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メキシコ、「W杯の喜び」と「国内問題」との間で板挟みに

市中心部の通りでは、代表戦の応援会場の近くに、麻薬カルテルによる暴力などを背景に行方不明となった家族の情報を求めるポスターが数多く掲げられている。
2026年6月30日/メキシコ、首都メキシコシティ、行方不明者の貼り紙(ロイター通信)

FIFAワールドカップ北中米大会で共催国のメキシコ代表が快進撃を続ける中、国内では大会の熱狂と深刻な社会問題が複雑に交錯している。代表はグループリーグを無失点で突破し、決勝トーナメント1回戦も勝利、ベルト16入りを果たした。首都メキシコシティでは巨大スクリーンが設置され、多くの市民が試合観戦を楽しむ一方、行方不明者問題や治安悪化、物価高騰への懸念は消えていない。

市中心部の通りでは、代表戦の応援会場の近くに、麻薬カルテルによる暴力などを背景に行方不明となった家族の情報を求めるポスターが数多く掲げられている。メキシコでは2006年以降、13万5000人以上が行方不明になったとされ、家族らは政府に真相究明を求め続けている。また、大会開催に反対する落書きや抗議活動も見られ、「W杯ではなく正義を」と訴える声も上がっている。

経済面でも課題が山積している。インフレ率は依然として政府目標を上回る水準で推移し、生活費の上昇が家計を圧迫している。チケット代や交通費、宿泊費の高騰も重なり、多くの市民にとってスタジアムで代表戦を観戦することは現実的ではない。街頭の大型スクリーンで試合を見守る人々からは、「代表を誇りに思う一方で、生活は厳しいままだ」との声が聞かれる。

教育分野では全国教育労組(CNTE)による抗議活動も続いている。教員らは年金制度改革や賃金引き上げを求めてデモを行うなど、政府への不満は依然として根強い。大会期間中も各地で抗議活動が続き、国民生活を巡る問題がスポーツの祭典によって覆い隠されることはなかった。

一方で、多くの国民はサッカーが社会を一つにする力を持つことも認めている。家族や友人と試合を観戦し、代表チームの健闘に歓声を上げる時間は、日常の不安を一時的に忘れさせる貴重な機会となっている。しかし、市民の間では「試合で勝っても現実の問題は残る」との冷静な見方も少なくない。

シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領は高い支持率を維持しているものの、一部では政府がW杯の成功を利用して国内問題への関心をそらそうとしているとの批判もある。国民の多くは代表チームの躍進を誇りに思いながらも、治安改善や経済対策、失踪事件の解決といった課題への取り組みを政府に求め続けている。

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