◎スエズ運河庁(SCA)と正栄汽船は補償額をめぐる交渉と法廷闘争の末、和解に達した。
7月7日、エジプト政府は3月末にスエズ運河を約1週間封鎖したエバーギブン号を解放すると発表した。
現地メディアによると、エバーギブン号はスエズ運河のグレートビター湖から大海原へ出航したという。同船は運河の封鎖以来、3カ月以上エジプト政府の管理下に置かれていた。
同船の所有者は愛媛県今治市に本拠を置く船舶リース会社の正栄汽船、運航者は台湾を拠点とする大手海運会社のエバーグリーンマリン社。運航管理会社はバーンハード・シャルト・シップマネジメント。建造は2018年、全長400m、幅59m、総重量約20万トン。中国からオランダのロッテルダムに貨物を輸送する途中で座礁したため、35億ドル相当(3,800億円)のコンテナは積まれたままである。
スエズ運河庁(SCA)と正栄汽船は補償金をめぐる交渉と法廷闘争の末、和解に達した。
AP通信によると、和解契約は7日にイスライリア県で開催された式典の中で締結され、その後、エバーギブン号は地中海へ向かったという。
SACのオサマ・ラベイ長官は、「私たちは和解と正義を達成した」と述べた。「契約は3カ月以上続いた闘争を集結させました...」
正栄汽船は7日の声明で、エバーギブン号はエジプトのポートサイドで潜水調査を行い、荷揚港への航海を再開すると発表した。
SCAと正栄汽船は和解契約の詳細を明らかにしなかった。SACは当初、9億1,600万ドル(約1,000億円)の補償を要求したが、その後、額は5億5,000万ドル(約600億円)まで引き下げられた。地元メディアによると、SCAは補償金だけでなく、大型タグボートも補償のひとつとして受け取るという。
補償金は救助活動費用や運河の停滞に伴う損失などを補償するもので、額は数億ドル規模になると予想されていた。
エバーギブン号は3月23日、スエズ運河の南口から北に約6kmほど進んだところで座礁した。同船は何かしらの理由で制御を失い、船首は東の壁に触れ、船尾は西の壁に引っ掛かった。専門家は「運河の150年の歴史の中でこのような事故は聞いたことがない」と困惑し、世界の海運は大混乱に陥った。
SCA主導の大型タグボートチームは6日後に超高層ビルサイズのエバーギブン号を浮上させることに成功し、スエズ運河は通航を再開した。
一連の封鎖はコロナの影響で圧力にさらされていた海運業界に大きな負担をかけた。
海運の専門、ロイズリストのデータによると、スエズ運河西ルートを通過する貨物の価値は1日あたり約5,600億円、東ルートは約5,000億円にのぼり、運河を管理するエジプト政府は1日あたり最大15億円の収入を得ているという。
エジプト政府は5月、スエズ運河の拡張工事を実施すると発表した。計画によると、シナイ半島側(サウジアラビア側)の最南端の全長30kmを東に約40m拡張し、水深も現在の約20mから22mまで深くする予定だという。