「イギリス政府の支援は足りない。しかし、ウェールズ政府にも行わねばならない役割がある。対象地域の保護を徹底することが重要だ。スケーツ大臣はイギリス政府に必要な要請を行い、かつ、自身も支援に向けた行動をとらねばならないだろう」と述べた。

ボリス・ジョンソン首相は、航空産業に対する6,000億ポンド(約80兆円)規模の投資計画を発表している。

英労働組合、ユナイトウェールズ地域書記長を務めるピーター・ヒューズ氏はBBCの取材に対し、「私たちはブロートン工場で働く人々のために行動する。ゆっくりと時間をかけた冗長な話し合いはいらない。支援が遅れると、1,000人規模の雇用が失われる」と警告した。

エアバス社のギヨーム・フォーリーCEOは、「航空産業業界は、これまでに経験したことのない深刻な危機に直面している。同社においては、ここ数カ月で生産量を40%縮小し、少なくとも2023年までこの状況が続くと予想している。今回の人員削減計画は、最初のショックを吸収する緩衝材になった」と語った。

労働党のジム・マクマホン氏はジョンソン政権に対し、航空産業への支援強化を求めた。「労働党はコロナウイルスの影響を強く受けた産業に対するフォローを要請する。また、いかなる事態にあろうと、高い労働基準と環境を欠かしてはならない。航空産業に対しては、雇用の確保、サプライチェーンの保護をサポートする」

これに対し政府のスポークスマンは、「エアバス社のスタッフおよびその家族が困難な状況に置かれていることを理解し、影響を受けるあらゆる人にできる限りの支援を尽くす用意がある。関係機関と緊密に連携し、航空産業回復に向け全力を上げなければならない」と述べた。

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