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レバノン大統領「イスラエル軍が住宅地を破壊している」米国に支援要請

レバノンのアウン(Joseph Aoun)大統領は11日、トランプ政権に対し、イスラエルへ軍事行動停止を働きかけるよう要請した。
2026年3月9日/レバノン南部、イスラエル軍の空爆(ロイター通信)

レバノン政府が米国政府に対し、イスラエル軍による攻撃と住宅破壊を止めるよう求めている。4月に成立した停戦合意後も戦闘が続いており、レバノン南部では空爆や民家の爆破解体が相次いでいる。中東情勢が不安定化する中、米国が仲介するイスラエルとレバノンの協議は重大な局面を迎えている。

レバノンのアウン(Joseph Aoun)大統領は11日、トランプ政権に対し、イスラエルへ軍事行動停止を働きかけるよう要請した。アウン氏は声明で、「停戦が維持されなければ地域全体が危険にさらされる」と警告し、とりわけ南部で続く住宅の破壊行為に強い懸念を示した。

レバノン政府によると、この数日だけでイスラエル軍の攻撃により74人が死亡し、3月以降の死者は2869人に達した。犠牲者には女性や子ども、医療従事者も含まれているという。

現在の衝突は親イラン武装組織ヒズボラが3月、イスラエルに向けて攻撃を開始したことで激化した。ヒズボラ側は攻撃をイラン支援の一環と位置づけているが、イスラエルは「北部国境地帯の安全確保」を理由に大規模空爆と地上作戦を継続している。イスラエル軍はヒズボラが民間地域に拠点を構えていると主張し、住宅やインフラの破壊を正当化してきた。

4月16日には米国仲介で10日間の停戦が成立し、その後さらに3週間延長された。しかし、停戦後も双方の攻撃は断続的に続き、事実上「不完全な停戦」状態となっている。イスラエル軍はレバノン南部の一部地域に部隊を残留させ、「緩衝地帯」の設置・維持を進めている。一方、ヒズボラもイスラエル側へのロケット攻撃を継続し、双方が互いに停戦違反を非難している。

特に問題視されているのが、南部の集落で続く家屋の爆破解体だ。人権団体などは、イスラエル軍が軍事施設に限定せず広範囲の住宅地を破壊していると指摘している。英紙ガーディアンによると、3月以降に2000棟以上の建物が破壊され、一部地域では街そのものが消滅したような状況になっている。イスラエル側は「ヒズボラの地下施設除去が目的」と説明しているが、レバノン政府は「民間人の帰還を妨げる組織的破壊だ」と反発している。

こうした中、米国は5月14~15日にワシントンDCでレバノンとイスラエルの高官協議を開催する予定だ。両国が正式な外交関係を持たない中での直接協議は極めて異例であり、停戦延長や国境問題、ヒズボラの武装解除などが議題になるとみられる。ただ、ヒズボラは交渉そのものに反対し、レバノン国内でも対イスラエル協議に慎重論が根強い。

レバノンでは一連の戦闘により、約120万人が避難生活を余儀なくされている。経済危機と政治混乱が続く中で戦闘が再燃したことで、国内の疲弊は限界に近づいている。イスラエル側でも兵士17人と民間人2人が死亡し、国境地帯の緊張は収まっていない。米国が停戦維持に向けてどこまで影響力を行使できるかが焦点となっている。

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