コンテンプト・オブ・コート 5-13
アンカレッジ連邦地方裁判所。
市長殺害事件、第4回公判。
法廷には、多くの傍聴人と報道関係者が集まっていた。
被告人席にはカーターが座っている。
弁護人席にはマイク。ローリーは傍聴席の後方に座り、法廷の様子を見守っていた。
マイクは机の上に資料を並べた。
カーターが小声で話しかける。
「おい」
マイクが顔を向ける。
「何だ?」
カーターは傍聴席を見ていた。
「あのブローカー、傍聴席に座ってるぞ」
マイクはカーターの視線を追った。
傍聴席の中央付近に、一人の男が座っていた。
地味な服装で、周囲の人間と目を合わせようとしない。膝の上に両手を置き、落ち着かない様子で法廷の前方を見ている。
ブローカーだった。
マイクはブローカーを確認すると、資料に目を戻した。
「知ってる。検察側の証人だ」
カーターは表情を変えずに尋ねた。
「どうなってる?」
カーターは再び傍聴席を見た。
「あいつは市長殺害に関わっているんだろ」
「分かってる」
「なのに、検察側の証人だと?」
カーターは納得できない様子だった。
「何を証言するつもりなんだ?」
「それを聞くために、ここにいる」
マイクは淡々と答えた。
カーターは口を閉じた。
傍聴席のブローカーは、周囲を気にしながら何度も時計を確認している。
まるで、早くこの場から立ち去りたいとでもいうようだった。
マイクはその様子を観察していた。
「コールに不利なことを話すと思うか?」
カーターが小声で尋ねる。
「さあな」
「お前が証言させると言ったんだろう」
「証言するかどうかは、あいつ次第だ」
カーターは眉をひそめた。
「ずいぶん無責任だな」
「俺は弁護士だ。未来を保証する仕事じゃない」
カーターは鼻で笑った。
「よく言う」
マイクは返事をせず、資料を開いた。
傍聴席の後方では、ローリーが二人の様子を見ていた。
ローリーはブローカーに目を向ける。
なぜ、検察側の証人として出廷することになったのか。
コールとの関係を、どこまで話すつもりなのか。
まだ何も分からない。
やがて、法廷の扉が開いた。
「全員、起立してください」
係員の声が響く。
マリベルが入廷した。
傍聴人たちが一斉に立ち上がる。
マリベルは裁判官席に着き、手元の書類を確認した。
「着席してください」
マリベルは法廷内を見渡した。
「それでは、市長殺害事件の第4回公判を始めます」
検察側の席では、エルマ・アトキンソンが資料を整えていた。
その隣にはラングドン検事が座っている。
マリベルが告げた。
「本日の審理について、検察側から説明を」
エルマが立ち上がった。
「はい、裁判長。本日は証人を呼んでいます」
マリベルが頷く。
「分かりました」
エルマは一礼し、席に戻った。
マイクは傍聴席のブローカーを見た。
カーターが呟く。
「……本当に、あいつが話すのか?」
マイクは前を向いたまま答えた。
「それを確かめるのが、今日の仕事だ」
法廷内が静まり返る。
マイクは資料を閉じ、静かに息を吐いた。
ブローカーが何を語るのか。
その証言が、裁判の流れを変えることになるのか。
まだ、誰にも分からなかった。
