コンテンプト・オブ・コート 5-14
アンカレッジ市内。
コールの選挙事務所。
二階の執務室では、コールが市長選の資料に目を通していた。
机の上には、選挙区ごとの支持率や資金計画、今後の活動予定が並んでいる。
コールは一枚の資料を閉じた。
「ジョニーは?」
「一階でスタッフと打ち合わせをしています」
秘書が答えた。
「そうか」
コールは窓の外を見た。
市長選に向けた準備は進んでいる。だが、市長殺害事件の裁判だけは、思いどおりに進むとは限らなかった。
マイク・ハンター。
あの男がどこまで調べているのか、まだ分からない。
コールは秘書に視線を戻した。
「裁判はどうなった?」
秘書はすぐに答えた。
「第4回公判が始まりました。ブローカーもいます」
「そうか」
「はい。検察側の証人として呼ばれています」
コールは表情を変えなかった。
ブローカーが検察側の証人として出廷することはすでに把握していた。
問題は、あの男が何を話すかだった。
「ブローカーは何と言っている?」
秘書が答える。
「以前、伝えたとおりです。何も言わない。CEOの名前も出さない」
コールは秘書を見た。
「念を押しています。余計なことを話せば、自分の立場も危うくなると理解しているはず」
コールはしばらく黙っていた。
ブローカーは金で動く人間だ。
自分の身を守るためなら、どこまで話すか分からない。
それでも、今のところは口を閉ざすと約束している。
「口を開かなければ何も問題ない」
コールは低い声で言った。
秘書は頷いた。
コールは机の上の資料に目を落とした。
「マイク・ハンターは、あいつから必要な情報を引き出そうとするはず」
「はい」
コールは椅子の背にもたれた。
「実行犯は死んだ。カーターのアリバイを裏付ける証拠映像も、裁判官が却下した」
秘書は黙って聞いていた。
「今は選挙を優先する」
「承知しました」
コールは窓の外を見た。
街のあちこちで、選挙に向けた準備が進んでいる。
ポスターが貼られ、スタッフが動き、市民の間では候補者の名前が話題になり始めていた。
コールはこの機会を逃すつもりはなかった。
市長になれば、行政を動かせる。
ノース・ホライズン・シティも前へ進められる。
裁判に構っている暇はない。
「マイク・ハンターの監視を継続しろ」
「分かりました」
「ブローカーにも目を配れ」
秘書は一礼し、執務室を出ていった。
