郵送投票の行方

米国郵政公社(USPS)は、数百万票もの郵送票が11月3日の大統領選挙当日に開票できない可能性がある、と警告した。

先月、全国の州に充てた書簡の中で当局は、「開票日当日までにすべての郵送票が届く保証はない。恐らく、消印などに問題のある票がかなり出てくるだろう。何より、膨大な郵送票の安全を確保したうえで選挙管理委員会に届けるためには、とてつもないマンパワーを要す」と述べている。

この発言を受け一部の専門家たちは、ドナルド・トランプ大統領の忠実なる支持者であるUSPSの「配達鈍化」発言を非難した。

今年の大統領選挙はコロナウイルスの影響に伴い、前例のない数の有権者が郵送投票を選択すると予想されている。なお、現在、全国の州でそれの実施に向けた法整備が進められているところである。

8月13日、トランプ大統領は改めて郵送投票への反対を表明、USPSへの資金(予算)をストップすると明言した。

トランプ大統領は何度も郵送投票が不正や改ざんにつながると指摘。これに対し対立候補のジョー・バイデン氏は、コロナウイルスの影響を最小限に抑えることが重要だと反論している。

アメリカの選挙システムに精通する専門家は、「同国内でこれまでに行われてきた郵送投票は、不正や改ざんとは無縁だった」と断言した。

トランプ氏の郵送投票反対発言を受け、バラク・オバマ前大統領はツイートを投稿。「今、優先すべきはコロナウイルス対策である。トランプ大統領は郵送投票を封じ、自分が優位に立つことしか考えていない」と強く非難した。

米国議会のトップ、民主党のナンシー・ペロシ下院議長とチャック・シューマー上院総務は、トランプ大統領のUSPSへの攻撃を非難し、「2020年11月3日の選挙がトランプの妨害行為なしに進むことを求める」と要求した。

両議院の発言は、AxiosとSurvey Monkeyによる世論調査の結果を受けてのものである。それによると、共和党有権者の75%が直接投票する予定に対し、民主党有権者は半数以上が郵送投票を利用すると回答している。

つまり、郵送投票が何らかの理由でシャットダウンされれば、コロナウイルスへの感染を恐れる民主党有権者の何割かが投票を放棄するかもしれない、と考えられているのだ。

民間配達企業のフェデックスとユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は、郵送投票への圧力には屈しない姿勢をとっている。

一方、USPSは、選挙中に投票用紙を仕分けする「郵便仕分け機」の撤去を開始した、と地元メディアに皮肉られた。

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アメリカ郵政公社の警告

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問題を回避できるのか?

USPSは、約1,600億ドル(約17兆円)もの負債に苦しめられていることを悪用し、全米各州に警告文を送りつけた。

警告文には、「郵送で投じられた全ての票を、開票日当日までに送り届けることは保証できない」と書かれていた。NBCニュースによると、少なくとも15の州がこの警告文を受け取ったという。

ペンシルバニア州務長官に送られた書簡には、同州の定める選挙法の問題点が記されていた。

同州の定める郵送投票締め切りは11月3日の1週間前であり、USPSの配送能力では開票日までに選挙管理委員会の手元に届かない可能性が高く、また、USPSの配達基準にも適合しないとのこと。

USPS法務顧問のトーマス・マーシャル氏は、ペンシルバニア州の選挙法が「配達基準を無視」したものであると指摘。同州が「勝手に」定めた郵送投票締め切り期間では期限内の配送は不可であり、結果、開票日当日に選挙管理委員会の手元に届かない無効票が生まれるだろう、と述べた。

この書簡は8月13日に公開され、同州の代行長官を務めるキャシー・ボックバー氏は、開票日当日から3日後まで郵送票を受け取る(無効票にしない)ことを認めるよう、州裁判所に要請した。

現在の法律では、開票日当日以降に届いた郵送票は、無効票として扱われることが決まっている

ペンシルバニアは激戦が予想される州であり、2016年の大統領選挙で勝利を収めたトランプ大統領とヒラリー女史の投票差は1%未満だった。

地元メディアの報道によると、フロリダ州やミシガン州などを含む他の激戦州も同様の書簡を受け取ったという。

8月14日、ペンシルバニア州と隣接するニュージャージー州のフィル・マーフィー民主党州知事は、州内の全ての登録有権者に郵送投票用紙を送ると発表した。

ニュージャージー州が採用する郵送投票発送プロセス、「ユニバーサルメールイン投票(Universal Right to Vote by Mail Act)」は、現在9つの州が採用している。

トランプ大統領は、郵送投票の問題点を指摘したうえで、選挙日(開票日)の夜に結果が出ることを望んでいる、と改めて主張した。

一方、USPSへの資金ブロックは、直接投票を強く支持する共和党有権者の要求に応え、民主党有権者に敵意を向ける行為である。

USPSがギブアップすると、恐らく、何週間にも及ぶ法廷闘争の幕を開くことになり、トランプ大統領の望む選挙日延長も起こり得る、かもしれない。

アメリカのメディアによると、一部の共和党保守系グループは、郵送投票の実施を厳しく制限するべく、問題点を整理しているという。

共和党幹部は、郵送投票の問題点を指摘・シャットダウンできれば、民主党有権者の何割かを投票辞退に追い込み、勝利が近づくと予想している。

ジョー・バイデン氏とバラク・オバマ前大統領は、トランプ大統領が望む直接投票のみの選挙には到底承服できず、「国民の命より共和党有権者の票が大事」と厳しく非難した。

ある批評家は、USPSのルイ・デジョイ新総裁(共和党の主要寄付者)による残業時間の制限や配達期間などの変更により、郵便物到着までの時間が長くなったと指摘する。

ただし、残業時間制限や配達期間変更は、厳しい財政状況を踏まえての措置であり、大統領選挙の郵送投票防止策と見なすには無理がある。

一方、フォックスニュースの取材に応じたトランプ大統領は、「郵送投票に反対しているため、財政面で問題の多いUSPSへの追加資金をブロックした」と語った。

さらに、「数百万もの郵送票を正しく扱うためには膨大な予算が必要である。USPSにそんな余裕はなく、また、彼らは負債を返済することに専念すべきだ。彼らは追加資金なしでも、従来通りの仕事はできる。郵送投票を実行すれば、USPSはショートするだろう。しかし、彼らは追加資金を得られない」と付け加えた。

資金面での論争が続く中、30万人の会員を擁するレターキャリア協会はバイデン氏の意見に賛同、「USPSが存続の危機に瀕している」と警告した。

トランプ大統領のキャンペーンチームはコメントを発表していない。

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