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ハンガリー新政権、凍結されているEU復興資金の獲得目指す、課題も

問題となっているのは、コロナ禍後の経済再建を目的にEUが設けた「復興・強靱化基金(RRF)」だ。
2026年5月9日/ハンガリー、首都ブダペスト、演説するマジャル新首相(ロイター通信)

ハンガリーが欧州連合(EU)から凍結されている総額104億ユーロ(約1.92兆円)の復興基金獲得に向けて動きを加速させている。EU当局者は「極めて野心的だが、不可能ではない」との見方を示しており、新政権の改革姿勢にEU側も一定の期待を寄せている。

問題となっているのは、コロナ禍後の経済再建を目的にEUが設けた「復興・強靱化基金(RRF)」だ。ハンガリーには65億ユーロの補助金と39億ユーロの低利融資が割り当てられているものの、前政権を率いたオルバン(Viktor Orbán)前首相の下で司法の独立性や汚職対策に懸念があるとして、EUは資金支給を凍結していた。さらに別枠の構造基金約70億ユーロも停止状態にあるが、こちらは期限に余裕があるため、新政権はまず復興基金の確保を優先している。

転機となったのは、4月の総選挙だった。中道右派の新興政党「TISZA(尊敬と自由)」を率いるマジャル(Péter Magyar)氏が圧勝し、16年間続いたオルバン政権は幕を下ろした。新政権はEUとの関係修復を最重要課題に掲げ、マジャル氏は就任直後からブリュッセルとの協議を本格化させている。欧州市場でも政権交代は好感され、ハンガリー通貨フォリントは上昇した。

EU資金を受け取るには、マジャル政権が5月末までに新たな支出計画をEUの執行機関である欧州委員会へ提出しなければならない。計画は「脱炭素化」「デジタル化」「経済の強靱化」というEUの方針に沿う必要がある。前政権時代に作成された計画は時間的制約や投資内容の変更により現実に合わなくなっており、全面的な見直しが必要とされている。

EU当局者によると、マジャル政権は進行の遅い大型事業を縮小し、既に着手済みで執行しやすい案件へ資金を振り向ける方針を検討している。また、EU系金融機関や政府系銀行を経由して資金を活用する案も浮上している。欧州委員会は期限内に資金を使い切れない加盟国が増えていることから、昨年各国に対し、柔軟な運用指針を示し、ハンガリーもこうした制度を最大限活用するとみられる。

ただ、実現へのハードルはなお高い。EU側は単なる政権交代だけでは不十分との立場で、司法制度改革や公共調達の透明化、反汚職機関の独立性強化など具体策を求めている。マジャル政権は親EU路線を鮮明にしているものの、制度改革には議会手続きや官僚機構の調整が必要で、短期間で全条件を満たせるかは不透明だ。

一方で、ハンガリー経済には時間的猶予が少ない。景気減速と高インフレに苦しむ中、EU資金は財政再建と投資回復の切り札になる。フォリント相場もEUとの関係改善期待に左右されやすく、資金解禁の成否は市場心理にも直結する。専門家の間では「EU復帰」を掲げる新政権にとって、今夏までの交渉が試金石になるとの見方が広がっている。

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