最も寛大な救済を行っている国は?
パンデミックにより世界経済がシャットダウンされてから早数カ月。各国は1930年代以来と言われる最悪の経済縮小に苦しんでいる。現在の悲惨な状況から脱出するためには、大規模な救済措置が欠かせない。
国際通貨基金(IMF)によると、4月7日時点で、世界各国は4.5兆ドル(約500兆円)を超える緊急支援措置を承認した。
コロンビアの経済学教授、セーハン・エルギン氏は、各国の学会関係と協力し、166か国の支援状況を調査している。
エルギン氏の調査によると、日本の対応が最も積極的であり、支出規模は同国のGDPの約20%にものぼる。なお、この割合を上回る国は欧州の小国”マルタ”のみである。
米国の支出規模はGDPの約14%(5位)、オーストラリアは11%(6位)、カナダ8.4%、イギリス5%(47位)、コロンビア1.5%、ガンビアは0.6%である。
ただし、これに中央銀行の行動などをプラスすると、「割合が高い国ほど満足度も高い」と一概に決めつけることはできなくなる。
欧州政府は、ロックダウンの影響で厳しい経営状況に追いやられた企業向けの貸付、新規ローン契約を”保障”した。同時に、貸し付けを行う銀行への支援も行っている。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)も、同様のローンプログラムを開始した。
これらの”追加支援対策”を考慮すると、フランスが最も厚い支援を行っていることが分かった。そして、GDPに対する支出規模では47位だったイギリスは、5位に急浮上する。
Columbia University economy report - #Malta with the biggest #COVID19 spending packages to help #businesses , #SMEs & #employees during this pandemic. @MaltaGov pic.twitter.com/8C7vDWxKWu
— Silvio Schembri (@SilvioSchembri) May 8, 2020
現金給付
救済支援策の中でも特に目を引く、国民の注目を集めるものが”現金給付”である。多くの国が経済的に困窮している人々への支援策を打ち出している。ただし、収入の減少率などによって支援の規模が変わるなど、その内容は国によって大きく異なる。
カナダ政府はロックダウンの影響で仕事を失った国民に対し、最大4カ月、月額1,400ドル(約15万円)を支給している。コスタリカでは、国民一人当たり、月額220ドル(約23,000円)を給付している。
アメリカでは、収入が99,000ドル未満(全体の90%)に対し、成人一人当たり最大1,200ドル(約13万円)を支援する予定である。韓国政府は、低所得者層(全体の70%)に対し、一世帯当たり最大100万ウォン(約87,000円)を支給した。
香港政府は2月に成人一人当たり1,280ドル(約14万円)を支給した。日本政府は国民一人当たり10万円、シンガポールは422ドル(約45,000円)の支援を行う予定である。
欧州では”1回限りの支援”に否定的な意見が多く、現金給付を行っていない国も多い、その代わりとして、貸付の条件を緩和するなどの支援プログラムを実施している。
#rishisunak
— Felix Michael (@Felix_MichaelT) May 8, 2020
I thought UK was at the top of the list but this news is an eye opener!
BBC News - Coronavirus bailouts: Which country has the most generous deal?https://t.co/SIh2KSM9iF
賃金保障
ロックダウンにより苦しむ企業への支援も、政府の重要な役目のひとつである。収益を上げられない企業でも「従業員さえ維持」できれば、規制が解除されると同時にある程度の仕事を処理できる。すなわち、経済の回復する速度もそれだけ早くなるのだ。
オランダ政府は条件を満たす企業に対し、賃金コストの90%を保障している。フランスは総賃金の84%、それにプラスして、最低賃金水準の企業に対しては、それを100%保障する支援を行っている。
イギリスでは少なくとも3カ月、従業員一人当たり月額2,500ポンドを上限とし、賃金の80%を保障。カナダでは最大3カ月、賃金の75%を政府が立て替えている。
これらのプログラムは、既存の「保障制度」に基づいて実施されている。一方、アメリカでは企業に対する賃金の支援を行っていない。なお、仮に、同国内の対象企業に2か月分の賃金保障を行った場合、天文学的な予算が必要になると言われている。
給与保護プログラムはコロナウイルスに圧倒されているが、それを行っていない国の中では”論争の的”になっている。事態が収束した後に雇用が維持されていなければ、経済回復の大きな足かせになるためだ。
従業員の「技術」に依存している各種業界では、さらに深刻な事態が予想されている。政府から数十億ドル規模の支援を受けている航空業界がその代表と言えるだろう。もし、膨大な人件費を賄えないという理由で従業員が解雇されれば・・・飛行機を組み立てる者、整備する者、荷物を運搬する者たちがいなくなれば、ロックダウンの解除後、その企業がどうなるかは火を見るより明らかである。
中小企業も同じだ。職人と呼ばれる者たちを解雇すれば、貴重な技術が失われる。コロナウイルス終息後の企業活動に甚大な影響を与えるだろう。
ワシントンのシンクタンク、タックス・ファウンデーション社のダニエル・ブン氏は、「ロックダウン期間が短期間であれば、賃金保障は理にかなっている。ただし、期間が長くなるほど効果が低下し、国の財政に深刻なダメージを与えるだろう」と述べた。
またブン氏は、「最大の問題は経済停止(ロックダウン)の期間。それが長くなると、企業、従業員、その家族がどうなるかは誰にも分からない」と付け加えた。