イギリスでブレグジット議論再燃、与党・労働党に亀裂
2016年の国民投票から10年が近づく中、ブレグジットは依然として英国政治最大の争点の一つであり続けている。

イギリスで欧州連合(EU)離脱問題、いわゆる「ブレグジット」を巡る議論が再び活発化している。きっかけとなったのは、与党・労働党内で将来の党首候補とも目されるストリーティング(Wes Streeting)前保健相が、「ブレグジットはイギリスに深刻な損害を与えた歴史的誤りだった」と発言したことである。同氏はさらに、将来的にはイギリスがEUへの再加盟を検討すべきだとの認識を示し、長らく封印されてきた再加盟論を公の場で提起した。
この発言はスターマー(Keir Starmer)首相率いる労働党政権に新たな火種をもたらしている。スターマー氏はこれまで、「EUとの関係改善は進めるが、単一市場や関税同盟への復帰、EU再加盟は行わない」という立場を維持してきた。これは、2016年の国民投票でEU離脱を支持した有権者の反発を避ける狙いがあるためだ。特にイングランド北部や中部には離脱支持層が多く、労働党は総選挙でこうした地域の支持を取り戻すことで政権交代を実現した経緯がある。
しかし、政権発足後の労働党は支持率低迷に苦しんでいる。高止まりするインフレ、医療や交通など公共サービスの停滞、移民流入への不満などが重なり、地方選挙では議席を大幅に失った。党内ではスターマー氏の指導力に疑問を呈する声も強まりつつあり、次期党首候補を巡る駆け引きが表面化している。ストリーティング氏の発言も、こうした権力闘争の文脈で受け止められている。
一方、スターマー氏のもう一人のライバルであるマンチェスター市長のバーナム(Andy Burnham)氏は18日、再加盟論に慎重な立場を示した。バーナム氏は「ブレグジットが経済に悪影響を及ぼしたことは否定できない」としながらも、「国民投票の結果は尊重されるべきであり、再び同じ議論で国を分断すべきではない」と語った。同氏はEUとの実務的な関係強化には賛成しているが、再加盟を目指すべきではないとしている。
この動きを受け、ブレグジット推進派のファラージ(Nigel Farage)党首率いる右派政党「リフォームUK」は攻勢を強めている。ファラージ氏は「労働党は結局EUに戻ろうとしている」と批判し、離脱支持層の結集を図っている。最近の世論調査では、EU離脱を「間違いだった」と考える英国民が増加している一方で、再加盟そのものには依然として慎重論が多い。移民政策やEU法への再従属に対する警戒感が根強いためである。
2016年の国民投票から10年が近づく中、ブレグジットは依然として英国政治最大の争点の一つであり続けている。スターマー政権の求心力低下と党内対立が進めば、EUとの関係を巡る議論はさらに激化する可能性が高い。
