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韓国発「フローズンヨーグルト」ブーム、課題と今後の展望

韓国発フローズンヨーグルトブームは、「健康」「体験」「SNS」という三要素が融合した新しい消費形態である。
フローズンヨーグルトのイメージ(Getty Images)
現状(2026年5月時点)

2026年5月時点において、韓国発フローズンヨーグルトは日本のスイーツ市場における新興トレンドとして急速に認知拡大している段階にある。特にZ世代を中心とした若年層に支持され、都市部を起点として全国への波及が進行中である。

2025年夏以降、日本国内では複数の専門店が出店を開始し、SNSを媒介とした拡散によって短期間で話題化した。テレビメディアでも「次のトレンド」として取り上げられ、既存の韓国スイーツブームの延長線上で市場形成が進んでいると評価される。


フローズンヨーグルトとは

フローズンヨーグルトとは、ヨーグルトをベースとした冷菓であり、乳酸菌由来の酸味と軽い口当たりを特徴とするデザートである。従来のアイスクリームに比べて低脂肪・低カロリーである点が差別化要因となる。

韓国においてはこれに多様なトッピングを組み合わせる「カスタム型スイーツ」として進化し、単なる冷菓から「体験型商品」へと再定義された。この点が従来のフローズンヨーグルトとの差異である。


ブームの概要と主要ブランド

本ブームは、韓国国内で確立されたカスタム型フローズンヨーグルト文化が日本へ輸入されたことに起因する。特に2025年以降、グリークヨーグルトブームの流れを受けて「ヘルシー×スイーツ」の需要が高まり、その受け皿として急成長した。

主要ブランドとしては、韓国発の「YOAJUNG(ヨアジョン)」を筆頭に、類似コンセプトのヨーグルト系スイーツブランドが追随している。これらは「韓国カルチャー体験」を提供する店舗として位置づけられる。


主要な牽引ブランド

市場拡大の中心に位置するのは、韓国国内で多数店舗を展開する大型ブランドである。特にYOAJUNGは400店舗以上を有し、標準化された商品フォーマットとSNS拡散力を兼ね備えた存在である。

このようなブランドは単なる飲食提供にとどまらず、「トレンドの発信装置」として機能している点が重要である。ブランドそのものが文化輸入の媒体となっている構造が確認される。


YAOJUNG(ヨアジョン)

YOAJUNGは韓国発のフローズンヨーグルト専門ブランドであり、日本市場におけるブームの中核的存在である。2025年の日本上陸以降、短期間で複数都市に出店し、急速な拡大を遂げている。

最大の特徴は46種類以上のトッピングによるカスタマイズ性であり、顧客は自らの嗜好に応じた「唯一の一杯」を設計できる。この構造が消費者の参加意識を高めている。


ヨーグルトパープル(ヨプ)

ヨーグルトパープル(通称ヨプ)は、同様に韓国式ヨーグルトデザートを提供するブランド群の一つとして認識される。YOAJUNGほどの規模ではないが、ビジュアル性とカスタム性を重視した業態で競争している。

これらのブランド群は差別化よりも「韓国スイーツ体験」という共通価値を共有しており、カテゴリ全体として市場を拡張する役割を担っていると考えられる。


3つの核心的ヒット要因(分析)

本ブームの成立要因は大きく三つに整理できる。第一に「健康志向」、第二に「体験価値」、第三に「SNS拡散性」である。

これらは個別ではなく相互に連関し、複合的な価値を形成している点に特徴がある。特にSNSを媒介とした可視化可能な体験は、従来の食品トレンドとは異なる拡散構造を持つ。


「タイパ・健康」と「満足感」を両立するギルトフリー性

フローズンヨーグルトは低カロリーかつ高タンパクであり、「罪悪感の少ないスイーツ」として認識されている。これは近年の「ヘルシープレジャー」志向と一致する。

さらに、ボリュームやトッピングの自由度により満足感も担保されるため、「健康」と「満足」の両立という消費者ニーズを充足している。


「体験型カスタム」への消費行動シフト

従来のスイーツ消費は「完成品の購入」であったが、本ブームでは「自分で作る体験」が価値の中心にある。これはコト消費の進展を象徴する現象である。

特にトッピング選択のプロセス自体がエンターテインメント化しており、購買行動が体験行動へと転換している点が重要である。


K-POPアイドル・インフルエンサー発の「推しレシピ」拡散

K-POPアイドルが紹介するカスタムレシピがSNS上で拡散されることで、消費者は「同じものを再現する」行動を取るようになる。これは推し活と消費が結びついた典型例である。

この現象はブランド主導ではなく、ファンダム主導で拡散が進む点に特徴がある。結果として、マーケティングコストを抑えながら認知拡大が可能となっている。


トッピングのトレンドと視覚的特徴

トッピングは本ブームの中核要素であり、味覚だけでなく視覚的インパクトが重視される。色彩・質感・高さなどがSNS映えを規定する要因となる。

そのため、従来の食品開発とは異なり「写真映え」を前提とした商品設計が行われている点が特徴的である。


コムハニー

コムハニー(巣蜜)は最も象徴的なトッピングであり、フローズンヨーグルトとの相性の良さから定番化している。濃厚な甘味と自然素材のイメージが付加価値を形成する。

また、立体的な形状により視覚的インパクトが強く、SNS拡散における重要な役割を担う。


チョコスシェル

チョコスシェルは液体チョコが瞬時に固まることで食感変化を生むトッピングである。視覚的演出と食感の両面で価値を提供する。

このような「変化する食感」は体験価値を強化し、リピート動機の形成に寄与する。


ドバイチョコ / カダイフ

ピスタチオやカダイフを用いたドバイチョコは、グローバルスイーツトレンドの影響を受けたトッピングである。異文化要素の融合が新規性を生む。

限定性の高いトッピングとして導入されることで、来店動機の強化にも寄与している。


ヤックァ

ヤックァは韓国の伝統菓子であり、現代スイーツとの組み合わせによって新たな価値を創出している。伝統とモダンの融合は韓国スイーツの特徴的手法である。

このような要素は文化的ストーリー性を付与し、単なるデザート以上の意味を持たせる。


日本市場における定着への課題

日本市場においては、ブームから定着への移行が課題となる。特に一過性のSNSトレンドに終わる可能性が指摘される。

また、既存のアイス・カフェ市場との競合において差別化を維持できるかが重要な論点となる。


季節変動(冬期の需要維持)

冷菓である以上、冬季の需要減少は不可避である。これに対してはホットメニューや室内体験価値の強化が必要となる。

季節依存性をいかに緩和するかが、年間収益安定化の鍵となる。


価格設定(高客単価)

フローズンヨーグルトは1,250円〜2,500円程度と比較的高価格帯である。これは体験価値を含んだ価格設定といえる。

しかし、価格感度の高い層への浸透には課題があり、日常消費化の障壁となる可能性がある。


今後の展望

今後は①コンビニ商品化によるマス化、②地域展開の加速、③他カテゴリとの融合が進むと予測される。特に簡便化商品が普及すれば市場規模は拡大する可能性が高い。

一方で、トレンドの寿命はSNS依存度に左右されるため、継続的な商品革新が不可欠である。


まとめ

韓国発フローズンヨーグルトブームは、「健康」「体験」「SNS」という三要素が融合した新しい消費形態である。従来のスイーツ市場とは異なる構造を持つ点に本質的特徴がある。

今後の成否は、一過性の流行を超えて日常消費へ転換できるかに依存する。特に価格と季節性の課題を克服できるかが鍵となる。


参考・引用リスト

  • PR TIMES(2025)
  • Sweets Catch-Up(2025)
  • Dressy(2026)
  • テレビ番組データ(2026)
  • 各種ニュース・メディア記事(2025–2026)

過去のブーム(タピオカ等)との構造的差異

過去の代表的スイーツブームであるタピオカは、単一商品を中心とした「完成品消費モデル」であったのに対し、フローズンヨーグルトは「構築型消費モデル」である点に本質的差異がある。タピオカは味・ブランド・立地による競争が主軸であり、消費者の関与度は比較的低かった。

一方、フローズンヨーグルトはトッピング選択を通じて消費者が商品形成に関与するため、購買行動そのものが体験価値を内包する。この「参与型消費」は、単なる飲食トレンドから一段上の文化的消費へと昇華する可能性を持つ構造である。

さらにタピオカは「模倣容易性」が極めて高く、参入障壁の低さから急速な供給過多を招いたのに対し、フローズンヨーグルトはトッピング構成・オペレーション・ブランド体験の複合性により、一定の差別化余地が存在する。この点がブームの持続可能性における重要な差異となる。


現代の2大消費トレンドとの合致

現代の消費行動は大きく「タイパ(時間効率)」と「コト消費(体験価値)」の二軸で整理されるが、フローズンヨーグルトはこの両者を同時に満たす稀有な事例である。短時間で注文・提供が完結する一方、選択プロセス自体が体験価値として機能するためである。

加えて「ウェルビーイング消費(健康志向)」という第三の潮流とも整合している点が重要である。低脂肪・高タンパクという機能的価値により、心理的負担の少ない嗜好品として受容される構造を持つ。

このように、単一トレンドではなく複数の消費潮流の交点に位置することが、本ブームの強度を高めている。従来の単発的ヒット商品と比較して、複合的需要基盤を有する点が特徴である。


マス層への浸透:コンビニ・量販店での「定着期」への移行

トレンドが一過性に終わるか定着するかは、「専門店依存」から「日常接点への拡張」が実現するかに依存する。フローズンヨーグルトにおいては、コンビニエンスストアおよび量販店への展開が次の分岐点となる。

特に日本市場では、コンビニが新規食品カテゴリの普及装置として機能してきた歴史がある。簡易版フローズンヨーグルトやトッピング済み商品が流通すれば、価格帯の引き下げと接触頻度の増加により、ライトユーザー層への浸透が進むと考えられる。

ただし、体験価値の簡略化は同時に差別化要因の希薄化を招くため、「専門店=体験」「量販商品=日常消費」という二層構造の確立が必要となる。この構造が形成されれば、ブームは「流行期」から「定着期」へと移行する。


今後の二極化予測

今後の市場は「高付加価値体験型」と「低価格日常型」の二極化が進行すると予測される。前者は都市部の専門店を中心に、SNS映え・限定トッピング・空間演出を強化したプレミアム路線である。

後者はコンビニ・スーパーを中心とした簡便型商品であり、健康志向スイーツとして日常的に消費されるカテゴリへと収斂する。この層では価格競争が激化し、機能性(カロリー・栄養)訴求が主軸となる。

この二極化は他の食品カテゴリでも確認される一般的傾向であり、フローズンヨーグルトも例外ではない。むしろカスタム性と簡便性の両立が可能な特性上、この分化はより明確に進行する可能性が高い。

結果として、中価格帯・中途半端な体験価値を提供する事業者は競争優位を確立しにくくなると考えられる。したがって、今後の競争戦略は「どちらの極に属するか」を明確化することが不可欠である。


追記まとめ

韓国発フローズンヨーグルトブームは、従来のスイーツトレンドとは異なる複合的な構造を持つ現象であり、その本質は単なる食品の流行ではなく、消費行動の変化そのものを反映したものである。本ブームは「健康志向」「体験価値」「SNS拡散」という三要素が相互作用することで成立しており、これらが同時に機能することで高い拡散力と共感性を獲得している。

まず、健康志向の側面においては、低脂肪・高タンパクといった機能的価値が「ギルトフリー消費」という現代的価値観と合致している点が重要である。従来のスイーツは「嗜好品=罪悪感」という構図を持っていたが、フローズンヨーグルトはその前提を相対化し、「食べてもよい理由」を提供する商品として再定義されている。この心理的障壁の低さが、日常的消費への転換可能性を内包している。

次に、体験価値の観点では、トッピング選択を中心としたカスタマイズ構造が消費者の参与を促し、「自分で作る楽しさ」を価値の中核に据えている点が特筆される。これは従来の完成品消費からの転換であり、コト消費の進展を象徴するものである。購買行動そのものがエンターテインメント化することで、商品は単なる食品ではなく「体験コンテンツ」として位置づけられる。

さらに、SNS拡散性は本ブームの加速装置として機能している。視覚的に訴求力の高いトッピング構成や色彩設計は、写真・動画との親和性が高く、ユーザー自身が情報発信者となる構造を生む。加えて、K-POPアイドルやインフルエンサーによる「推しレシピ」の共有は、模倣行動を誘発し、ファンダムを介した自律的拡散を実現している。このように、企業主導ではなく消費者主導でトレンドが拡張する点が特徴的である。

過去のタピオカブームとの比較においては、構造的差異が明確である。タピオカは完成品として提供される単一商品であり、味やブランドに依存する「受動的消費モデル」であったのに対し、フローズンヨーグルトは消費者が商品構築に関与する「能動的消費モデル」である。この違いはリピート動機やブランドロイヤルティの形成にも影響を及ぼし、より持続性の高い市場形成を可能にする要因となる。

また、参入障壁の観点においても差異が存在する。タピオカは設備・原料ともに標準化されており模倣が容易であったため、短期間で供給過多に陥った。一方、フローズンヨーグルトはトッピングの多様性、オペレーション設計、空間演出など複数要素の統合が求められるため、一定のブランド力や運営力が必要となる。この点が市場の過剰飽和を抑制する可能性を持つ。

さらに、本ブームは現代の主要消費トレンドとの整合性という観点でも説明可能である。「タイパ(時間効率)」の観点では、短時間で提供される一方で選択プロセスが効率的に設計されているため、無駄のない体験を提供する。「コト消費」の観点では、カスタマイズ体験自体が価値となり、商品以上の意味を持つ。加えて「ウェルビーイング消費」との親和性も高く、複数の需要軸が重なり合うことで市場の安定性が強化されている。

一方で、日本市場における定着にはいくつかの課題が存在する。第一に季節変動の問題であり、冷菓である以上、冬季の需要低下は避けられない。この課題に対しては、ホットメニューの導入や室内体験価値の強化など、季節依存性を緩和する施策が求められる。第二に価格設定の問題がある。現状の専門店は高価格帯に位置しており、ライトユーザー層への浸透には障壁となる可能性がある。

このような課題を克服する鍵として、「マス流通への展開」が挙げられる。コンビニや量販店において簡易型商品が普及すれば、接触頻度の増加と価格低下により市場の裾野が拡大する。日本においてはコンビニが食品トレンドの普及装置として機能してきた歴史があり、フローズンヨーグルトも同様の経路を辿る可能性が高い。

ただし、ここで重要となるのは体験価値の維持である。量販商品は利便性と価格競争力を持つ一方で、カスタム体験や視覚的演出といった魅力が希薄化するリスクを伴う。そのため、「専門店=高付加価値体験」「量販商品=日常消費」という二層構造を確立し、それぞれ異なる価値を提供する戦略が必要となる。

今後の市場構造は、この二層構造を基盤として「二極化」が進行すると予測される。高付加価値領域では、SNS映えや限定トッピング、空間デザインなどを強化したプレミアム体験が求められる。一方、日常消費領域では、低価格・機能性・手軽さが重視され、健康志向スイーツとしてのポジションが確立される。

この過程において、中途半端なポジショニングを取る事業者は競争優位を確立しにくくなる可能性が高い。明確な差別化軸を持たない場合、価格競争または体験競争のいずれにも勝てない構造に陥るためである。したがって、今後の競争戦略においては、自社がどの市場セグメントを狙うのかを明確に定義することが不可欠となる。

総合的に見ると、韓国発フローズンヨーグルトブームは、単なる輸入トレンドではなく、消費行動の進化を象徴する現象である。健康・体験・SNSという複数の価値が重層的に組み合わさることで、高い市場適合性を持つ点に本質がある。

最終的な成否は、この複合的価値を維持しながら日常消費へと転換できるかに依存する。すなわち、ブームとしての一過性を超え、「文化としての定着」に至るか否かが問われているのである。

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