ジョー・バイデンが吠えた

9月17日、民主党大統領候補のジョー・バイデン氏は、ドナルド・トランプ大統領のコロナウイルス対応およびパンデミックの軽視を厳しく非難したうえで、「彼は正真正銘の犯罪者であり、無責任極まりない」と糾弾した。

バイデン氏は出身地のペンシルベニア州スクラントン、ムージック地区にある市庁舎前で演説し、群衆から喝采を浴びた。

ジョー・バイデン氏:
「アメリカ合衆国の大統領は、国民と同じ目線で物事を見なければならない。しかし、トランプはあなたの背後に回り込み、何も言わずに銃弾を撃ち込んでくる」

「トランプのコロナウイルス対策が間違っていたことは自明の理であり、結果、私たちは大切な同胞を20万人も失った。彼らはパンデミックを軽視し、偽りの情報を嬉々として流したトランプに殺されたも同然である」

バイデン氏はトランプ大統領がコロナウイルスの危険性を認識していたにも関わらず、その情報を意図的に隠した問題に触れ、「犯罪者」と糾弾した。

バイデン氏は市庁舎前に集まった聴衆から、コロナウイルスとワクチンの質問を大量に受けた。なお、この日の演説スタイルはウイルスへの感染を考慮し、ドライブイン形式で実施された。

聴衆は演説台の周りに車を駐車し、社会的距離の確保およびマスクの着用を求められた。また、演説の様子はバイデンキャンペーンチームがインターネットでライブ中継し、会場入りできなかった民主党有権者たちは、別のエリアでその様子を観賞していた。

キャンペーンチームのスタッフたちは、車両の駐車スペースにチョークで印をつけ、1.8m以上距離を保つよう聴衆に呼びかけていた。

今回、バイデン氏はキャンペーン開始以来初となる、事前に打ち合わせを行わない「有権者からの生の質問」に答えた。なお、トランプ大統領は15日にフィラデルフィアの市庁舎で同様のイベントを開催している。

バイデン氏の攻撃に反論するトランプ大統領

バイデン氏は、9月29日に開催される「1回目の大統領討論会」に照準を合わせている。トランプ大統領の弱点、任期期間中に犯した最大の過ちを攻撃すべく、聴衆の意見を吸い上げ、コロナショック以降の問題点をしっかり洗い出していた。

ただし、民主党予備選挙中のバイデン氏の討論パフォーマンスは一貫性に欠けており、そこをトランプ大統領にも厳しく指摘されている。

トランプ大統領はバイデン氏の討論パフォーマンスについて、「彼には答弁能力を向上させる薬が必要だ。私は彼が言いたいことを理解できない。ガラスのハートにアメリカ合衆国の大統領は務まらない」と嘲笑している。

この挑発発言に対しバイデン氏は、「大統領の不正を暴く」と約束したが、共和党との大乱闘には巻き込まれたくない、と弱気な姿勢も見せていた。

17日、バイデン氏はトランプ大統領の発言とこれまでのミスを徹底的に洗い出し、「大統領討論会で彼を叩き伏せる」と語った。

なお、バイデン氏は、2030年までに経済全体で温室効果ガスの排出量ゼロを達成するグリーン・ニューディール(GND)への消極的な姿勢を、議会の進歩主義者たちから非難されている。

バイデン氏は、2035年までに化石燃料の発電施設を全て廃止し、2050年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指すと提案している。

聴衆にグリーン・ニューディールの必要性と「2030年までの温室効果ガス排出量ゼロを目指さないのか?」と質問されると、バイデン氏は「重要性は大いに理解している。ただし、私には別のプランがあり、民主党の基本方針と組み合わせて新たな目標を定めた」と答えた。

またバイデン氏は、外交政策についても具体的な検討を行っていると述べた。

ジョー・バイデン氏:
「海外に展開しているアメリカ軍の軍事力を削減する。もちろん、必要と判断されるものは残すが、武力による圧力は他国への主権の侵害にあたり、到底容認できない」

「私が選挙に当選したあと、4年前のようにロシアの介入が判明すれば、彼らは大きな代償、経済制裁を受けることになるだろう。私はロシアの力で票を獲得したトランプとは違う」

キャンペーンの様子

コロナ禍での戦い

バイデン氏はロシアを「反対者」と名指ししたが、中国について尋ねられた時は、同じ言葉を使わず「競争相手」と呼び、同国との貿易対立を改善したうえで、本来あるべき取り決めを行うと誓約した。

また、ウィリアム・バー司法長官が州政府の発出したロックダウン命令を「奴隷制」と比較したことについて、「これほどまでに無責任な政府を見たことはない。信じがたい」と非難した。

一方、トランプ大統領はウィスコンシン州ミソニーでマスクレスキャンペーンを開幕する前に、「バイデンのキャンペーンをチェックする」とコメントした。

その後、数千人もの共和党マスクレス有権者の大歓声を受け、トランプ大統領は演説台に立った。

ドナルド・トランプ大統領:
今頃ジョーは聴衆からソフトボールの質問を受けているはずだ

「民主党の有権者は車の中からジョーを眺め、満足している。私はこれまでいろんなものを見てきたが、これほほど滑稽かつ異常なものはない」

共和党マスクレス有権者たちは、社会的距離という概念を忘れ、仲間たちと楽しく社交的にふれあい、親睦を深めていた。

ウィスコンシン州ミソニーのトランプマスクレスキャンペーン

バイデン氏のキャンぺーン形式は、2020年大統領選挙、最大の争点となる問題への対処方法を明確に示している。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、アメリカのコロナウイルス累計感染者数は670万人超、死者数は間もなく20万人を突破する

アメリカの感染状況は世界でも群を抜いており、トランプ大統領の誤った対応や主張は連日メディアを騒がせている。

感染症の専門家は、「アメリカよりはるかに人口の多い中国や、人口密度などでより悪い条件下にある日本が感染を抑え込めている現状を見て、アメリカ国民は何も感じないのだろうか?トランプ大統領最大の失敗はコロナウイルスを放置したことだ」と述べた。

17日AM、バイデン氏は上院民主党員とのオンライン会議に参加し、議会の過半数を奪取する必要性と、今後の方針について話し合った。

会議に参加した上院議員たちは、バイデン氏の戦略および大統領選での戦いぶりが、議会に大きな影響を与えると指摘したうえで、「トランプを倒さねば、支配権の奪取はあり得ない」と強く主張した。

ウェストバージニア州のジョー・マンチン上院議員はバイデン氏に対し、以下のように述べた。

ジョー・マンチン上院議員:
「私たちは、今回の戦いがどれほど重要であるかを十二分に理解している」

「あなたは長年政治に関与し、国民のために尽くしてきた。ジョー・バイデンが国民に寄り添ってきたことを、全アメリカ国民に知らしめなければならない」

「アメリカは政治家のものではなく、国民のものである。アメリカの政治家は国民に尽くさなければならない。全アメリカ国民に対し、ジョー・バイデンは国民の年金のために戦い、ヘルスケアのために戦い、そして、”誰ひとり置き去りにするつもりはない”と誓約していることを理解してもらう必要がある」

ここ数日、バイデン氏のキャンペーンチームは、ラテン系の有権者に対する取り組みや姿勢を精査されていた。

民主党はパンデミックによって破壊されたアメリカの健康リスクを改善しつつ、経済活動再開は慎重に進めるべきと主張。トランプ大統領の政策がもたらしたものは、「20万人の死と残された家族の悲しみだけだ」と糾弾した。

社会的距離という概念を忘れた共和党有権者たち

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