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リビア沿岸警備隊と関係のある武装船、地中海で移民救助船に向けて発砲

移民問題を巡る欧州と北アフリカ諸国の緊張が浮き彫りとなっている。
2017年2月3日/リビア北部の地中海、移民希望者を乗せたボート(Getty Images/AFP通信)

地中海で難民救助活動を行っていたドイツの民間人道支援団体「Sea Watch(シーウォッチ)」の救助船がアフリカ北部・リビアの沿岸警備隊に関連する武装船から銃撃を受けた。移民問題を巡る欧州と北アフリカ諸国の緊張が浮き彫りとなっている。

シーウォッチによると、事件が起きたのは11日朝。救助船「シーウォッチ5」はリビア沖の地中海で、過密状態となった木造船から約90人の移民を救助した直後だった。その後、リビア沿岸警備隊と関係があるとみられる武装船が接近し、停止を命じたうえで実弾を発射したという。最初に単発、その後10~15発程度の連射が行われた。

当時、船には救助された移民と約30人の乗組員が乗船していた。シーウォッチ側は「命の危険を感じた」として、イタリアとドイツ当局に遭難信号を送信した。イタリア沿岸警備隊も事件の報告を受けたことを認め、「安全保障上の重大事案」として関係当局に通知したとしている。最終的に救助船は現場海域から離脱し、イタリア南部の港へ向かった。

リビア政府は現時点で公式なコメントを出していない。しかし、リビア沿岸警備隊と欧州の人道支援団体との対立は近年激化している。昨年8月にも、支援団体「SOSメディテラネ」の救助船「オーシャン・バイキング」がリビア沿岸警備隊から銃撃を受けたと報告している。船体の一部が損傷したものの、死傷者は出なかった。

地中海中部ルートはアフリカから欧州を目指す移民にとって最も危険な航路の一つである。内戦や貧困、政治不安から逃れるため、多くの移民がリビア沿岸から小型船でイタリアなど欧州を目指し、毎年大勢が遭難している。国連の専門機関である国際移住機関(IOM)によると、2025年だけでも1300人以上がこの航路で死亡または行方不明になった。

EUは2015年以降、移民流入を抑制するためリビア政府に7億ユーロ以上を供与し、沿岸警備隊への訓練や装備支援を進めてきた。しかし、人権団体は「移民を危険な環境へ強制送還している」と批判している。リビア国内では収容施設での虐待や人身売買の実態も指摘されており、欧州の移民対策が人道危機を深刻化させているとの声も根強い。

シーウォッチは今回の事件について、「欧州が資金提供し正当化してきた勢力による攻撃だ」と非難した。また欧州各国に対し、リビア沿岸警備隊への支援の見直しと、地中海での救助活動の安全確保を求めた。一方、欧州各国では移民流入への警戒感も強く、難民救助と国境管理の両立は依然として難題となっている。

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