◎オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
トルコのチャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相は2日、米国とロシアがシリア国境付近からクルド人武装勢力を排除するという約束を守らず、シリアに軍事侵攻せざるを得なかったと主張した。
チャブシオール氏はローマで開催されたフォーラムの中で同盟国の米露を厳しく非難し、「トルコはシリア政府との和解を求め、難民の帰還を促し、イスラム国(ISIS)との戦いを支援し、シリア内戦を終結させようとしている」と述べた。
エルドアン(Recep Tayyip Erdogan )大統領は先月、シリア北部に拠点を置く「クルド人民防衛部隊(YPG)」に対する地上作戦を計画していると明らかにした。
トルコ軍はシリアおよびイラクで活動するクルド人武装勢力の拠点を空爆している。エルドアン氏は先月の記者会見で、「空爆は始まりに過ぎない」と警告していた。
トルコ政府はイスタンブールのイスティクラル通りで先月13日に発生した爆破テロに反政府武装組織「クルド労働者党(PKK)」が関与したと断言している。しかし、PKKとYPGは関与を否定している。
クルド系組織はトルコ軍の空爆で多数の民間人が犠牲となり、ISIS掃討作戦が脅かされていると非難している。
チャブシオール氏は講演の中で、「トルコは同盟国の米国およびロシアと合意に達した」と語った。「両国はトルコとシリア国境からテロリストを掃討すると約束しました。しかし、彼らは約束を果たしていません」
トルコは2019年に米国およびロシアとそれぞれ約束を交わした。米露はトルコ南部の国境沿いの領土からクルド人武装勢力を追い出すと約束したのである。
チャブシオール氏はシリアへの軍事侵攻を念頭に置き、「テロリストをこの地域から一掃する作戦を継続しなければならない」と語った。
トルコは2016年以来、シリア北部に3回大規模な越境攻撃を仕掛け、いくつかの地域を支配した。
しかし、シリア北部に部隊を展開する米露はトルコの新たな攻撃に深刻な懸念を表明している。
米国はYPGをシリアにおける対テロ戦争の最重要同盟組織と位置付けている。
ロシアもシリアのアサド政権を支援し、ISIS掃討作戦を続けている。
トルコはNATO加盟国であり、ロシアの同盟国でもある。
トルコ政府はアサド(Bashar Assad)大統領の罷免を求め、シリア内戦に強く反対していたが、最近はアサド氏との対話に前向きな姿勢を見せている。
チャブシオール氏はトルコに避難したシリア難民360万人の一部が帰国し始めていることに触れ、「彼らの安全と尊厳を保障するために、シリア政府との対話を維持する必要がある」と述べた。
またチャブシオール氏は、「いかなる差別も許さず、テロ組織との戦いに全力を挙げる」と誓った。
オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。