◎サイード大統領は昨年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
チュニジアの首都チュニスで10日、サイード(Kais Saied)大統領の統治と議会選に反対する集会が行われ、数百人が参加した。
議会選の投開票は今月17日に予定されているが、主要野党はこれに参加せず、支持者にボイコットを呼びかけている。
デモ隊は「サイード辞めろ!」「民主主義を守れ!」などと唱えながら市中心部を行進した。
サイード氏は昨年7月末に当時の首相を解任したうえで議会を閉鎖し、権力を手中に収めた。
野党と活動家はサイード氏の強硬措置をクーデターと非難し、各地で抗議デモを続けている。議会は今年3月に解体された。
デモを主催した野党の元副議長は地元メディアの取材に対し、「すべての野党がクーデターを拒否し、民主主義の回復を求めるという立場で一致している」と語った。
サイード氏は議会解体後に新憲法を起草。現在は政令で国を統治している。新憲法の是非を問う国民投票の投票率は30%にとどまった。
国際NGOの「国際民主法律家協会」はこの新憲法について、「三権分立および抑制と均衡を打ち壊す危険極まりないもの」と警告している。
また同協会は、「新憲法は大統領を全能、議会を無能、司法を歯抜け状態にし、抑制のきかない大統領制を可能にする」と説明した。
サイード氏は国を危機から救うために行動しており、独裁者になることはないと繰り返し主張している。
イスラム政党「アンナハダ(Ennahda)」を含む主要野党は議会選に参加せず、支持者に投票をボイコットするよう求めている。
野党連合は9月に議会選ボイコットを表明し、選挙管理委員会はサイード氏の支配下に置かれていると指摘していた。
しかし、有権者の大半は汚職を撲滅し、不正を取り締まると約束したサイード氏の統治を支持しているように見える。同国の経済は2011年のジャスミン革命で民主主義を確立して以来、停滞している。
サイード氏は独裁者ベンアリ(Zine El Abidine Ben Ali)を追放した後も一部の政治エリートが国を支配し、汚職を推進し、経済を停滞させたと主張している。