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EU、鉄道単一チケット計画を発表、欧州での旅行がより便利に

現在の欧州の鉄道網は国ごとに運営会社や予約システムが分かれており、国際列車を利用する際には複数のサイトやアプリを行き来しながら切符を購入しなければならないことが多い。
2023年6月9日/イタリア、ミラノの中央駅(ロイター通信)

EUの執行機関である欧州委員会は13日、域内の鉄道旅行を簡素化するため、複数の鉄道会社や国境をまたぐ列車を「単一チケット」で予約できる新たな制度案を公表した。煩雑な予約手続きを解消し、短距離航空便から鉄道への利用転換を促進する狙いがある。EUが掲げる気候変動対策の一環として、環境負荷の低い移動手段である鉄道の利用拡大を後押しする形だ。

現在の欧州の鉄道網は国ごとに運営会社や予約システムが分かれており、国際列車を利用する際には複数のサイトやアプリを行き来しながら切符を購入しなければならないことが多い。特に乗り継ぎを伴う旅程では、遅延や運休が発生した際の補償範囲も不明確で、利用者にとって大きな負担となっていた。欧州委員会は声明で、「EU域内では持続可能な移動手段を比較し、選択することが依然として難しい」と指摘し、制度改革の必要性を強調した。

新制度では、利用者は異なる鉄道会社をまたぐ旅程でも、一度の予約でチケットを購入できるようになる。例えば、ドイツ、フランス、イタリアをまたぐ長距離移動でも、個別に切符を購入する必要がなくなる見通しだ。また、単一チケット化によって、乗り継ぎ列車の遅延や欠航が起きた場合の補償責任も明確化される。EU案では、遅延を引き起こした鉄道会社が代替輸送や宿泊、食事などを提供する義務を負うとしている。

さらに、EUは大手鉄道会社に対し、自社サイト上で競合他社の列車情報も表示し、必要に応じて他社チケットを販売することを求める方針を示した。これにより、利用者は料金や所要時間を比較しやすくなり、価格競争の促進も期待されている。欧州委員会は鉄道会社に対し、1年以内にシステム改修を行うよう求めている。

一方で、鉄道業界からは反発も出ている。欧州鉄道事業者共同体(CER)の事務局長は、「インフラ整備こそ優先すべきだ」と批判し、線路容量や高速鉄道網の不足を解消しなければ、チケット販売の一本化だけでは十分な効果は得られないと主張した。また、一部事業者も競合他社へのデータ提供義務が民間予約プラットフォームを利する可能性があると懸念している。

EUでは航空需要の拡大が続く一方、鉄道による国際移動は依然限定的だ。EU統計によると、2024年の域内国際航空利用者は4億人に達したのに対し、国境を越える鉄道利用者は約1億5000万人にとどまった。EUは今後、鉄道網の接続性向上や高速鉄道整備も進め、環境負荷の低い移動インフラの強化を図る方針だ。

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