メキシコとEUが自由貿易協定に署名、米国依存からの脱却目指す
今回の改定協定では自動車や機械、医薬品など工業製品の関税撤廃範囲を拡大するほか、サービス貿易、電子商取引、知的財産保護、再生可能エネルギー投資など新たな分野のルールを盛り込んだ。
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メキシコと欧州連合(EU)は22日、長年交渉が停滞していた自由貿易協定(FTA)の改定版に署名した。両者は米国への経済依存を緩和し、貿易相手国の多角化を進める必要性を共有しており、不安定化する国際経済情勢の中で関係強化を急いでいる。協定は2018年に基本合意に達したが、農業分野や投資保護条項などを巡る調整が難航し、最終的な署名まで約8年を要した。
署名式は首都メキシコシティで行われ、欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長と欧州理事会のコスタ(Antonio Costa)常任議長、そしてメキシコのシェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領らが出席した。フォンデアライエン氏は「開かれた市場と信頼できるパートナーシップを守る歴史的な合意だ」と述べ、保護主義的な動きに対抗する姿勢を強調した。シェインバウム氏も「多国間貿易体制への強い支持を示すものだ」と歓迎し、欧州との関係を戦略的に重視する考えを示した。
今回の改定協定では自動車や機械、医薬品など工業製品の関税撤廃範囲を拡大するほか、サービス貿易、電子商取引、知的財産保護、再生可能エネルギー投資など新たな分野のルールを盛り込んだ。EU側はメキシコ産農産物や牛肉の輸入枠を広げる一方、メキシコは欧州産チーズやワインなどへの市場アクセスを改善する。両者はサプライチェーン強化や脱炭素分野での協力拡大も目指している。
背景には、米国経済への過度な依存に対する懸念がある。メキシコの輸出の約8割は米国向けで、北米経済に深く組み込まれている。しかし、米国では近年、自国産業保護を優先する政策が繰り返され、追加関税や輸入規制への警戒感が高まっている。EU側も米中対立の長期化や世界的な供給網再編を受け、ラテンアメリカとの経済関係強化を急いでいる。特に重要鉱物や再生可能エネルギー分野での連携拡大に期待を寄せている。
一方、協定には反対意見も根強い。欧州の農業団体は安価なメキシコ産農産物の流入によって競争が激化すると懸念している。また環境団体は農地開発拡大による森林破壊や環境負荷増大を問題視している。今後はEU加盟国の議会や欧州議会で批准手続きが行われるが、審議には時間を要する見通しだ。それでも今回の署名は、世界経済の分断が進む中で、メキシコとEUが自由貿易体制維持へ連携を深める象徴的な動きとして注目されている。
