◎国連安全保障理事会は先週、ハイチへの武器販売を禁止する決議案を全会一致で採択した。
2022年7月21日/ハイチ、首都ポルトープランスの学校に開設された避難所(Ralph Tedy/ロイター通信)

米ハイチの人権団体は22日、首都ポルトープランスの学校に開設された避難所に児童数百人が避難を余儀なくされていると報告した。

ロイター通信によると、市内の名門校を含む数校に避難所が開設され、幼児から高校生数百人が身を寄せているという。

「G9&Family」と「G-Pep」と呼ばれる2つのギャングはポルトープランスを支配権をめぐって2週間ほど前から争っている。

国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、抗争の死者数は確認できているだけで300人に達したという。

避難所で支援に当たっている宗教団体の修道女はロイター通信の取材に対し、「より多くの支援が必要です」と訴えた。

この修道女によると、学校に避難した子供たちはギャングに狙われないよう制服を着て通学するふりをしたという。保護者は自宅にとどまり、抗争が収まるのを待っているとみられる。

国連安全保障理事会は先週、ハイチへの武器販売を禁止する決議案を全会一致で採択した。

ハイチのギャングは何年も前から社会問題になっていたが、昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震が治安の悪化と混乱に拍車をかけた。この地震の犠牲者は2200人と推定され、復興はほとんど進んでいない。

地元メディアによると、軍と警察はギャング間抗争を抑えることができず、住民の避難支援もままならないという。

G9は元警察官の「バーベキュー」と呼ばれる男が率いるギャング連合で、複数の虐殺事件に関与している。バーベキューはモイーズ前大統領の政党と同盟関係にあるとされ、モイーズ氏の暗殺事件を非難している。

G-Pepはポルトープランス郊外の地区で発足したギャングで、複数の武装集団と同盟を結んでいるとされる。

HRWは22日、ポルトープランスの人権団体の情報を引用し、「この2週間の衝突で火あぶりにされた21人の遺体を含むおよそ300人の死亡を確認し、少なくとも16人の行方が分かっていない」と発表した。

またHRWは、「ギャングは民家120戸以上を破壊した」と報告している。

国連ハイチ安定化ミッションによると、今年1月~5月までの間に誘拐された市民は分かっているだけで540人に達し、780人以上がギャングに殺されたという。

ギャングの暴力は国内の物資輸送や燃料供給に深刻な影響を与えており、各地で停電や燃料不足が常態化している。

2022年7月2日/ハイチ、首都ポルトープランス、ギャングの暴力やインフレに抗議するデモ(Ralph Tedy/ロイター通信)
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