◎気温が氷点下となる中、数百万人が暖房を使えずにいる。
ウクライナ大統領府は15日、南部ヘルソン市に対するロシア軍の砲撃で少なくとも2人が死亡し、市全域が停電したと報告した。
ヘルソン市当局によると、ロシア軍はエネルギイーインフラに対する攻撃を続けているという。
ロシア軍はヘルソン市で屈辱の敗北を喫し、ドニエプル川東岸に防衛線を構築。ウクライナ政府が管理する地域の電力や水道インフラなどを執拗に攻撃している。
国連人権理事会は15日、ウクライナへのインフラ攻撃は人道状況を劇的に悪化させ、さらに多くの避難民が発生する恐れがあると警告した。気温が氷点下となる中、数百万人が暖房を使えずにいる。
ウクライナ公共放送などによると、ヘルソン市庁舎から100mほどの地点に砲弾が着弾し、32歳の救急隊員と70歳の男性が死亡。医療機関も攻撃を受けたという。
東部ハルキウ州でも攻撃が確認された。州政府はロシア軍のインフラ攻撃が続いているとテレグラムに投稿し、市民に避難所もしくは屋内にとどまるよう呼びかけた。
国連人権委員のターク(Volker Turk)氏は、「ロシアの攻撃によって数百万人のウクライナ人が極度の困難にさらされており、電力施設へのさらなる攻撃は人道状況を劇的に悪化させ、さらなる避難民を発生させる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
ロシアの支配地域に対する攻撃も報告されている。
東部ドネツク人民共和国の首長は15日、ウクライナ軍の攻撃で1人が死亡、9人が負傷したと報告した。首長はこの攻撃を「2014年のロシアによる併合以来、最大規模」と表現した。
ウクライナ軍はこの主張に関する声明を出していない。AP通信は専門家の話しを引用し、「ドネツク州バフムート周辺の激戦が人民共和国の支配地域に波及するのは想定内であり、市内のロシア人は決断を迫られている」と報じた。
東部戦線の状況はほとんど明らかになっていないが、西側の情報機関とシンクタンクはウクライナ軍が有利と見ている。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は14日、EU首脳に宛てたオンライン演説で、「約20億立方メートルの天然ガスと約8億ユーロ相当のエネルギー供給でロシアのエネルギーテロを打ち破る手助けをしてほしい」と訴えた。
またゼレンスキー氏は、「ウクライナはこの半年で目に見える勝利を収め、防空システムの構築にも着手した」と述べた。
首都キーウは14日にドローン攻撃に見舞われたが、ウクライナ軍によると、飛来したイラン製自爆ドローン13機をすべて撃墜したという。
一方、米政府は15日、ドイツで行っているウクライナ軍兵士の訓練を拡大すると発表した。
米国はウクライナに広域防空用地対空ミサイルシステム「パトリオット」を供与する方向で調整を進めているとみられるが、この訓練強化にパトリオットシステムの取り扱い訓練が含まれるかどうかは不明。