スポトーニクV

クレムリンは、自国で開発したCOVID-19ワクチンの安全性に対する国際的な懸念の高まりに対し、「根拠のない言いがかり」と一笑に付した。

ロシアの開発したワクチンの臨床試験期間は2か月未満だったものの、規制当局は8月12日にそれを承認した。

しかし、世界中の専門家たちがロシアの試験スピードについて懸念を表明。患者への臨床試験を怠れば、大変な結果を間抜くかもしれないと警告した。

ドイツ、フランス、スペイン、そしてアメリカの科学者たちは、「ロシア製COVID-19ワクチン」に警戒感を示した。

これに対しロシア外務省のミハイル・ムラシュコ保健相はインタファクト通信の取材に応じ、「世界の同盟国たちは、ワクチン開発で先を越されてしまったと焦り、全く根拠のない意見を表明しているようだ。彼らは自分たちの利益しか考えていない。しかし、ロシア政府は、国民と世界の安寧のためにワクチンを開発した」と語った。

またムラシュコ保健相は、今回承認したワクチンは間もなく国民に向け提供されると述べ、「現在準備中のパッケージは、医療関係者などの配分される予定だ。遅くとも2週間以内には届くだろう」と付け加えた。

当局は10月までにワクチンの増産を終え、全国民向けの予防接種を行う予定と述べた。

8月11日、プーチン大統領は国民に対し、「ワクチンは必要とする全てのチェックをクリアし、承認された。」私の娘は既にそれを摂取し、体調は至って良好である。2か月後には皆の手元に届けられるだろう」と語った。

この記者会見を受け世界保健機関(WHO)は声明を発表した。
「ロシアの開発したスプトーニクV(ワクチン)は、必要とする試験を全て終えていない。我々はロシア当局と見直し試験の実施について現在協議を進めている

今回プーチン大統領が承認したワクチンは、世界各地で開発の進む他のワクチンとは扱いが異なる。

本来、開発したものをワクチンとして承認するためには、感染者を使った広範囲は臨床試験を行わねばならない。この段階をフェーズ3と呼び、厳しい臨床試験をクリアしたものだけが、ワクチンとして認可を受ける可能性がある。

ロシアの開発したスポトーニクVは、フェイズ3の臨床試験を終えていない。

コロナウイルスワクチン開発におけるロシアの進展を受け、欧米の保健当局とマスコミは懐疑的な目を向けた。

8月12日、ドイツのイェンス・スパーン厚生大臣は、ロシア製ワクチンの臨床試験が適切に行われていないと指摘、懸念を表明した。

スパーン厚生大臣は記者団に対し、「適切な試験をカットし、何百万人もの人々に予防接種を行うのは危険である。もし、それがうまく機能せず、かえって悪い結果を招けば目も当てられない」

「ドイツだけでなく、世界の関係当局がロシア製ワクチンのテスト期間に納得していない。ワクチン開発で優位に立ちたい気持ちは理解できるが、安全なワクチンを提供することだけに注力すべきだ」と述べた。

マルセイユのフランス国立科学研究センターで働くイザベル・インベール氏はル・パリジャンの取材に対し、「臨床試験を行わずにワクチンを提供することは非常に危険である。ただし、私たちは彼らの臨床試験方法を知らないため、危険と断定することはできないが・・・」と述べた。

ホワイトハウスのコロナウイルス対策チーム最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は、ロシアの発表に懐疑的な立場をとった。

ファウチ医師はナショナルジオグラフィックの取材に対し、「私はロシアの優秀な科学者たちが、開発したワクチンの効果および完璧な安全性を明確に証明した、と願っている。しかし、彼らがそれを実証できたとは到底思えない」と述べた。

アメリカのファウチ医師、ロシアワクチンに疑問

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臨床試験(フェーズ3)

一方、ロシアを拠点に活動する世界有数の製薬会社、臨床試験機関協会(Acto)は保健省に対し、臨床試験(フェーズ3)の期間延長を要請した

Actoのエグゼクティブディレクターを務める スベトラーナ・ザビドワ氏は、ロシアのMedポータルサイトに以下のコメントを投稿した。

「フェーズ1とフェーズ2のテストで76人を対象に投与試験を行った。しかし、それだけでワクチンの有効性を確認することは不可能だ。今すぐフェーズ3の期間を延長しなければならない」

一部の国は、クレムリンの発表に好意的な反応を示した。

フィリピンの狂犬、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領はロシアワクチンスポトーニクVを自分の身体でテストしたいと申し出たうえで、「プーチン大統領が製造したワクチンは世界を救うだろう。私がその安全性を証明する」とコメントした。

イスラエルは、スポトーニクVが危険なワクチンでなければ、購入交渉を開始すると発表した。

ロシアの科学者チームは、ワクチンの初期段階の試験が全て完了し、結果は素晴らしいものになったとコメントしている。

ロシアワクチンスポトーニクVは、風邪を引き起こすアデノウイルスの適応株を使用し、免疫反応を引き起こす。

ロシアの規制当局は、本来必要とする臨床試験、数千人に対して実施する大規模なフェーズ3を完了する前にスポトーニクVを承認した。

専門家たちは、フェーズ3を最も重要な試験プロセスと見なしている。

それにも関わらず、ミハイル・ムラシュコ保健相はスポトーニクVのことを「非常に効果的なワクチンであり、安全性についても証明できた」と述べ、人類がコロナウイルスに勝利する大きな一歩になるだろうと称賛した。

クレムリンは今回のワクチン開発成功を、冷戦中にソビエト連邦とアメリカ間で繰り広げられた宇宙開発競争に例えた。

ロシア当局はアメリカ、イギリス、カナダなどで開発が進められていたCOVID-19ワクチンの研究情報を不正な手段で奪おうとした、と非難されている。

現在、世界中で100を超えるワクチンが開発の初期段階にある。また、その中の一部は臨床試験(フェーズ3)に入り、数千人規模の患者に対する投与、効果の確認が進められている。

世界中の優秀な科学者たちが寝る間も惜しんでワクチン開発を進めている。しかし、ほとんどの専門家が、「どのワクチンも2021年半ばまで広く利用可能になることはない」と主張している。

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