コンテンプト・オブ・コート 5-23
ローリーは奥の小さな部屋で、ノートパソコンに向かっていた。
検索画面には、いくつものキーワードが並んでいる。
「アンカレッジ 弁護士 自殺」
「二十年前 弁護士事務所 死亡事件」
「グレート・プラーンズ・ヘラルド 弁護士失踪」
ローリーは検索結果を一つずつ開いていった。
古い記事は少ない。
当時の新聞記事を転載したサイト。地元の事件を記録した個人ブログ。過去の裁判記録をまとめたページ。
どれも断片的で、詳しい情報はほとんど残っていなかった。
「……これも違う」
ローリーはページを閉じた。
もう一度、検索条件を変える。
今度は、マイクの事務所が入っている建物の住所を入力した。
検索結果が表示される。
その中に、一つの記事があった。
グレート・プラーンズ・ヘラルド。
二十年前の新聞記事を保存したアーカイブだった。
見出しには、こう書かれていた。
「アンカレッジの女性弁護士、事務所で死亡」
ローリーの指が止まった。
記事を開く。
画面には、古い新聞の紙面を取り込んだ画像が表示されていた。
文字はかすれ、ところどころ読みづらい。
ローリーは拡大した。
記事によると、女性弁護士が事務所で死亡しているのが発見されたという。
警察は自殺とみて捜査を進め、その後、自殺として処理された。
女性には幼い息子がいた。
しかし、記事は息子のその後について、ほとんど触れていなかった。
ローリーは記事に記載された住所を確認する。
間違いなく、この建物だった。
ローリーは椅子から少し身を乗り出した。
さらに記事を読み進める。
女性の名前は、リサ・グリーン。
弁護士として活動していたが、死亡する直前まで、ある事件を担当していたらしい。
その事件の詳細については、記されていなかった。
ローリーは別のタブを開き、リサ・グリーンの名前で検索した。
いくつかの結果が表示される。
だが、詳しい経歴や過去の裁判記録は見つからない。
死亡記事も、グレート・プラーンズ・ヘラルドの短い報道が中心だった。
ローリーは再び、最初の記事へ戻った。
画面の下部に、事件の発生日が記載されている。
日付を見た瞬間、ローリーの手が止まった。
二十年前。
母親が失踪した日だった。
ローリーは画面を見つめた。
日付をもう一度確認する。
間違いない。
年も、月も、日も同じだった。
「……嘘でしょ」
声が漏れた。
母親は、鉛筆を買いに出かけたまま帰ってこなかった。
あの日から、二十年。
警察は捜索を続けたが、母親の行方は分からなかった。
ローリーは、母親がどこかで生きている可能性を捨てきれずにいた。
そして、今、目の前にある記事は、母親が失踪した同じ日に、この建物で女性弁護士が死亡していたことを示している。
しかも、その女性には幼い息子がいた。
ローリーはゆっくりと椅子の背にもたれた。
「どうして……」
二つの事件に、何か関係があるのだろうか。
ただの偶然かもしれない。
ローリーは画面を見つめた。
リサ・グリーン。
女性弁護士。
自殺として処理された事件。
幼い息子。
そして、母親が失踪した日。
ローリーは携帯電話を手に取った。
マイクに電話をかけようとした。
しかし、指が発信ボタンの上で止まった。
今、本人に聞いても、きっと答えてくれない。
ローリーは携帯電話を置いた。
まずは、この記事の出どころを確かめなければならない。
当時の捜査を担当した警察官。
事件の記録。
そして、母親の失踪との関係。
ローリーは新しい検索画面を開いた。
今度は、当時の捜査記録について調べ始める。
画面の片隅には、リサ・グリーンの名前が残っていた。
ローリーはその名前を見つめた。
二十年前に起きた二つの事件。
その日付が一致していることは、偶然なのだろうか。
