コンテンプト・オブ・コート 5-11
アンカレッジ。
マイクの事務所。
事務所のドアが開いた。
ローリーが入ってくる。
マイクは机に向かい、書類を読んでいた。顔を上げ、ローリーに声をかける。
「どこに行ってたんだ?」
ローリーは答えなかった。
鞄を机の脇に置き、コートを脱ぐ。そのまま自分の机へ向かい、椅子を引いた。
マイクはしばらく彼女を見ていた。
「……OK。プライベートな質問はなしだ」
ローリーは黙ったまま、机の上の書類を整えた。
マイクは手元の資料を閉じた。
「仕事の話をしよう。市長殺害事件の公判は残り二回だ」
ローリーが顔を上げる。
「分かってるわ」
「ブローカーを引き渡したが、気を抜けない状況だ」
ローリーは眉を寄せた。
「証拠映像は棄却された。証人の証言も、マリベルに信用できないと判断されたようなものよ」
「そうだな」
マイクは淡々と答えた。
「カーターのアリバイを裏付ける映像は、法廷でまともに扱われなかった。店主の証言も、過去に供述を変えたことを理由に疑われている」
ローリーは資料を手に取った。
「結局、凶器も血液も指紋も靴跡も残ったまま。検察側の証拠は、何一つ崩せていない」
「そのとおりだ」
「だったら、次の公判で何をするの?」
マイクは椅子の背にもたれた。
「ブローカーの証言が必要だ」
ローリーは写真を見た。
「コールと実行犯をつなぐ証言ね」
「ああ。奴が何を知っているのか、どこまで関わっていたのか。それを法廷で明らかにする」
「でも、コールに不利な証言をするとは思えないわ」
「俺もそう思う」
マイクは即答した。
「金を受け取って実行犯を紹介したとしても、殺人の依頼だと知っていたとは限らない。奴が何を認め、何を否定するかは分からない」
ローリーは写真を机に置いた。
「それに、あの男は自分の身を守ることしか考えていないでしょう」
「そうだろうな」
「コールに逆らえば、どうなるか分かっているはず」
マイクは少し黙った。
「だから、奴が何を恐れているのかを調べる」
「脅されているということ?」
「可能性はある。だが、決めつけるつもりはない」
ローリーは腕を組んだ。
「どうやって調べるの?」
「まず、カーターに会う」
「カーター刑事に?」
ローリーは少し考えた。
「何か弱点を知っているかもしれない」
「そういうことだ」
マイクは机の上の資料をまとめた。
「証拠映像が使えない以上、別の道を探すしかない。ブローカーの証言が取れれば、コールとのつながりを法廷で示せるかもしれない」
「……でも、それだけでカーター刑事を救えるとは限らない」
「分かってる」
マイクはローリーを見た。
「だから、次の公判までにできることを全部やる」
ローリーはしばらく考え、言った。
「私も行くわ」
