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米国失業保険申請件数20万件、市場予想下回る 2026年5月

失業保険申請件数は企業による解雇の動向を映す代表的な指標として注目される。
求人広告のイメージ(Getty Images)

労働省が7日に公表した週間の新規失業保険申請件数が前週比1万件増の20万件となった。市場予想の20万5000件を下回り、依然として歴史的に低い水準を維持している。インフレの長期化や高金利政策、地政学リスクなど景気の先行きに不透明感が広がる中でも労働市場の底堅さが改めて示された形だ。

失業保険申請件数は企業による解雇の動向を映す代表的な指標として注目される。一般的に申請件数が増加すれば雇用悪化への警戒感が強まるが、今回の20万件という数字は、過去の景気後退局面と比較すると極めて低い水準にある。米国ではコロナ禍以来、人手不足が続いており、多くの企業が景気減速への懸念を抱えながらも、安易な人員削減には踏み切っていない状況が続く。

継続受給者数も176万6000人に減少し、2024年初頭以来の低水準となった。これは一度失業した労働者が比較的早期に再就職している可能性を示している。一方で、求人市場の勢いはコロナ後の急回復期に比べると鈍化し、「解雇も少ないが採用も活発ではない」という“低解雇・低採用”の状態が続いているとの見方もある。

連邦準備制度理事会(FRB)は根強いインフレ圧力を背景に高金利政策を維持している。金利上昇は企業の資金調達コストや個人消費を圧迫する要因となるが、雇用市場は現時点で大きく崩れていない。3月の雇用統計では17万8000人の雇用増が確認され、市場予想を上回った。失業率も4%台前半にとどまっている。

ただし、先行きへの警戒感は消えていない。IT業界では人工知能(AI)導入による業務効率化が進み、一部企業で人員削減の動きが続いている。物流大手やテクノロジー企業を中心にリストラ計画も報告され、今後景気が減速した場合には雇用情勢が急速に悪化する可能性も指摘される。さらに、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格上昇はインフレ圧力を再び強める恐れがあり、FRBの政策運営を難しくしている。

市場では、米経済が急激な景気後退を回避しながらインフレ抑制を進める「ソフトランディング」を実現できるかが最大の焦点となっている。今回の失業保険申請件数は少なくとも現時点では米労働市場が大きく崩れていないことを示す内容となった。もっとも、雇用環境の改善ペースは鈍く、企業も慎重姿勢を崩していないことから、今後発表される雇用統計や物価指標を巡る市場の注目は引き続き高まりそうだ。

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