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大発見!和食にジャム新調理術、ポイントは・・・

ジャムは従来、「パンに塗る食品」という位置付けが一般的であった。しかし食品科学の視点から見ると、糖類、有機酸、ペクチン、香気成分などを同時に含む複合調味料であり、和食との親和性は決して低くない。
ジャムのイメージ(Getty Images)
「和食にジャム」という新しい発想はどこまで広がっているのか

和食にジャムを使用するという発想は、一見すると意外性がある。しかし2020年代に入ると、家庭料理、レストラン、食品メーカーの開発現場において、「砂糖やみりんの代替」としてジャムを活用する調理法が徐々に注目されるようになった。2026年7月現在では、一部の料理研究家やシェフだけの特殊な技法ではなく、一般家庭でも再現可能な「調理のコツ」として紹介される機会が増えている。

その背景には、食品価格の高騰がある。砂糖やみりん、はちみつ、果汁調味料などの価格上昇に伴い、家庭では「余ったジャムを料理に活用する」という節約志向が広まった。また食品ロス削減の観点からも、朝食用として使い切れなかったジャムを料理へ転用することが推奨されるようになり、SNSや動画配信サイトではさまざまなレシピが共有されている。

さらに近年は、ジャム自体の品質が大きく向上していることも見逃せない。従来のジャムは糖度が高く、パンに塗る用途が中心であったが、現在では果実含有率を高めた商品、低糖度タイプ、無添加タイプ、オーガニック製品など選択肢が大幅に増えている。その結果、「果実の風味を生かした調味料」として料理へ応用しやすくなったのである。

食品メーカーも「料理に使えるジャム」という新しい市場を意識し始めている。公式レシピサイトでは照り焼き、豚の角煮、煮魚、鶏肉の甘辛煮、味噌焼きなど、従来は砂糖やみりんを使用していた料理にジャムを加えるレシピが多数紹介されている。特にマーマレードを利用した肉料理は、日本だけでなく欧州でも古くから知られており、日本の和食へ応用した形と考えられる。

一方で、「ジャムを料理へ入れると甘くなりすぎるのではないか」という誤解も根強い。しかし実際には、適切な分量を使用すればジャム特有の甘味だけが残るわけではない。果実由来の酸味、香り、有機酸、ペクチンなどが複雑に作用し、砂糖だけでは得られない味わいを形成することが、多くの調理実験や食品科学の研究から示されている。

特に和食は、しょうゆ・みりん・酒・砂糖を基本とする「甘辛」の味付けが多い。ここへジャムを加えることで、糖質だけでなく果実由来の香気成分や酸味が加わり、味に立体感が生まれる。つまりジャムは単なる甘味料ではなく、「複数の役割を持つ複合調味料」として機能するのである。

この考え方は、フランス料理やイギリス料理では以前から一般的であった。例えばオレンジマーマレードは鴨肉料理や豚肉料理、アプリコットジャムはラム肉やチキン料理、リンゴジャムはローストポークなどで利用されてきた。日本ではそれらを和風調味料へ応用し、しょうゆとの組み合わせによって独自の調理法へ発展させている点が特徴である。

近年は管理栄養士や料理研究家も、ジャムを「甘味料」ではなく「調味料」と位置付ける解説を行うようになっている。その理由として、ジャムには糖だけではなく、有機酸、果実繊維、香気成分、ペクチンなど、多様な食品成分が含まれており、加熱調理時にはこれらが同時に作用することが挙げられる。

さらに食品科学の観点では、ジャムは加熱時の粘度変化が比較的安定していることも利点である。液体調味料だけでは流れ落ちてしまうタレも、ジャムを加えることで素材への付着性が高まり、味が均一になじみやすくなる。これは家庭料理だけでなく、惣菜や加工食品の品質安定にも利用されている技術である。

また、日本の和食文化は「うま味」を重視する一方で、「照り」「つや」「香り」といった視覚・嗅覚の要素も重要視してきた。ジャムはこれら複数の要素を一度に補える素材であり、見た目と味の双方を向上させる調味料として評価され始めている。

もちろん、すべての和食にジャムが適しているわけではない。繊細な吸い物や茶碗蒸しなど、素材本来の風味を最優先する料理では使用機会は限られる。一方で、煮物、焼き物、照り焼き、甘辛煮、味噌焼き、焼き鳥、角煮などでは、ジャムが持つ特性を十分に発揮できる。

2026年時点では、「ジャム=パンのお供」という固定観念は徐々に薄れつつある。食品ロス削減、健康志向、多様な調味料の活用、料理の簡便化という社会的背景も重なり、ジャムは新たな和食調味料として一定の地位を築き始めていると言える。


科学的メカニズムと調理効果

一般に調味料は、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」のいずれかを付与するものとして分類される。しかしジャムは、それらの要素を複数同時に備えている点で特殊な食品である。果実由来の糖、有機酸、香気成分、ペクチン、水分、さらには果肉や果皮に含まれる微量成分が一体となっているため、料理全体の味や食感、香りに多面的な影響を及ぼす。

和食では、しょうゆ・みりん・酒・砂糖を基本とした調味設計が広く用いられる。このうちジャムは、砂糖やみりんの役割を部分的に代替しながら、それらにはない果実由来の風味を付加できるため、「複合調味料」として機能するのである。

食品科学では、調理によるおいしさは「味覚」「嗅覚」「視覚」「食感」の四つの要素が相互に影響すると考えられている。ジャムはこの四要素すべてに作用する数少ない食品であり、単なる甘味料とは異なる価値を持つ。

例えば、味覚では糖による甘味と有機酸による酸味が全体のバランスを整える。嗅覚では果実特有の揮発性芳香成分が料理に奥行きを与え、視覚では煮汁やタレに美しい照りと光沢を生み出す。さらにペクチンによる適度な粘性が食材への絡みを良くし、口当たりにも変化をもたらす。

近年の食品研究では、「味は舌だけで感じるものではない」という考え方が定着している。人は香りや見た目からもおいしさを判断するため、ジャムがもたらす複合的な効果は、実際の糖分量以上に料理全体を豊かな味わいへ導くことが知られている。


ジャムを構成する主要成分

ジャムの主成分は果実、糖類、水分である。しかし実際には、それ以外にも調理上重要な役割を担う成分が数多く含まれている。

代表的なのがペクチンである。ペクチンは植物細胞壁に存在する水溶性食物繊維であり、果物を加熱すると糖と酸の存在下でゲル状構造を形成する。この性質によってジャム独特の粘度が生まれ、調味液を食材表面へ均一に付着させる働きを担う。

次に重要なのが果糖やブドウ糖である。ジャムに含まれる糖類は、砂糖だけを加えた場合とは異なり、複数種類の糖が混在している。そのため甘味の立ち上がりが柔らかく、角のない自然な甘さを感じやすい特徴がある。

さらに、有機酸も重要な要素である。リンゴ酸、クエン酸、酒石酸など果実によって異なる有機酸が含まれており、これらは甘味を引き締めるだけでなく、肉や魚の臭みを抑え、素材本来の風味を際立たせる役割を果たす。

加えて、果皮や果肉にはテルペン類やエステル類などの揮発性香気成分が含まれている。これらは加熱中に立ち上る香りを豊かにし、しょうゆや味噌、酒の香りと組み合わさることで、複雑で奥深い風味を形成する。


和食との相性が良い理由

和食は「引き算の料理」と表現されることがある。素材の持ち味を生かしながら必要最小限の調味で仕上げるため、調味料同士の相性が極めて重要となる。

ジャムが和食と相性が良い理由は、果実の風味がしょうゆや味噌の発酵香と競合するのではなく、互いを補完し合う点にある。しょうゆのアミノ酸由来のうま味と、果実由来の甘味・酸味・香りが組み合わさることで、味の輪郭がより明瞭になる。

例えば照り焼きでは、しょうゆだけでは塩味が前面に出やすいが、ジャムを少量加えることで甘味が柔らかくなり、酸味によって後味も軽く仕上がる。同じ糖分量であっても、味覚上は「甘すぎない」と感じられることが少なくない。

味噌料理でも同様である。味噌は発酵由来の複雑な香りを持つが、果実の香気成分が加わることで香りに立体感が生まれる。その結果、味噌だけでは重く感じられる料理も、軽快な印象へ変化する場合がある。


加熱調理で起こる化学変化

ジャムの真価が最も発揮されるのは加熱時である。加熱によって糖とアミノ酸が反応すると、メイラード反応が進行し、褐色化と香ばしい香りが形成される。

砂糖だけでもメイラード反応は起こるが、ジャムには果糖やブドウ糖など反応性の高い還元糖が含まれているため、比較的穏やかな加熱条件でも焼き色や香ばしさが生まれやすい特徴がある。

また、果実由来の酸は反応速度を適度に調整し、過度な焦げ付きを抑える働きも期待できる。そのため照り焼きや煮魚などでは、美しい色合いと均一な照りを得やすい。

さらにペクチンは加熱後もある程度の粘度を維持するため、タレが流れ落ちにくくなる。結果として調味液が素材へ均等に付着し、味のばらつきが少ない仕上がりとなる。


なぜ「ジャムらしさ」が残らないのか

「料理にジャムを入れるとジャム味になる」と考える人は少なくない。しかし実際には、適量を用いた場合、完成した料理からジャムそのものを感じ取ることは難しい。

その理由は、加熱によって果実の揮発性香気成分の一部が変化し、しょうゆや酒、みりん、味噌などの香りと再構成されるためである。また、糖や酸は料理全体へ均一に分散するため、「イチゴ味」「リンゴ味」といった印象ではなく、「コクがある」「味が丸い」「後味が良い」といった形で知覚される。

料理人の間では、このような使い方を「隠し味」と呼ぶ。隠し味とは、存在を主張するのではなく、料理全体の完成度を高めるために加える調味であり、ジャムはその用途に非常に適した食品と言える。

つまり和食におけるジャムの役割は、「果物を食べる」ことではなく、「料理全体の調和を整える」ことにある。適切な種類と分量を選べば、食べる人はジャムの存在を意識しないまま、おいしさだけを感じるのである。


①「照り」と「コク」の創出(ペクチンと果糖の効果)

和食において「照り」は、料理のおいしさを左右する重要な視覚的要素である。照り焼き、煮魚、角煮、ぶり大根など、多くの料理では表面の光沢が食欲を刺激し、味への期待感を高める役割を果たしている。

一般的には、みりんや砂糖を煮詰めることで照りを作る。しかしジャムを利用すると、それとは異なる自然な光沢が得られる。この違いを生み出す中心的な成分がペクチンである。

ペクチンは水溶性食物繊維の一種であり、水分を保持しながら適度な粘性を形成する性質を持つ。そのため、加熱した調味液が食材の表面を均一に覆い、薄い膜を形成する。この膜が光を均一に反射することで、美しい照りが生まれる。

砂糖だけで作ったタレでは、煮詰め方によって粘度が急激に変化し、焦げ付きやすくなることがある。一方、ペクチンを含むジャムは粘度変化が比較的緩やかであるため、初心者でも安定した仕上がりになりやすい。

また、ジャムには果糖が多く含まれる場合がある。果糖はショ糖よりも甘味度が高く、少ない量でも十分な甘味を感じやすい特徴がある。そのため、砂糖の使用量を抑えながらも満足感のある味を実現しやすい。

さらに果糖は、還元糖として加熱時の褐変反応に関与しやすい。しょうゆ中のアミノ酸と反応することで、香ばしい風味や深みのある色調が生まれ、料理全体に「コク」が加わる。

ここでいう「コク」とは、単純に味が濃いことではない。食品科学では、甘味・うま味・香り・余韻などが複合的に感じられる状態を指すことが多い。ジャムは糖だけでなく酸味や香気成分も同時に供給するため、味の奥行きを形成しやすいのである。

また、ペクチンが形成する粘性は、口の中で味成分が長く留まることにもつながる。これにより、料理を飲み込んだ後も余韻が持続し、「味に厚みがある」と感じやすくなる。

照り焼きや煮魚では、この効果が特に顕著に現れる。タレが素材によく絡み、表面の光沢とともに味の一体感が増すため、見た目と味覚の双方から完成度が高まるのである。


② 肉や魚の保水性・軟化作用(有機酸と糖の効果)

ジャムが持つもう一つの重要な働きが、肉や魚をしっとりと仕上げる効果である。

肉を加熱すると筋肉中のタンパク質が収縮し、水分が外へ押し出される。その結果、肉は硬くなり、ぱさついた食感になりやすい。魚でも同様に、水分の流出は食感の低下につながる。

ジャムに含まれる糖類は、水分を保持する性質を持つ。糖は水分子と結び付くことで蒸発を抑え、加熱中の乾燥を緩和する。そのため、肉や魚の内部に水分が残りやすくなり、しっとりした仕上がりが得られる。

さらに、有機酸も重要な役割を担う。リンゴ酸やクエン酸などの有機酸は、筋肉タンパク質へ穏やかに作用し、組織を適度に柔らかくする働きを持つ。

もちろん、酢やレモン汁のように大量の酸を加えると、表面だけが急激に変性し、逆に硬くなることもある。しかしジャムの場合、有機酸濃度は比較的低く、糖やペクチンが同時に存在するため、穏やかな作用となりやすい。

このため、豚肉の生姜焼きや鶏の照り焼きでは、肉質が柔らかく保たれやすくなる。魚でもブリやサバなど脂の多い魚との相性が良く、加熱後も身が締まりすぎず、ふっくらとした食感を維持しやすい。

また、ジャムの粘度によってタレが均一に付着するため、加熱中の表面乾燥も抑えられる。これも保水性向上に寄与する重要な要因である。

特にオーブン調理やグリル調理では、表面からの水分蒸発が大きな課題となる。ジャムを利用したタレは保護膜の役割も果たし、水分損失を抑えながら香ばしい焼き色を形成する。

こうした効果は家庭料理だけでなく、惣菜や加工食品でも品質向上技術として応用されており、食品メーカーでも研究が進められている。


③ 臭み消しとフレーバーの補強(酸味と芳香成分)

魚や肉には、それぞれ特有の臭みが存在する。魚ではトリメチルアミン、肉では脂質の酸化によって生じる揮発性成分などが原因となる。

ジャムに含まれる有機酸は、これらの臭気成分を穏やかに抑える働きを持つ。また、酸味そのものが味覚全体を引き締めるため、「臭みが減った」と感じやすくなる。

さらに重要なのが、果実由来の芳香成分である。リンゴ、オレンジ、アンズ、イチゴなどには、それぞれ数十種類から数百種類の香気成分が含まれており、加熱によってしょうゆや味噌の香りと複雑に調和する。

例えばマーマレードに含まれる柑橘系テルペンは、豚肉や鶏肉の脂っぽさを爽やかにまとめる効果が期待できる。リンゴジャムは穏やかな果実香がしょうゆとの相性に優れ、煮物や焼き物に自然な甘い香りを添える。

また、アンズや梅のジャムには酸味が比較的しっかり残っているものが多く、脂の多い魚や肉料理の後味を軽やかにする働きがある。イチゴやブルーベリーのジャムは使用量に注意が必要だが、少量であれば赤ワインや味噌を使った濃厚な料理に意外な調和をもたらす場合がある。

重要なのは、「果物の味を前面に出す」のではなく、「料理全体の香りを底上げする」ことである。適量であれば果実の個性は主張しすぎず、素材や和風調味料の魅力を引き立てる脇役として働く。

このようにジャムは、照りやコクを与えるだけでなく、保水性の向上、肉や魚の軟化、臭みの低減、香りの補強まで、一つの食品で複数の役割を果たす極めて機能性の高い調味料と言える。和食に取り入れる価値は、単なる「甘味の追加」ではなく、料理全体の品質を総合的に高める点にある。


ジャムの種類別・和食活用マトリクス

ジャムと一口に言っても、原料となる果実によって糖度、有機酸、香気成分、ペクチン含有量は大きく異なる。そのため、和食では「どのジャムでも同じ」というわけではなく、料理に応じて使い分けることが重要となる。

ジャムの種類甘味酸味香り和食との相性おすすめ料理
マーマレード(柑橘系)★★★★★★★★★★★★非常に高い照り焼き・焼き鳥・豚肉・鶏肉
りんごジャム★★★★★★★★★高い肉じゃが・煮物・角煮・煮魚
あんず・梅ジャム★★★★★★★★★★★★高いサバ・ブリ・豚肉・味噌料理
イチゴ・ブルーベリー★★★★★★★★★★★中程度味噌ダレ・赤身肉・創作和食

このように、酸味が強いジャムほど脂の多い肉や魚との相性が良く、甘味が穏やかなジャムほど煮物など伝統的な和食へ自然になじみやすい傾向がある。


マーマレード(柑橘系)

最も和食への応用範囲が広いのがマーマレードである。オレンジや夏みかんなど柑橘類由来の爽やかな香りと適度な苦味が特徴であり、しょうゆとの相性は非常に良い。

柑橘の皮に含まれる精油成分は、豚肉や鶏肉の脂っぽさを和らげ、後味をすっきりと整える。そのため照り焼き、焼き鳥、スペアリブ、豚の生姜焼きなどでは特に効果を発揮する。

また、加熱によって柑橘らしい酸味は穏やかになり、果皮由来のほのかな苦味だけがアクセントとして残る。この苦味が料理全体の味を引き締め、大人向けの上品な甘辛味へと仕上げる。


りんごジャム

りんごジャムはクセが少なく、和食初心者でも使いやすい。

リンゴ酸を主体とする穏やかな酸味と自然な甘味が特徴であり、しょうゆやみりんとの調和性が高い。そのため、肉じゃが、筑前煮、豚の角煮、ぶり大根など、伝統的な煮物へ加えても違和感が生じにくい。

また、リンゴには比較的ペクチンが多く含まれているため、煮汁へ自然なとろみと照りを与える効果も期待できる。素材本来の風味を損なわずにコクだけを補える点が大きな利点である。


あんず・梅ジャム

あんずや梅のジャムは酸味が比較的強く、魚料理との相性に優れている。

青魚では脂の酸化による臭みが問題となることが多いが、あんずや梅に含まれる有機酸は臭気成分を穏やかに抑え、後味をさっぱりとまとめる。

また、味噌との相性も良く、味噌煮や味噌焼きへ少量加えることで、発酵香と果実香が調和し、味に奥行きが生まれる。特にサバ味噌やブリの味噌焼きでは、甘味・酸味・うま味のバランスが向上しやすい。


イチゴ・ブルーベリー

イチゴやブルーベリーのジャムは、和食への使用例は比較的少ない。しかし近年では創作和食やフュージョン料理において活用が進みつつある。

これらのジャムは香りが強いため、多量に使用すると果実感が前面へ出やすい。一方で小さじ1杯程度の少量であれば、味噌ダレや赤身肉のソースへ自然な甘味とコクを加えることができる。

また、赤ワインやバルサミコ酢を使用した和洋折衷料理では、ブルーベリーの持つ深みのある香りがアクセントとなり、従来の和食にはない新しい味わいを生み出す。


実践!和食でジャムを使う際の「3つのポイント」

ポイント1:「砂糖・みりん」の置き換えとして使う

ジャムを使用する最大のコツは、「追加する」のではなく「置き換える」という考え方である。

例えば照り焼きであれば、砂糖大さじ1をジャム大さじ1程度へ置き換えるだけでも十分な効果が得られる。さらに糖度が高いジャムでは、砂糖を完全に省略できる場合もある。

みりんについても同様である。すべてを置き換えるのではなく、一部をジャムへ変更することで、自然な甘味と果実の香りが加わり、味に奥行きが生まれる。


ポイント2:投入タイミングは「序盤〜中盤」

ジャムを最も効果的に活用するためには、加えるタイミングが重要である。

一般的には、調味料を合わせる段階、あるいは煮込み始めの序盤から中盤に加えるのが望ましい。この段階で加熱することで、果実由来の酸味や香りがしょうゆや酒、味噌となじみ、料理全体へ均一に広がる。

逆に仕上げ直前に加えると、ジャム本来の甘味や香りが前面へ出やすくなり、「ジャムを入れた料理」という印象が残る場合がある。


ポイント3:「ジャム感」を出さない隠し味使い

最も重要なのは、「ジャムを感じさせない」ことである。

料理の完成形はあくまでも和食であり、果物料理ではない。そのため、ジャムの存在を主張するのではなく、照りやコク、香りを底上げする隠し味として利用することが理想である。

目安としては2〜4人分の料理に対し、小さじ1〜大さじ1程度から試すと失敗が少ない。特に初めて使用する場合は少量から始め、味を見ながら調整する方法が適している。

また、果肉が大きく残るジャムでは、必要に応じてあらかじめ細かく刻いたり、軽く溶かしてから加えたりすると、仕上がりがより自然になる。


今後の展望

近年の食品業界では、「調味料の多機能化」が大きなテーマとなっている。単なる味付けだけではなく、食感、香り、見た目、保存性まで同時に向上させる素材への関心が高まっており、ジャムはその代表例の一つと考えられる。

また、食品ロス削減の観点からも、食べ切れなかったジャムを料理へ再利用する取り組みは、家庭だけでなく外食産業や給食現場などでも応用の可能性を持つ。今後は、料理専用に糖度や酸味を調整したジャムや、和食向けに開発された製品が登場する可能性もある。

さらに、高齢化社会では「やわらかく食べやすい料理」への需要が高まっている。ジャムが持つ保水性や軟化作用は、高齢者向け食品や介護食の分野でも活用が期待されており、食品科学や栄養学の視点からも研究が進展すると考えられる。


まとめ

「和食にジャムを使う」という発想は、一見すると伝統的な和食の考え方とは相容れないように感じられる。しかし、本稿で検証してきたように、食品科学や調理科学の観点から分析すると、ジャムは単なる甘味料ではなく、「糖」「有機酸」「ペクチン」「果実由来の香気成分」を一体的に含む複合調味料として位置付けることができる。

和食では古くから、しょうゆ、みりん、酒、砂糖を組み合わせることで甘味・塩味・うま味の調和を図ってきた。ジャムはこれらの調味料の一部を置き換えるだけでなく、果実特有の酸味や香りを加えることで、砂糖だけでは表現できない味の奥行きや立体感を生み出す。その結果、「照り」「コク」「香り」「後味」といった和食に求められる品質を総合的に高める効果が期待できる。

科学的な視点では、ジャムに含まれるペクチンは調味液の粘性を高め、食材への付着性を向上させることで美しい照りを生み出す。また、果糖やブドウ糖などの糖類はメイラード反応やカラメル化に寄与し、焼き色や香ばしさ、コクの形成を促進する。さらに、有機酸は肉や魚のタンパク質へ穏やかに作用して保水性や軟化を助けるとともに、臭みの低減や味の引き締めにも貢献する。加えて、果実由来の香気成分がしょうゆや味噌などの発酵香と調和することで、複雑で豊かなフレーバーが形成される。

ジャムの種類によって適した用途が異なる点も重要である。マーマレードは柑橘の香りとほのかな苦味が照り焼きや焼き鳥、豚肉料理に適し、りんごジャムは煮物や角煮など伝統的な和食になじみやすい。あんずや梅ジャムは酸味を生かして青魚や味噌料理との相性が良く、イチゴやブルーベリーは少量を隠し味として使うことで、創作和食や和洋折衷料理に新たな可能性をもたらす。このように、果実ごとの特性を理解して使い分けることが、調理効果を最大限に引き出す鍵となる。

一方で、ジャムを和食へ取り入れる際には、「ジャムを感じさせない」ことが基本である。ジャムは料理の主役ではなく、味や香りを底上げする補助的な存在として活用するのが理想的である。そのためには、砂糖やみりんの一部を置き換えるという考え方を採り、序盤から中盤の加熱工程で加えることで調味料全体となじませることが重要となる。適量を守れば、食べる人はジャムの存在を意識することなく、「照りが美しい」「コクがある」「後味が良い」といった料理全体の完成度としてその効果を感じることになる。

さらに、和食にジャムを活用することは、食品ロス削減や家庭での調理の簡便化という現代的な課題への対応策にもなり得る。朝食用として余ったジャムを料理へ転用することで食材を有効活用できるだけでなく、複数の調味料を一度に補完できるため、調理工程の簡略化にもつながる。食品メーカーや外食産業においても、こうした多機能性を生かした新たな商品開発やメニュー提案が進む可能性は十分にある。

総じて、「和食にジャムを使う」という技法は奇抜なアイデアではなく、食品科学と調理技術の両面から合理性を持つ調理法である。伝統的な和食の基本を損なうものではなく、その魅力をさらに引き出すための新しい選択肢として評価できる。今後は、料理専用ジャムの開発や和食向けレシピの蓄積、さらには調理科学・栄養学の研究成果が進むことで、この技法は家庭料理から業務用調理、さらには介護食や健康食の分野にまで広がっていく可能性がある。

和食は長い歴史の中で、海外から伝わった食材や調味料を柔軟に取り入れながら独自の発展を遂げてきた。ジャムもまた、その流れの中で新たな調味料として位置付けられる可能性を秘めており、「パンに塗る食品」という従来のイメージを超えた、新しい和食文化の一端を担う存在となるかもしれない。


参考・引用リスト

  • 農林水産省「和食文化の保護・継承に関する資料」
  • 農林水産省「食品ロス削減に関する施策」
  • 文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)』
  • 日本調理科学会『日本調理科学会誌』
  • 日本食品科学工学会『日本食品科学工学会誌』
  • 日本栄養・食糧学会『日本栄養・食糧学会誌』
  • 日本家政学会『日本家政学会誌』
  • 食品総合研究機構(現・農研機構 食品研究部門)食品加工・調理関連研究
  • Harold McGee, On Food and Cooking: The Science and Lore of the Kitchen
  • Shirley O. Corriher, CookWise
  • Hervé This, Molecular Gastronomy
  • McCormick Science Institute(香辛料・香気成分に関する研究資料)
  • 各食品メーカー(アヲハタ、カンピー、明治屋、ボンヌママン等)の公開レシピ・調理技術資料
  • 料理研究家・管理栄養士によるジャム活用レシピおよび調理解説(公開資料)
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