◎軍事政権を率いるアシミ・ゴイタ大佐は先月、次の大統領選挙を2026年まで4年延期すると発表し、地域の緊張を高めた。
2020年8月24日/マリ共和国、首都バマコ、アシミ・ゴイタ大佐(AP通信/Baba Ahmed)

2月4日、EUはショゲル・コカラ・マイガ暫定首相を含むマリの暫定政府の高官5人に制裁を科した。

EUの規制当局は声明の中で、「軍事政権は文民政府への移行を妨害または阻止した」と述べ、大統領選挙の日程見直しと民主的な選挙を保証するよう圧力をかけた。

マリ軍を率いるアシミ・ゴイタ大佐は2020年8月の軍事クーデターで権力を掌握したが、国際社会の非難を受け、民間の指導者に権力を移譲した。しかし、ゴイタ大佐は文民政府の発足から1年も経たぬうちに新たな軍事クーデターを主導し、指導者を追放した。

ゴイタ暫定大統領は先週、フランスの駐大使に退去を命じ、進行中の外交危機をさらに悪化させた。マリはフランスの元植民地国である。

制裁(資産凍結や渡航禁止措置など)の対象となるのはゴイタ暫定大統領の側近5人で、EUの企業や市民はこの5人に資金を提供できなくなった。5人が関連する事業への投資も禁止。

ゴイタ暫定大統領は先月、次の大統領選挙を2026年まで4年延期すると発表し、地域の緊張を高めた。西アフリカ諸国をまとめる西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)もマリに厳しい経済制裁を科している。

EUは声明の中でマイガ暫定首相について、「移行憲章に基づく大統領選挙を延期した直接の責任は暫定首相にある」と厳しく非難した。

EUは昨年末にも、マリ、中央アフリカ共和国、リビア、シリアでの権利侵害で告発されているロシアの傭兵集団「ワグナー・グループ」に関係する8人と石油会社3社に制裁を科した。

マリ北部のサヘル地域を拠点とするイスラム国(ISIS)とアルカイダの関連組織はマリの中心部まで影響力を拡大し、フランス主導のアフリカ連合軍と国連平和維持軍への攻撃を激化させている。

マリ軍は2012年に勃発したジハード主義者との戦いに対応できなかったが、フランス主導の連合軍の支援を受け、北部の主要都市を奪取した。しかし、ジハード主義者はサヘル地域で態勢を立て直し、連合軍への攻撃を激化させている。

EUは2013年からマリ軍を訓練しているものの、地域の治安は悪化し続けている。

フランスの大使追放はマリ軍に対する訓練だけでなく、タクバと呼ばれる欧州主導の軍事タスクフォースの将来にも疑問を投げかけている。マリ政府は先週、デンマーク軍の兵士に国外退去を命じた。

ノルウェーはタクバへの部隊派遣を撤回し、ドイツは派遣するかどうかを議論している。

マリに駐留している数千人規模のフランス軍はサヘル地域の治安維持に欠かせず、彼らが撤退すればマリだけでなく近隣諸国に大きな影響を与える可能性がある。

2017年5月19日/マリ北部の軍事基地、ケイタ大統領(右手前)の話を聞くマクロン仏大統領(右奥)とル・ドリアン仏外相(左手前)(Getty Images/AFP通信)
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