◎マリ北部を含むサヘル地域で進行中の紛争はこの数カ月で激しさを増し、多くの民間人と兵士が犠牲になった。
2021年5月30日/マリ共和国、首都バマコ、大統領代行に就任したゴイタ大佐(Getty Images/AFP通信)

マリの軍事政権は12日、新憲法の草案を軍事評議会から受け取った。

国営テレビは憲法を起草した軍事評議会委員長の声明を引用し、「大統領の権限は大幅に強化される」と報じた。

また、10年前の反乱の舞台となった北部に強い自治権を与えるという条項は削除されたようだ。

トゥアレグ人反政府勢力「アザワド解放民族運動(MNLA)」はイスラム過激派の支援を受けて2012年3月のクーデターを起こし、北部の都市トンプクトゥを一時的に掌握した。

同国の北部は現在、サハラ砂漠以南のサヘル地域に拠点を置く過激派との紛争の主戦場になっている。

軍事評議会が提出した草案は2023年3月の国民投票にかけられる予定だ。これは昨年5月の軍事クーデターで政権を奪取し大統領代行に就任したゴイタ(Assimi Goita)大佐が掲げる政策のひとつである。

ゴイタ氏は少なくとも2024年まで政権を維持すると誓い、民主的な選挙を実施するという約束を破り、ロシアとの関係を強化し、国連マリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)に部隊を派遣しているコートジボワールの兵士を拘束するなど、西アフリカ地域の緊張を高めている。

1992年に施行された現行憲法第122条は、「政府が国家の政策を決定し、これを実施する」と定めている。

新憲法は「国家の政策を決定するのは共和国大統領であり、国家の政策を主導するのは政府である」としている。

軍事評議会の報道官は声明で、「国会(下院)は大統領を追放できなくなり、大統領も国会を解体できないだろう」と説明した。ゴイタ氏はクーデター後、連邦議会を解体し、軍事評議会を発足させている。

草案は国会と並んで上院を新たに設置し、また、監査院なる機関も設置するとしている。

専門家によると、現行憲法には問題が多く、連邦議会は憲法改正が必要なことで一致していたという。

現行憲法は1991年以来3回、独立以来5回クーデターを経験しているマリの政治危機の一因とみなされている。

政情不安は2012年のクーデター後に本格化した紛争、北部の独立運動、経済危機を悪化させている。

サヘル地域で進行中の紛争はこの数カ月で激しさを増し、多くの民間人と兵士が犠牲になった。国連によると、マリ、ニジェール、ブルキナファソで今年イスラム過激派に殺害された民間人は7月末時点で2000人を超え、昨年の通年を上回った。

ブルキナでは先月末に今年2回のクーデターが発生している。

2016年/マリ共和国、サヘル地域、イスラム過激派組織の戦闘員(Getty Images/AFP通信)
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