◎モルドバは戦地に極めて近く、ウクライナと1200km超の国境を共有し、ロシアの圧力にさらされている。
モルドバのガブリリツァ(Natalia Gavrilita)首相が10日、辞任した。
サンドゥ(Maia Sandu)大統領はガブリリツァ氏の辞任を承認。ガブリリツァ政権は2021年8月に発足したものの、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機やインフレへの対応に苦慮し、わずか1年半で退陣となった。
ガブリリツァ氏は記者会見で、「モルドバは複数の危機と闘っている」と語った。
隣国ウクライナで戦争が激化する中、モルドバはエネルギー価格の高騰、インフレ、ウクライナ避難民の大量流入、東部の分離主義国家「沿ドニエストル」をめぐる問題に直面している。
ガブリリツァ氏の記者会見が始まる数時間前、モルドバ外務省はロシア軍がウクライナ軍に向けて発射したとみられるミサイルが領空を侵犯したことを受け、駐ロシア大使を召還した。
ガブリリツァ氏は「政権発足時、まさかこれほど多くの危機に見舞われるとは夢にも思っていなかった」と語った。
モルドバは戦地に極めて近く、ウクライナと1200km超の国境を共有し、ロシアの圧力にさらされている。
沿ドニエストルは1990年代初頭の「トランスニストリア戦争」でモルドバから独立したと主張しているが、モルドバ政府と国際社会はこれを認めていない。
ロシア軍は分離主義勢力を支援し、平和維持活動という名目でこの地域に兵士約1500人を駐留させている。
ガブリリツァ氏は「汚職防止、開発推進、欧州推進を掲げて政権を発足させたものの、汚職があらゆる組織に蔓延し、ロシア・オリガルヒに好きなようにやられていると感じていた」と語った。
「ロシアは私たちを脅し、屈服させようとしました」
モルドバ政府は昨年、ロシアに100%依存している天然ガス供給を一部遮断され、エネルギー危機に見舞われた。ガス不足による物価高騰は市民生活に甚大な影響を与えている。
サンドゥ大統領は記者会見の中で、「ガブリリツァ首相は努力を惜しまず、身を粉にして危機に対処した」と謝意を示した。
サンドゥ氏は大統領補佐官のレチャン(Dorin Recean)元内相を後任に指名している。議会は来週、レチャン氏の首相就任を広く支持するとみられる。