◎マルコスJrは1986年まで独裁体制を敷いた故フェルディナンド・マルコスのひとり息子である。
2022年5月9日/フィリピン、首都マニアの投票所、大統領候補のマルコスJr(右)とイメルダ婦人(Getty Images/AFP通信)

フィリピンの地元メディアは10日、大統領選に立候補したフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr)の当選は確実と報じた。

マルコスJrは1986年まで独裁体制を敷いた故フェルディナンド・マルコスのひとり息子である。

報道によると、マルコスJrはライバルの現職副大統領レニ・ロブレド(Leni Robredo)氏に大差をつけているという。

今回の総選挙では大統領、副大統領、連邦議会議員、地方議員、市長、町長など、合わせて1万8000以上の議席を数万人の候補者が争う。大統領選の集計は数日かかると見込まれているが、マルコスJrは10日現地時間9時の時点でロブレド氏に倍以上の差をつけており、勝利は堅いと思われる。

マルコスJrのランニングメイトであるサラ・ドゥテルテ氏の勝利もほぼ確実。サラ氏はドゥテルテ大統領の娘である。

地元メディアは、大統領選の投票率を80%以上と報じている。

<大統領選 開票率96% 現地時間10日9時時点>
▽マルコスJr:3062万2302票
▽レニ・ロブレド:1461万1211票
▽マニー・パッキャオ:354万1623票
以下省略

ロブレド氏はまだ負けを認めていないものの、SNSに大差をつけられていると投稿している。

欧米のメディアは一部の投票所で問題を確認したと報じているが、大きな不正は今のところ報告されていないとしている。ある投票所では職員に票を預けるよう言われた有権者がいたと伝えられている。

ドゥテルテ政権は麻薬犯罪に対する残忍な取り締まりで非難されてきた。マルコスJrは当選した場合、ドゥテルテ大統領の政策を維持すると約束している。

独裁者のフェルディナンド・マルコスは敵対勢力に対する超法規的殺人(即決処刑)と拷問を推進し、軍の兵力を増強したが、1986年2月に行われた100万人規模の抗議デモ「ピープルパワー」に屈し、ハワイに逃亡した。

マルコスJrは1983年から1986年まで故郷の州知事を務めていたものの、家族と一緒にハワイに亡命し、父親の死後フィリピンに帰国した。

旧大統領官邸で1200足以上の靴を所有していたイメルダ夫人は9日、マルコス一族の拠点である北部イロコス州バタックの投票所で息子に投票した。

マルコスとイメルダ夫人は推定100億ドルの公的資金を持ち逃げしたとされ、マルコス婦人は帰国後、横領、汚職、脱税など約900件の民事・刑事事件に直面したが、それらはほとんど証拠不十分で棄却され、数少ない有罪判決も上訴で覆された。

マルコスJrは2016年の副大統領選でロブレド氏に敗れ、結果に異議を唱えたものの、結果は覆らなかった。マルコスJrは「今回は騙されない」と宣言している。

一方、ドゥテルテ大統領の娘で次期大統領候補であるサラ氏は「統一」を公約に掲げているが、選挙期間中、マルコスJrと行動を共にすることはほとんどなかった。

ロブレド氏は元弁護士で、選挙期間中、ドゥテルテ大統領の暴力政策を非難し、格差是正に向けた政策を追求すると訴えてきた。

またロブレド氏は政治家の汚職を撲滅すると宣言し、選挙スローガンを「正直な政府、すべての人により良い生活を」とした。

マルコスjrの選挙チームはSNSで、「マルコスJrはフィリピンを1970~80年代の黄金時代に戻し、格差を是正し、低中所得者層を支援する」と宣伝し、支持を集めた。ドゥテルテ家とマルコス家はフィリピンを代表するエリート一族である。

独裁者マルコスを覚えている人は、その時代を黄金時代ではなく「暗黒時代」と呼んでいる。

一方、ロブレド氏は200万人以上とされるボランティアと共にイメージカラーのピンクを前面に押し出し、選挙戦後半では全国各地で戸別訪問キャンペーンを展開した。

マルコスJrとロブレド氏は他の候補を大きく引き離している。元ボクシングチャンピオンで国民的英雄のマニー・パッキャオ上院議員は汚職と貧困問題に取り組むと訴えたが、支持を集めることはできなかった。

2022年4月24日/フィリピン、マニラ首都圏のパサイ、大統領候補のレニ・ロブレド副大統領(Aaron Favila/AP通信)
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