◎クルド人女性のアミニさんがヒジャブを着用しなかったという理由で道徳警察に殴り殺された事件は全国を巻き込む抗議デモに発展した。
イランのライシ(Ebrahim Raisi)大統領は24日、1週間以上にわたる反政府デモを受け、取り締まりを強化すると宣言した。
クルド人女性のアミニ(Mahsa Amini)さんがヒジャブ(イスラム教の女性が着用するヴェール)を着用しなかったという理由で道徳警察に殴り殺された事件は全国を巻き込む抗議デモに発展した。
ライシ氏は全国31州に広がった抗議に断固として対処すると誓い、米国とイスラエルを非難した。
複数の人権団体や活動家によると、デモ開始以来、抗議者少なくとも35人が殺害されたという。
道徳警察は先週、アミニさんの頭を警棒で殴り、パトカーに叩きつけ、車内で暴行したと伝えられている。アミニさんは医療機関に搬送されたものの、3日後に死亡した。警察はこれを「不慮の事故」と呼び、取り締まりを擁護した。
ライシ氏はアミニさんの死を調査すると約束したが、保守的な内相はSNSで暴行の動画が拡散したにもかかわらず、警察は暴力を振るっていないと主張した。
国営イラン通信(IRNA)は内相の声明の引用し、「調査を行った結果、警察が暴力を振るったという証拠は見つかりませんでした」と報じた。
治安部隊は反政府デモを厳しく取り締まっているようだ。北西部の都市で撮影されたとみられる動画には治安部隊がデモ隊に実弾を撃ち込む様子が映っていた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは24日、「当局がデモの取り締まりに実弾を使用している証拠を複数確認した」と報告し、懸念を表明した。
またアムネスティは21日の夜に行われたデモだけで子供3人を含む19人が射殺されたと報告している。
しかし、ライシ氏はデモを「暴動」と断じ、「我が国を内側から破壊しようとする者を徹底して取り締まる」と宣言した。
一方、米国はイラン当局がインターネット制限に踏み切ったことを受け、デモ隊を支援するために対イラン制裁のひとつであるインターネット規制を緩和すると発表した。米国務省は「デモ隊を孤立させない」と誓った。
北部ギラン州の警察は24日だけで女性60人を含む700人以上を拘束したと発表している。その他の地域でも取り締まりが強化されたとみられる。
AP通信の取材に応じた女性は友人の話を引用し、「警察はデモ隊を殴り、蹴っ飛ばし、警棒で殴り、数百人を狭い独房に押し込み、食事も水も与えず、その場で糞尿を垂れ流すよう命じた」と説明している。
核武装を目指す強力なイラン革命防衛隊(IRGC)も弾圧に参加しているようだ。米国の非営利団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」によると、19日以降、少なくとも11人のジャーナリストが拘束されたという。
西部の町ではデモ隊が治安部隊を追い出し、町を一時的に占領したと伝えられている。この町で撮影されたとみられる動画には大きな爆発音が聞こえる中、数百人が警察のいない通りを行進する様子が映っていた。
IRNAはこの報道を否定しているが、デモ隊はIRGCに属する準軍事組織の前哨基地を襲撃したと伝えられている。
首都テヘランなどでは親政府集会も開催されている。AP通信によると、治安部隊は政府寄りの抗議者をひとりも取り締まらなかったという。
テヘランの応援集会に参加した女性はAPに、「米国とイスラエルとイスラム法を汚す者に死を」と語った。