キューバの医療制度、エネルギー危機で崩壊寸前
患者は必要な治療を受けられず、国民の健康を支える医療体制は急速に機能低下が進んでいる。
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かつて世界でも高水準と評価され、革命後の社会主義体制を象徴する存在だったキューバの医療制度が危機に直面している。慢性的な電力不足と経済危機の影響により、病院では医療機器が停止し、薬品や医療資材の不足も深刻化している。患者は必要な治療を受けられず、国民の健康を支える医療体制は急速に機能低下が進んでいる。
首都ハバナの病院ではCTスキャナーなどの検査機器が故障したまま修理できず、多くの患者が診断を受けられない状況が続く。注射器やガーゼ、麻酔薬、ワクチンなどの基本的な医療用品も不足し、手術や治療の延期が相次いでいる。がん患者をはじめ重症患者への影響は大きく、適切な治療機会を失うケースも増えている。
背景には、長年続く経済低迷に加え、エネルギー不足の深刻化がある。燃料不足による大規模停電が頻発し、病院では非常用電源に頼る運営が常態化している。燃料不足は救急搬送や医薬品輸送にも影響を及ぼし、患者が病院へ通う交通手段さえ確保できない地域も少なくない。世界保健機関(WHO)や汎米保健機構(PAHO)による支援物資の輸送にも影響が出ている。
特に小児医療への打撃は大きく、小児がん患者の生存率は大きく低下したとされる。国連は今年3月、人道危機への対応として9400万ドル規模の緊急支援計画を開始し、医療や食料、水供給への支援を進めてきたが、現場では依然として必要な支援が十分に行き届いていない。
共産党は危機の原因として、米国による制裁強化やエネルギー供給への圧力を挙げている。一方、米側は経済停滞や医療体制の悪化はキューバ政府の政策運営にも責任があるとの立場を崩していない。双方の主張は平行線をたどり、外交関係も停滞したままである。
医療は長年、キューバの国際的評価を支える重要な柱だった。多くの医師を海外へ派遣し、高い乳児死亡率改善や平均寿命の延伸を実現してきた実績は広く知られている。しかし現在は、医療従事者の離職や物資不足、インフラ老朽化が重なり、その象徴的な制度はかつてない試練を迎えている。エネルギー危機が続く限り、国民生活と医療現場を取り巻く状況の改善は容易ではないとみられる。
