◎国軍と北部ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は1年前に本格化し、これまでに民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡した。
2021年6月13日/エチオピア、首都アディスアベバ、アビィ・アハメド首相(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

11月22日、エチオピアのアビィ・アハメド首相は23日から「戦場で軍隊を率いる」とツイートし、国際社会の懸念を引き起こした。

国軍と北部ティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は1年前に本格化し、これまでに民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民になり、数万人が隣国スーダンに逃亡した。

国軍は昨年11月末にティグライ地域の大半をTPLFから奪取したが、TPLFはオロモ解放戦線などの反政府勢力と同盟を結んでティグライ国防軍(TDF)を結成し、6月の奇襲攻撃で地域の支配権を取り戻した。

TDFはティグライ地域に隣接するアムハラ州とアファール州の大半を支配下に置き、さらに首都アディスアベバ近郊の都市を占領したと伝えられている。また、野党グループと反政府勢力は11月5日に米ワシントンD.C.でアビィ首相の追放を目指す統一戦線の結成に合意した。

西側諸国は話し合いによる停戦合意を目指している。

アビィ首相は22日、「殉教精神で国を導く時が来ました。明日、戦線で会いましょう」とツイートしたが、具体的な目的地は明らかにしなかった。AP通信によると、政府の報道官はツイートに関する質問を却下したという。

これに対し、TDFのゲタチェウ・レダ報道官は、「TDFの兵士はアビィの民間人絞め殺し作戦を終わらせるために行動し続けるだろう」とツイートし、国軍を迎え撃つと示唆した。TPLFは政府によるティグライ地域周辺の封鎖の解除と政権奪取を目指している。

ティグライ地域で進行中の飢餓危機は過去10年で世界最悪と見なされており、国連は今年公表したレポートの中で40万人以上が年内に餓死する可能性があると警告した。アビィ首相はティグライ地域への人道物資輸送を阻止している。

アビィ首相のツイートから数時間後、米国務省は記者会見で、「紛争の平和的な解決に向けた取り組みはまだ生きていると信じている」と述べた。

しかし、エチオピアのエイブラハム・ベレー国防省は22日の閣議後、国営メディアに対し、「国軍は明日から特別な体制に移行し、作戦を開始する」と述べ、何かしらの行動を起こすと示唆した。作戦の詳細は明らかにされていない。

ティグライ紛争の専門家である英国キール大学法学部のアウォル・アロ上級講師は、「アビィ首相の声明は殉教・犠牲という言葉で埋め尽くされている」と懸念を表明した。「首相の声明はティグライ紛争が取り返しのつかない絶望的な状況にあることを示しています...」

「アビィ首相は2019年のノーベル平和賞受賞演説で紛争について熱心に語っていました。ティグライ紛争は地獄の縮図です」

アビィ首相は隣国エリトリアと歴史的な和平協定を結んだことが高く評価され、ノーベル平和賞を受賞した。しかし、和平協定の詳細は一切公表されていない。

世界で最も閉鎖的な国のひとつであるエリトリアはティグライ地域の虐殺に関与したと非難されているが、アビィ首相はエリトリア軍の関与を否定している。

2021年11月7日/エチオピア、首都アディスアベバの大通り、アビィ・アハメド首相の支持者たち(Getty Images/AFP通信)
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