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米国がコスタリカ有力紙幹部のビザ取り消し、理由不明

コスタリカはこれまで中米における民主主義の模範とされ、言論の自由や市民社会の活発さで高い評価を受けてきた。
コスタリカ(Getty Images/PAメディア)

中米コスタリカで有力紙の幹部に対する米国ビザ(査証)の取り消しが明らかとなり、報道の自由や民主主義への影響を懸念する声が広がっている。対象となったのは同国の主要紙「ラ・ナシオン(La Nación)」の取締役らで、米側は取り消しの理由を明らかにしていない。

問題は同紙の取締役会が4日、複数の幹部が米国ビザを取り消されたと発表したことで表面化した。幹部らは政府寄りのメディア報道を通じて初めて事実を知ったと説明し、正式な通知や説明はなかったという。同紙は声明で、主権国家として入国条件を決定する権利は認めつつも、「独立系新聞社の取締役に対するビザ取り消しは近年のコスタリカでは前例がない」と強い違和感を示した。

ラ・ナシオンはこれまで、右派のチャベス政権に対して批判的な報道を続けてきたことで知られる。特に2022年の大統領選では、チャベス(Rodrigo Chaves)大統領に関するセクハラ疑惑を報じるなど、政権と対立関係にあった。こうした経緯から、今回のビザ取り消しについては、米国とコスタリカ政府が連携し、批判的な報道機関や政治的対立者に圧力をかけているのではないかとの疑念が浮上している。

実際、同国では近年、著名人や野党関係者に対する米国ビザの取り消しが相次いでいる。ノーベル平和賞受賞者で元大統領のオスカル・アリアス・サンチェス(Óscar Arias Sánchez)氏や野党議員、憲法裁判所判事なども対象となっており、いずれも政府や米国の政策に批判的な立場を取っていた。こうした一連の動きは、政治的意図に基づく措置ではないかとの見方を強めている。

ラ・ナシオンの発表を受け、野党や報道団体、人権団体が一斉に反発し、米国およびコスタリカ政府に対し透明性のある説明を求めている。声明では、もし批判的姿勢が理由であれば「民主主義にとって極めて憂慮すべき兆候だ」と指摘し、説明なき措置は容認できないと強調した。

一方、米国務省はコメントを出しておらず、現時点で公式な理由は明らかになっていない。ビザ発給や取り消しは各国の主権に属する判断であるが、今回のように特定の報道機関幹部が対象となるケースは異例であり、国際的にも関心を集めている。

コスタリカはこれまで中米における民主主義の模範とされ、言論の自由や市民社会の活発さで高い評価を受けてきた。しかし、近年はチャベス政権下でメディアに対する強硬な言動が目立ち、報道環境の悪化が指摘されている。 今回の問題はそうした流れの中で発生した象徴的な出来事と位置付けられる。

チャベス氏はまもなく任期を終え、新政権に移行する予定だが、報道の自由をめぐる議論は今後も続く見通しである。今回のビザ取り消し問題は、国内政治のみならず、米国との関係や国際的な民主主義の評価にも影響を与える可能性があり、その行方に注目が集まっている。

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