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エルサルバドルの報道機関エル・ファロの資産凍結、ブケレ政権の報復措置か

エル・ファロのカルロス・ダダ編集長は記者会見で、「これは税務上の措置ではなく、私たちを黙らせるための政治的報復だ」と批判した。
エルサルバドルのブケレ大統領(Getty Images)

中米エルサルバドルの独立系メディア「エル・ファロ(El Faro)」は7日、同社の銀行口座や不動産などの資産が凍結されたと明らかにした。同社はブケレ政権による報復措置だと強く反発しており、政権と報道機関の対立がさらに深まっている。

エル・ファロのカルロス・ダダ(Carlos Dada)編集長は記者会見で、「これは税務上の措置ではなく、私たちを黙らせるための政治的報復だ」と批判した。同社によると、資産凍結について政府から正式な通知はなく、銀行や不動産登記を通じて初めて把握したという。

エル・ファロはブケレ政権の汚職疑惑や、政権が犯罪組織と秘密裏に交渉していたとされる問題を追及してきたことで知られる。ブケレ(Nayib Bukele)大統領は2019年に「反腐敗」を掲げて就任し、80~90%という高い支持率を維持している一方、人権団体や国際機関からは強権的な反ギャング対策や報道機関への圧力が強まっていると懸念してきた。

エルサルバドルでは2022年以降、非常事態宣言が継続され、ギャング対策として9万人以上が逮捕された。治安改善を評価する声がある一方、恣意的拘束や人権侵害を指摘する批判も絶えない。こうした中、政府に批判的なメディアや市民団体への圧力も強まっている。

エル・ファロに対しては2020年以降、脱税疑惑を理由とする監査が続いている。政府側は約20万ドルの税逃れがあったと主張するが、同社は否定している。また2022年には、20人以上の記者のiPhoneからイスラエル製スパイウェア「ペガサス」が検出された。記者らは同年、開発元のNSOグループを米国で提訴した。

同社は報道環境の悪化を理由に、2023年に本部を隣国コスタリカへ移転した。現在、多くの記者が国外での生活を余儀なくされているという。さらに2025年には著名な人権活動家が逮捕され、裁判も開かれないまま拘束が続いているほか、有力人権団体「クリストサル」も弾圧を理由に国外移転を表明している。

中南米では近年、政権に批判的なメディアや団体に対し、税務調査や資産差し押さえを通じて圧力をかける事例が増えている。ニカラグアなどでも同様の動きが指摘されており、国際社会では民主主義や報道の自由の後退を懸念する声が高まっている。エル・ファロは今回の措置について、「独立報道を封じ込めるための報復」として、国際機関と連携しながら対抗していく姿勢を示している。

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