◎トラック運転手たちは米ミネソタ州デトロイトとオンタリオ州を結ぶアンバサダー橋の通行を阻止し、貨物の輸送に深刻な影響与えている。
2月10日、米国はカナダ政府に国境付近で進行中の抗議デモを終わらせるよう強く促した。
主要メディアによると、ジョー・バイデン大統領はカナダの首都オタワと両国の貿易の約25%を占めるデトロイトの国境付近で発生したデモに関する報告を定期的に受けており、深刻な懸念を表明したという。
オタワは2月6日に非常事態を宣言し、自治体の権限を強化したうえで、デモの封じ込めにあたっている。
オタワの抗議デモ、通称フリーダム・コンボイは、米国とカナダを行き来するトラック運転手にワクチン接種を義務付ける法律が施行されたことで本格化し、全国に広がった。
オタワから1,200kmほど離れたオンタリオ州でも大規模なデモが続いており、トラック運転手たちは米ミネソタ州デトロイトとオンタリオ州を結ぶアンバサダー橋の通行を阻止し、貨物の輸送に深刻な影響与えている。
デトロイトは世界最大の自動車工業都市であり、GM、フォード、クライスラーの巨大工場がある。
自動車メーカーとミネソタ州当局はアンバサダー橋の封鎖を速やかに解消するよう裁判所に求めている。
一方、カナダ放送協会(CBC)によると、オンタリオ州の裁判所はフリーダム・コンボイがオンラインで集めた募金を差し止めたという。
運転手たちはGive Send Goと呼ばれるキャンペーンのクラウドファンディングで寄付を呼びかけ、800万ドル(9.3億円)以上を調達したと伝えられている。
フリーダム・コンボイに最初に資金を提供したGo Fund Meキャンペーンは、一部の抗議者がキャンペーンの利用規約に違反したとして資金提供を打ち切り、資金を寄付者に返金すると発表している。
米CNNニュースによると、国土安全保障と運輸の両長官は10日、カナダ当局に連邦政府の権限を行使して国境の問題を解決するよう促し、必要であれば支援を提供すると述べたという。
CNNは「米当局はアンバサダー橋の障害解消を第一に考えている」と報じた。
世界最大の国境吊橋であるアンバサダー橋は10日時点で閉鎖されたままだが、港や他の国境検問所は開通している。
オンタリオ州ウィンザーの警察は10日、「平和的な解決に向けた取り組みを進めている」とツイートし、他の州警察に応援要請を求めたと明らかにした。
一方、ウィンザーのディルケンズ市長は10日に放送されたCNNニュースのインタビューの中で、「道を切り開く必要がある」と語った。「デモ隊が退去しなければ、我々は行動するつもりでいます...」
ディルケンズ市長は強制排除もあり得ると示唆したうえで、「フリーダム・コンボイとのさらなる対立は避けたい」と強調した。
ミシガン州のホイットマー州知事も連邦政府の介入を促し、デトロイトの自動車産業に影響が出ていることに懸念を表明した。
カナダのトラック運転手たちは、米モンタナ州に隣接するアルバータ州クーツの国境検問所も2週間近く封鎖している。
CBCによると、米ノースダコタ州とマニトバ州を結ぶ国境検問所周辺でも9日に抗議デモが発生したという。
トヨタはオンタリオ州にある3つの工場の生産を停止し、今週は停止を維持すると発表している。
フォードもオンタリオ州のエンジン工場を停止し、クライスラーは橋の閉鎖の影響でオンタリオ工場の部品が不足しシフトに影響が出始めていると明らかにした。
GMはスポーツ用多目的車を製造するデトロイト工場の生産を停止している。
ホワイトハウスの国家経済会議委員長、ブライアン・ディース氏はNBCのインタビューの中で、「バイデン政権はあらゆる可能性を検討している」と述べた。NBCによると、ホワイトハウスは貿易の混乱を解消するために、鉄道、他の橋、航路の支援を含むあらゆる可能性を検討しているという。
オタワの警察当局によると、2月10日の時点でデモ参加者25人を逮捕し、駐禁切符を1,775枚切ったという。
オタワの自治体は住民に外出を控えるよう勧告を出している。オタワ国際空港につながる道路もトラックで遮断されたと伝えられていたが、CBCによると、空港道路の渋滞はおおむね解消したという。
オタワ警察の署長は10日の記者会見で、「911に偽電話が殺到している」と懸念を表明した。「電話の多くは米国から入っています...」
コロナ対策を推進するジャスティン・トルドー首相は、政権発足以来最大の危機に直面している。
フリーダム・コンボイは米国とカナダを行き来するトラック運転手に対するワクチン接種義務だけでなく、マスク着用義務やその他の規則の撤回も要求している。なお、カナダの規則の大半は州政府が発効したもので、連邦政府の規則は少ない。
野党保守党はトルドー首相に降伏するよう促したが、トルドー首相はフリーダム・コンボイを「フリンジマイノリティ(一部の非主流派)」と呼び、要求には応じない姿勢を見せている。
しかし、フリーダム・コンボイを「情熱的で愛国的で平和的」と呼んでいた保守党の党首は10日、態度を一変させ、トラック運転手たちに帰宅を呼びかけた。
保守党は国の基幹産業である自動車部門に影響が出始めていることに懸念を表明している。
一方、米国土安全保障省は今後数日以内にカリフォルニア州やワシントンD.C.などの主要都市で同様の抗議が発生する可能性があると発表した。
同省によると、2月13日にロサンゼルスで開催される「第56回スーパーボウル」も影響を受ける可能性があるとのこと。
ABCニュースによると、同省の高官は「抗議デモは3月中旬まで続く可能性があり、3月1日に予定されているバイデン大統領の一般教書演説にも影響が出る可能性がある」と懸念を表明したという。