世界のメディアが両者の泥試合を酷評

9月29日、アメリカの有権者はドナルド・トランプ大統領とジョー・バイデン氏が繰り広げた泥仕合を冷めた目で見ていた。

同じ頃、世界の聴衆もテレビやインターネットで二人の罵り合う姿を目撃、様々な反応を呼び起こした。

世界中のメディアやコメンテーターが、残念な結果に終わった第1回大統領討論会を酷評している。

第1回大統領討論会、史上まれにみるカオスな夜

2020年9月29日 AP通信/オハイオ州クリーブランド、第1回大統領討論会、トランプ大統領を批判するバイデン氏

イギリス

タイムズ(日刊紙)は討論会の敗者を「アメリカ」と判定した。

タイムズ:
中身のある議論は一切なかった
・気性の荒いふたりの老人がカメラの前で口汚く罵り合った
・理解できない論争が多々あった
・憎しみ合うふたりの熱いレスバトル

一方、ガーディアン(日刊紙)はそれを「国民の屈辱」と表現した。

ガーディアン:
・今回の討論会を見た全世界、将来歴史家になる者たちは、恐らく涙を流しただろう
・バイデン氏は遠い別の世界からアメリカ国民に話しかける遠隔大統領に見えた
・トランプ大統領が11月に再選すれば、国民は涙を誘う熱い討論会の続きを4年間楽しむことになる

フィナンシャル・タイムズ(経済紙)はトランプ大統領が郵便投票の危険性について発言した点を強調。支持者に投票所を注意深く見守るよう促した。

フィナンシャル・タイムズ
・トランプ大統領はカメラの前で嘘をついた
・トランプ大統領は、現職のアメリカ合衆国大統領とは思えないほど露骨だった
・討論会支持率調査ではバイデン氏が勝利したことになっている。しかし、アメリカの民主主義を気にかけている大多数の人々は、吐き気以外に何も感じることができなかったようだ

2020年9月29日 ロイター通信/オハイオ州クリーブランド、第1回大統領討論会の様子

フランス

リベラシオン(日刊紙)はふたりのマッチアップを「カオス・幼稚・残酷」と酷評した。

ル・モンド(夕刊紙)は「ひどい嵐」と表現、トランプ大統領は絶え間ない中断と侮辱的な発言を繰り返し、「バイデン氏の顔に熱々の焼き印を押し付けようとした」と切り捨てた。

ル・フィガロ(日刊紙)はバイデン氏について、「トランプ大統領の挑戦を拒否し、ひどく年老いて見えた」と酷評した。

ル・フィガロ:
バイデン氏は相手のゲームを正攻法で攻略すべきだった
・トランプ大統領ではなく、カメラに向かって話しかけた
・熱烈な共和党支持者は、今回の泥試合を見てもトランプ大統領の資質に疑いを持たなかった
・民主党支持者は、バイデン氏の守り一辺倒の姿勢を確認した

2020年9月29日 AP通信/オハイオ州クリーブランド、第1回大統領討論会、トランプ大統領ではなくカメラを直視するバイデン氏

ドイツ

デア・シュピーゲル(週刊誌)は討論会を「交通事故のような決闘」とこき下ろした。

南ドイツ新聞は「コメディ映画・殴り合う男たち」と題した。

南ドイツ新聞:
・バイデン氏はジョー・バイデンを演じた。聴衆は結果に満足し、彼に投票した
・ふたりのファンはより白熱した議論を求めている。次は取っ組み合いの殴り合いになるだろう

ディ・ヴェルト(日刊紙)は「主要議題、政策について語られることがほとんどなかった」と書いている。

ディ・ヴェルト:
・国民はトランプ大統領が自制心に欠ける男だと再認識した。しかし、それを世界のトップニュースとして扱うべきではない
・バイデン氏は刺激的な候補者ではなく、常識と安定した性格を持ち合わせている
・バイデン氏が当選すれば、ホワイトハウスは従来の姿に戻るだろう

2020年9月29日 Getty Images/オハイオ州クリーブランド、第1回大統領討論会、トランプ大統領とバイデン氏

イタリア

ラ・レプッブリカ(日刊紙)の特派員は「アメリカの政治がこれほど低く沈んだことは一度もない」と述べ、今回の討論会を「混沌とし、乱暴的で、相互の名誉棄損に基づく罵り合い」と表現した。

コリエーレ・デラ・セラ(日刊紙)は、トランプ大統領が白人至上主義者(プラウド・ボーイズ)への非難を拒否したことについて、「アフリカ系アメリカ人への熱烈なメッセージ」と糾弾した。

トランプ大統領「プラウド・ボーイズなど知らない。彼らは人種差別をやめるべきだ」

ロシア

ロシアの地元当局は討論会を「90分の罵り合い・名誉棄損の応酬」と表現し、他の放送局は「建設的な議論が一切なかった」と述べた。

国営メディアは以下のように述べている。

ロシア国営メディア:
・両者はお互いを妨害し続け、議論は成立しなかった
議論ではなく、相手を侮辱し、ひどく傷つける発言が繰り返された

バイデン氏がトランプ大統領を「プーチンの子犬」と発言したことについて、ロシアのSNSユーザーは強く反応している。

あるツイッターユーザー:
・ふたりの老人はどちらも大統領にふさわしくない
・バイデン氏はプーチン大統領を討論会に登場させ、世界に恥をさらした

中国

中国の公式メディアサイトは、大統領討論会の詳細についてはほとんど発信せず、ふたりが中国を攻撃した方法ついて記している。

国営の環球時報は討論会について、「これまでで最も混沌とした争い」と呼んだ。

環球時報:
・トランプ大統領はアメリカ国内のコロナウイルスの感染状況を軽視している
・トランプ大統領は、アメリカ経済が混乱した全責任を中国に押し付けている
・アメリカの分裂、不安、そしてホワイトハウスの政治システムの喪失が明らかになった

ジョー・バイデン「黙ってくれませんか?」

インド

ニュースチャンネルAaj Takは、両者を「泥まみれ」と表現。放送局Times Nowは「重要な大統領討論会を個人攻撃と名誉棄損で破壊した」と述べた。

国内で最も売れている英字新聞ザ・タイムズ・オブ・インディアはふたりの議論を「泥まみれのレスリング」と題し、以下のように述べた。

ザ・タイムズ・オブ・インディア:
アメリカ国民は約90分間、世界の前で恥ずかしい思いをした

【大統領テレビ討論会の日程】

9月29日、オハイオ州クリーブランド

10月15日、フロリダ州マイアミ

10月22日、テネシー州ナッシュビル

【副大統領テレビ討論会の日程】

10月7日、ユタ州ソルトレイクシティ

2020年9月29日 AP通信/オハイオ州クリーブランド、ホプキンス国際空港に到着したトランプ大統領とメラニア夫人
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