コンテンプト・オブ・コート 5-12
アンカレッジ刑務所。
面会室。
金属製の机を挟み、マイクとローリーはカーター刑事と向かい合っていた。
カーターは椅子に深く腰掛け、腕を組んでいる。
マイクが口を開いた。
「次の公判で、ブローカーが証言する可能性がある」
カーターは鼻で笑った。
「コールに不利な証言をするはずがない」
「どうしてそう思うの?」
ローリーが尋ねた。
「金を受け取って実行犯を紹介したんだろう。そんな男が、今さら自分の首を絞めるような真似をするか?」
「自分の罪を軽くするために、知っていることを話すかもしれない」
「甘いな」
カーターは首を振った。
「あいつらは、そんな人間じゃない」
マイクは黙ってカーターを見ていた。
「なら、話させればいい」
ローリーが言った。
カーターがローリーを見る。
「どうやって?」
「言わせないと」
ローリーは鞄から一枚の写真を取り出した。
ブローカーの顔が写っている。
写真をカーターの前に置いた。
「見覚えは?」
カーターは写真を手に取った。
顔を確認した瞬間、眉をひそめる。
「こいつは……俺が取り調べをしたヤツだ」
マイクが身を乗り出した。
「罪名は?」
「違法薬物の所持だ。数年前に逮捕したが、うまく言い逃れを」
「どういうこと?」
ローリーが尋ねる。
カーターは写真を机に戻した。
「現場から薬物を押収した。だが、本人の所有物だと証明できなかった。結局、立件できずに終わった」
「その後は?」
「知らん。街で商売を続けていたんだろう」
カーターは写真を見つめた。
「まさか、こいつが市長殺害事件に関わっているとはな」
マイクは腕を組んだ。
「お前が取り調べたとき、何か気づいたことは?」
「特にない。口がうまく、責任を他人に押しつけるのが得意な男だった」
ローリーは写真を指で押さえた。
「知っていることを全部話して。弱点は?」
カーターはしばらく考えた。
「……人生を諦めたヤツだ」
「人生を?」
「ああ。何度も逮捕されかけて、そのたびに逃げ切ってきた。まともに働く気もなければ、先のことを考える様子もなかった」
カーターは椅子の背にもたれた。
「失うものがないから怖いもの知らずだよ」
ローリーは眉を寄せた。
「それじゃ、脅しても意味がないってこと?」
「そうだ。金をちらつかせても、脅しても、簡単には吐かないだろう」
マイクは写真を手に取った。
「失うものがない人間なんていない」
カーターがマイクを見る。
マイクは写真の男を見つめたまま続けた。
「こいつもそうだ」
「何か考えがあるのか?」
カーターが尋ねる。
「ある」
マイクは写真を机に戻した。
「人間は何かを守ろうとする。金か、自由か、自分の命か、家族か」
ローリーがつぶやく。
「家族……」
カーターは二人を見比べた。
「簡単じゃない。コールを敵に回せば、ただでは済まない」
マイクは表情を変えず、言った。
「知ったことか」
短い沈黙が落ちる。
カーターは写真を見つめ、やがて低い声で言った。
「……いずれにせよ、お前らに任せる」
マイクは立ち上がった。
「次の公判までに、できることをやる」
面会終了を告げる看守の声が響いた。
ローリーは資料を鞄にしまう。
カーターは二人を見た。
「おい」
マイクが振り返る。
「何だ?」
「俺は、まだお前を信用したわけじゃない」
マイクは小さく笑った。
「知ってる」
「だが、今はお前に頼るしかない」
「なら、黙って待ってろ」
カーターは苦笑した。
「嫌な男だ」
「よく言われる」
マイクとローリーは面会室を出た。
廊下を歩きながら、ローリーが口を開く。
「本当に、ブローカーを動かせると思ってるの?」
マイクは前を向いたまま答えた。
「動かすんじゃない」
「じゃあ、どうするの?」
マイクは足を止めた。
「証言させる」
ローリーはマイクの横顔を見た。
その言葉の意味を尋ねようとしたが、マイクはもう歩き始めていた。
