◎製薬会社が得られる利益はワクチンの展開規模と速度によって大きく異なると予想されている。
2021年3月/ベルギーのプールスにあるファイザー社のワクチン工場(ファイザー社/AP通信)

米疾病予防管理センター(CDC)は高齢者や最前線の労働者などへのファイザーワクチンのブースターショットを許可し、ファイザー社に数十億ドルの利益を保証した。

ただし、製薬会社が得られる利益はワクチンの展開規模と速度によって大きく異なると予想されている。

CDCは23日遅くに65歳以上の全国民と、18歳以上の基礎疾患を持つリスクの高い人々、そして感染リスクにさらされている最前線の労働者へのファイザーブースターを許可した。

CDCのロシェル・ワレンスキー所長はこの許可を最初のステップと呼び、モデルナ社とJ&J社のコロナワクチンのブースターも数週間から数カ月で認可される可能性があると示唆した。

世界中に供給されているファイザーとモデルナワクチンは、ブースターが許可されることでより多くの利益を生み出すと予想されている。

米投資銀行ジェフリーズのアナリストであるマイケル・イー氏はAP通信の取材に対し、「数十億人がファイザーブースターを待っている」と語った。

ウォール街もブースターに注目している。アナリストたちによるモデルナ社の2022年収益予測は、ジョー・バイデン大統領が8月中旬にブースター計画を発表して以来、約35%上昇した。

ブースターの接種対象はまだ限定されているものの、主要先進国は接種に向けた準備を進めており、その他のワクチン展開に成功した国々も恐らく年末までには何かしらの行動を起こすと期待されている。

投資信託のモーニングスター社のアナリストであるカレン・アンデルセン氏は、ファイザーと独バイオテック社の来年の世界売上高はブースターだけで260億ドル(約2.9兆円)、モデルナは米国の対象が全国民に拡大されればブースターだけで140億ドル(約1.5兆円)にのぼると予想している。

50歳以上の全国民へのブースターを許可したイギリスは、アストラゼネカワクチンを2回接種した人々への第一候補をファイザーワクチン、第二候補をモデルナワクチンとした。

アンデルセン氏はアストラゼネカとモデルナの組み合わせの安全性が証明されたことで、モデルナ社の収益は少なくとも130億ドル(約1.4兆円)積み増しされると予想した。

製薬会社は昨年、数十億ドルを投じてワクチンの製造ラインを確立し、より多くの用量を出荷できるようにした。

WBBセキュリティーズのスティーブ・ブロザックCEOは、「初回の販売で設備投資費の大半を回収したとすれば、ブースターの儲けは全て製薬会社の懐に転がり込む」と述べた。

ブースターの製造にかかるコストは1回目と2回目よりはるかに低くなり、政府と締結したワクチン販売単価に変更がなければ、素晴らしい収益を上げると予想されている。

ブースターの恩恵を受ける企業は製薬会社だけではない。

全米のワクチン接種を支援する大手ドラッグストア2社の収益は、ブースターだけでそれぞれ8億ドル以上にのぼると予想されている。

製薬各社は変異種を狙い撃ちする新たなワクチンの開発も進めており、インフルエンザのように毎年ワクチンを接種することになれば、新たなワクチンは大きな収益を生み出す可能性がある。

ファイザー社は7月、コロナワクチンが生み出す収益は2021年だけで335億ドル(約3.7兆円)に達する可能性があると述べた。収益はブースターの対象拡大と12歳未満への接種が許可されるとさらに増加する。

肺炎球菌感染症から被接種者を保護するファイザーのPrevnar13は世界で最も収益性の高いワクチンと呼ばれているが、それでも昨年1年間での収益は58億ドル(約6,500億円)だった。

世界中で流通している米アッヴィ社の関節リウマチ治療薬フミラでも、昨年の収益は198億ドル(約2.2兆円)ほどで、ブースターなしのファイザーワクチンに大差をつけられている。

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