最大の焦点は貿易問題だ。トランプ政権は2025年以降、中国製品に対する関税を実施し、中国側も報復措置を取ったことで、両国は激しい貿易戦争に突入した。一時は対中関税率が145%に達し、大きな混乱を招いた。昨年秋には一時休戦に合意し、中国から米国へのレアアース供給再開など一定の改善がみられたものの、根本的な対立は解消されていない。
今回の会談では、貿易休戦の延長に加え、中国による米国産農産物や航空機の追加購入が議論される見通しだ。米政府高官はボーイング機やエネルギー関連製品の大型契約が発表される可能性を示唆している。また、将来的な関税衝突を避けるため、「貿易委員会」や「投資委員会」といった新たな協議枠組みの創設も検討されている。
しかし、半導体や人工知能(AI)をめぐる対立は続く。米国は中国の先端半導体開発を抑制するため輸出規制を強化しており、中国側はこれを「経済封じ込め」だと反発。中国は半導体の国産化を国家戦略として進め、技術覇権をめぐる競争が激化している。
台湾問題も会談の主要議題となる。中国政府は台湾を「不可分の領土」と位置付け、武力行使も排除しない姿勢を崩していない。一方、米国は台湾への武器供与を継続、中国軍は台湾周辺で軍事演習を活発化させている。中国側は台湾問題が米中関係における「最大の危険要因」だと繰り返し警告してきた。
台湾当局は中国が今回の首脳会談を利用して米国から譲歩を引き出そうとする可能性に警戒感を強めている。特に、トランプ氏が対中貿易交渉を優先するあまり、台湾支援に関する発言を弱めるのではないかとの懸念も出ている。ただし、米連邦議会内には超党派で台湾支持が根強く、劇的な政策転換が行われる可能性は低いとみられている。
さらに、今回の会談では中東情勢、とりわけイラン問題が大きな比重を占める。米国は現在、イランとの軍事的緊張を抱えており、トランプ政権は中国に対して、イランへの影響力を行使して事態沈静化に協力するよう求めている。中国はイラン産原油の主要輸入国であり、経済面で深い関係を維持している。米国は中国企業がイランの資金源を支えているとして制裁も発動してきた。
一方、中国にとっても中東情勢の不安定化は深刻な問題だ。中国が輸入する原油の多くはホルムズ海峡を経由しているため、紛争拡大はエネルギー安全保障を直撃する。中国側は米国との対立を避けつつも、イランとの関係維持を図る難しい外交判断を迫られている。
今回の会談にはアップやテスラのCEOら米主要企業幹部も同行する予定である。米中経済の結び付きは依然として強く、両国とも全面対立は回避したい考えだ。ただし、専門家の間では「関係安定化」が主目的で、根本的な対立解消には至らないとの見方が支配的である。
トランプ氏にとっては、イラン問題や国内支持率低下を背景に、外交成果を示したい思惑がある。一方の習氏は、中国の安定した指導力を国際社会に印象づけたい考えだ。互いに成果を演出する余地はあるものの、貿易、安全保障、技術覇権をめぐる競争は今後も続く可能性が高い。今回の首脳会談は対立を管理するための「停戦協議」に近い性格を持つと言えそうだ。