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2026エベレスト登山シーズン、例年より遅れて開幕

ネパール当局によると、現在までに464人の外国人登山者に加え、同数規模のネパール人ガイドやシェルパがベースキャンプ入りしており、5月中の登頂を目指して準備を進めている。
2025年5月18日/ネパール、エベレスト山頂を目指す登山者たち(AP通信)

世界最高峰エベレスト(標高8848m)の2026年春季登山シーズンが例年より大幅に遅れて始まった。ネパール側ルートでは巨大な氷塊「セラック」が登山道を塞ぎ、さらに遠征費用や入山料の高騰も重なったが、それでも世界各国から多くの登山家が集結している。ネパール当局によると、現在までに464人の外国人登山者に加え、同数規模のネパール人ガイドやシェルパがベースキャンプ入りしており、5月中の登頂を目指して準備を進めている。

問題となったのは、ベースキャンプ上部のクンブ氷河に出現した巨大なセラックだ。高さ約30メートルに及ぶ氷塊には多数の亀裂が入り、いつ崩落してもおかしくない危険な状態が続いていた。毎年ルート整備を担当する「アイスフォール・ドクター」と呼ばれる熟練シェルパたちは、安全な通路を確保できず、登山道の開通は4月29日までずれ込んだ。通常なら4月中旬には整備が完了しているため、今季は2週間以上の遅れとなった。

クンブ氷河は巨大な氷河が絶えず動き続ける危険地帯として知られる。深いクレバスや不安定な氷壁が点在し、エベレスト登山でも最難関の一つとされる。2014年には氷塊崩落による雪崩で16人のネパール人ガイドが死亡し、今回も同様の事故を懸念する声が上がっている。整備を担当するサガルマータ汚染管理委員会(SPCC)は、「セラックはいつ崩壊してもおかしくない」と警告し、登山隊に最大限の注意を求めている。

それでも多くの登山者が挑戦を断念していない。著名ガイドのルーカス・フルテンバッハ(Lukas Furtenbach)氏は、「危険を心配しない者は経験不足か現実を見ていない」と述べつつも、チームは荷物運搬量を減らし、氷河通過時間を短縮するなど対策を強化していると説明している。特に朝方の低温時を選んで移動し、氷の融解が進む午後の通過を避ける運用が徹底されている。

今季は経済的負担も大きい。ネパール政府は外国人向けエベレスト登山許可証を1人1万5000ドルに設定、遠征費全体では数万ドルから10数万ドルに達することも珍しくない。さらに中東情勢の緊迫化に伴う航空運賃や物流費の上昇も加わり、遠征コストは一段と膨らんでいる。それでもネパールにとって登山観光は重要産業であり、政府は今季すでに400件以上の登山許可を発行している。

一方、登山者の構成には変化も見られる。欧米からの参加者は減少傾向にあるものの、中国やインドを含むアジア圏の登山者が増加している。今年は中国政府がチベット側ルートを閉鎖したため、多くの登山隊がネパール側に集中していることも背景にある。これにより、天候回復後に登頂者が殺到し、山頂付近で渋滞が発生するのではないかとの懸念も出ている。

また、地球温暖化による氷河融解への懸念も強まっている。近年のヒマラヤでは氷河後退が急速に進み、クンブ氷河の地形変化も激しくなっている。2023年には国連事務総長がネパールを訪れ、「ヒマラヤの氷河融解は壊滅的なレベルだ」と警告した。専門家の間では、気候変動によってエベレスト登山の危険性がさらに高まっているとの見方が広がっている。

1953年にエドモンド・ヒラリー(Edmund Hillary)とテンジン・ノルゲイ(Tenzing Norgay)が初登頂に成功して以来、エベレストには世界中から登山者が集まり続けてきた。今年も危険や費用高騰をものともせず、多くの挑戦者が世界最高峰を目指している。

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