◎保護者の皆さんへ。ギャングに入ったら刑務所か死しか選択肢がないことを子供に説明してください。
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は31日、先週末にギャング関連の殺人事件で数十人が殺されたことを受け、国内の保護者にギャングは「刑務所か死」に直面するため、子供をギャングに近づけないよう警告した。
ブケレ大統領はツイッターに、数千人のギャングが収容された刑務所の動画を投稿した。独房に押し込まれた囚人は床に横たわり、食事が足りず、衛生状態も悪いなどの不満を漏らしている。
ブケレ大統領は、「保護者の皆さんへ。子どもたちにこの動画を見せ、ギャングに入ったら刑務所か死しか選択肢がないことを説明してください」とツイートした。
エルサルバドルは30日にギャングの犯罪に対する刑罰を強化する刑法改正案を賛成多数で可決した。これにより、ギャングに所属し逮捕された幹部の懲役刑は6年以上9年以下から「40年以上45年以下」、その他の構成員は3年以上5年以下から「20年以上30年以下」に引き上げられた。
警察によると、25日から26日の間に発生した殺人事件は70件を超え、26日だけで少なくとも62人が殺害された。
ビジャトロ司法公安相は刑法改正を称賛し、「エルサルバドル人の命を弄ぶテロリストは厳しい現実に直面する」と声明を発表している。
また議会は27日に「非常事態宣言」を承認し、警察の権限と刑務所の体制を強化している。
地元メディアによると、この数日間で少なくとも2,500人のギャングとされる個人が「テロ行為」への関与で逮捕され、首都サンサルバドルの刑務所などに収監された。
国内の刑務所に収監されたギャングは16,000人を超え、食事は1日2食に減らされたと伝えられている。
当局は先週、中米最大のギャングであるマラ・サルバトルチャ(MS-13)のリーダー5人を逮捕した。MS-13は中米と米国で活動するギャングで、エルサルバドル内戦から逃れた難民などが1970~1980年代に結成したと考えられている。生業は殺人、恐喝、麻薬密売。構成員数は7万人以上と推定されている。
ブケレ大統領は一連の取り締まりを国内外にアピールしているが、人権団体や専門家は刑務所内での暴力や嫌がらせを批判し、ギャングに対する国家の取り組みに疑問を呈している。
フロリダ国際大学の研究ディレクターでエルサルバドルのギャングを研究しているミゲル・クルス氏はアルジャジーラの取材に対し、「ブケレ政権の戦術は1990年代から繰り返されてきた」と述べた。「今回の取り締まりが以前より強硬で残忍かは分かりませんが、ギャングに対する暴力は新たな暴力を生み出し、不安を慢性化させるだけでしょう...」
人権NGOアムネスティ・インターナショナルは30日、エルサルバドルの治安が脅かされていることは認める一方、「いかなる状況であろうと、人権は擁護しなければならない」と指摘した。
またアムネスティはツイートの中で、「逮捕された者の一部は弁護人の援助を受ける権利を奪われ、逮捕の理由を知らされていない者もいる」と述べた。
ブケレ大統領の支持率は90%近くを維持しており、ギャングの取り締まり強化もおおむね支持されているように見える。