中国で最も有名なeスポーツプレイヤー、健康状態の悪化により現役引退を表明

ジァン・ザオ氏」は、中国で最も有名なeスポーツプレイヤーである。同氏は2012年からプロのゲーマーとして活躍し、”Uzi”という名でリーグ・オブ・レジェンド(オンラインゲーム)をプレイしていた。

4日、同氏は現役引退の理由を中国のソーシャルメディアサイト”Weibo”に投稿した。「プロゲーマーとしてキャリアをスタートさせてから今の生活を数年間続けた結果、昨年2型糖尿病と診断された。その後も薬を服用しながらプレイしたが、精神および体調を維持できなくなった」

ゲーム依存症は、中国を取り巻く社会問題のひとつである。当局はテレビゲームおよびオンラインゲームが健康に害を及ぼすと考えており、昨年11月、18歳未満のオンラインゲームプレイ時間に制限を課し、22:00~08:00の間はプレイ自体を禁止した。

ザオ氏は、「私のかかりつけ医は、これ以上身体を酷使すれば、深刻な合併症を引き起こすと警告してくれた。この医師には数年間お世話になった。私は引退の決断を心から誇りに思っている。応援してくれたファンの皆さんにも御礼申し上げたい」とコメントした。

これに対しファンたちは、同氏の引退決断を理解し、健康を気遣った。この投稿には30万件近い返信が寄せられたという。

同氏が引退を表明したことに対し中国国営メディアは、彼を国民的英雄と称賛しつつ、過度なゲームは健康に深刻な影響を与えると報道した。

中国は世界2位の規模を誇るゲーム大国(1位はアメリカ)である。なお、政府は市場を席捲するオンラインゲームなどが、若者の健康に悪影響を及ぼすと繰り返し主張している。

世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害/依存症(Gaming Disorder)」を精神的健康障害のひとつとして認識している。ちなみに、世界1位の超ゲーム大国アメリカの”精神医学会が定めるマニュアル”には、ゲーム障害はさらなる研究のひとつであると引用され、健康障害リストには含まれていない。

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ゲーム障害/依存症

2019年11月、当局は未成年者のオンラインゲームプレイに制限を課すと発表した。18歳未満の者は、22:00~08:00の間オンラインゲーム自体をプレイできず、また、平日のゲーム時間は90分、週末と祝日は3時間に制限された。

当局が公表したガイドラインには、未成年者のオンラインゲーム課金額の上限も明記されている。それによると、8歳~16歳の者は1カ月当たり最大200元(約3,100円)、16歳~18歳であれば400元(約6,200円)まで課金できるという。

2018年、当局は子供たちの視力低下が深刻な社会問題になっていることを問題視。新作オンラインゲームの数、販売価格(課金含む)、対象年齢に制限を設け、それらを一括管理する機関(CHINA GAMING REGULATOR TO INTRODUCE NEW APPROVAL PROCESS THIS MONTH)の設立を発表した。

同年、当局は新作オンラインゲームの承認を9か月間停止し、多大な利益をもたらしているゲーム業界に大打撃を与えた。

中国最大のゲーム会社”テンセント(Tencent)”は、12歳未満のユーザーであれば1日1時間、12歳~18歳のユーザーには1日2時間というプレイ時間制限を設けた。また、ユーザーに対する厳格な個人情報開示を求めた。

既に述べた通り、WHOはゲーム障害/依存症が精神疾患であることを認めている。また、アメリカを除く一部の国でも、過度のゲームプレイは公衆衛生上の重要な問題であると認識され、ゲーム障害/依存症を治療する専門のクリニックなどが設立されている。

中国当局は、ゲーム依存を深刻な精神疾患であると認識しつつも、業界の持つポテンシャルが国の産業に大きな影響を与えると確信している。ゲームの市場規模は右肩上がりで上昇しており、衰える兆しは一向に見えない。

その中でも、同国内におけるスマートフォンゲームアプリ市場の成長は特にすさまじい。携帯電話さえあればいつでもどこでもゲームをプレイできるため、これまで市場のターゲットと見なされていなかった女性からも支持され、売り上げを伸ばし続けている。

しかし、ゲームがより身近になったことで、昼夜を問わずそれに没頭し、体調やメンタルに異常をきたす事例が続出した。ゲーム中の死亡事例も報告されるようになり、当局は厳しい対応を取らざるを得なくなった。

世界のゲーム市場は年10%から13%の成長率を維持しており、2021年には1,800億ドル(約20兆円)に達すると予想されている。

オンラインゲームの未来は明るい。コロナウイルスが蔓延し、自宅にとどまる機会が増えたことで、それを楽しむプレーヤーたちはさらに増加している。しかし、WHOの言う通り、過度なゲームプレイは視力の低下や精神疾患につながり、ザオ氏のように病を患う可能性があることも理解しなければならない。

最後に、ゲームの良い面にも注目したい。オンラインゲームは世界をつなぎ、第三者とのコミュニケーションを構築する。大好きなゲームを楽しむことはストレス発散につながる。「過ぎたるは及ばざるが如し」を意識することが大切だ。

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