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インド当局、風刺政党「ゴキブリ人民党」のウェブサイト遮断

インドでは近年、IT法に基づくウェブサイト遮断やSNS投稿削除が増加しており、政府によるネット規制強化への懸念が高まっている。
インド、ゴキブリ人民党の生成AI画像(Cockroach Janta Party)

インドで急速に支持を拡大している風刺政治団体「ゴキブリ人民党(Cockroach Janta Party、CJP)」が政府によってウェブサイトを遮断されたと主張し、表現の自由をめぐる議論が広がっている。若者の不満を背景に爆発的な人気を集めたこの運動は、政権批判の新たな象徴として注目されている。

CJPは今月、政治コンサルタント経験を持つアビジート・ディプケ(Abhijeet Dipke)氏によって立ち上げられた。名称の「ゴキブリ」は最高裁のカント(Surya Kant)長官が失業中の若者を「社会の寄生虫」や「ゴキブリ」と形容した発言への皮肉から生まれた。SNSではこの発言に強い反発が起き、CJPは若者の怒りや閉塞感を代弁する存在として急速に拡大した。

CJPは失業率の上昇、就職試験の不正、物価高騰、政治腐敗などを風刺的に批判する動画やミームを次々に投稿し、短期間で数千万規模の支持を集めた。インスタグラムのフォロワー数は与党・インド人民党(BJP)の公式アカウントを上回り、X(旧ツイッター)でも急速に拡散した。AI生成のゴキブリ画像を使った投稿や、「#MainBhiCockroach(私もゴキブリだ)」というハッシュタグが若者層を中心に広がった。

しかし、人気拡大と同時に規制も強まった。CJPは23日、公式サイトがインド国内から閲覧不能になったと主張したほか、Xアカウントも「法的要請」に基づき遮断されたと説明した。ディプケ氏は政府が「独裁的対応」を取っていると批判し、「風刺や不満の表明さえ許されなくなっている」と訴えた。

中央政府は現時点で公式な説明を行っていない。ただ、一部報道によると、情報機関が「国家安全保障上の懸念」を理由に、コンテンツ制限を求めたとされる。インドでは近年、IT法に基づくウェブサイト遮断やSNS投稿削除が増加しており、政府によるネット規制強化への懸念が高まっている。

一方で、CJPは単なるジョーク政党にとどまらず、若年層の政治的不満の受け皿になりつつあるとの見方もある。運動の支持者は雇用不足や格差拡大に対し既存野党が十分機能していないと感じており、風刺を通じて政治参加を試みている。実際、一部支持者はゴキブリの着ぐるみ姿で抗議デモや清掃活動に参加するなど、オンライン運動が現実社会へ波及し始めている。

モディ政権は高い支持率を維持しているものの、若者の経済的不安や不満は根強い。CJP騒動はインド社会で拡大する「ミーム政治」とネット世論の影響力を浮き彫りにした事例として注目されている。

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