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米国→エルサルバドルへの強制送還者が倍増、移民追放進む

トランプ政権は不法移民対策を最重要課題の一つに掲げ、国外退去の拡大を進めている。
2026年2月5日/米ワシントンDC、エルサルバドルのブケレ大統領(AP通信)

米国から中米エルサルバドルへの強制送還者数が急増している。AP通信によると、2026年1〜3月に米国からエルサルバドルへの送還者数は5033人に達し、前年同期の2547人からほぼ倍増した。背景にはエルサルバドルのブケレ(Nayib Bukele)大統領がトランプ政権の強硬な移民政策に積極的に協力する姿勢を鮮明にしていることがある。

トランプ政権は不法移民対策を最重要課題の一つに掲げ、国外退去の拡大を進めている。移民支援団体の集計では、米国による国外退去便は2024年から2025年にかけて世界全体で約61%増加した。米政府は送還統計を定期的に公表しなくなっており、専門家らは受け入れ国側のデータや航空便情報をもとに実態を分析している。

ブケレ政権は以前から「組織犯罪との戦い」を強く打ち出してきた。国内では4年前から大規模なギャング掃討作戦を展開し、巨大刑務所を建設するなど厳格な治安政策で支持を集めている。一方で、国際人権団体からは恣意的拘束や拷問、司法手続きの不備などを指摘されてきた。

両政権の接近を象徴したのが、2025年に米国がベネズエラ人移民238人をエルサルバドルへ送還した問題だ。米側は犯罪組織「トレンデアラグア」の関係者と説明したが、家族や支援団体は関与を否定し、人権侵害への懸念が高まった。米国はその見返りとして、エルサルバドルに600万ドルを支払うことで合意したとされる。

さらに、米国内で保護資格を持っていたガルシア(Kilmar Abrego Garcia)さんが誤って送還された問題も波紋を広げた。トランプ政権は後に「行政上のミス」を認めたが、ブケレ政権は当初、ガルシアさんの返還に消極的な姿勢を示した。この問題は強制送還を急ぐ米政権と、それを後押しするブケレ政権の関係を象徴する事例として注目を集めた。

エルサルバドルから米国へ渡った移民の多くは、暴力や貧困から逃れるために国外へ移住してきた経緯がある。現在、米国には一時的保護資格(TPS)を持つエルサルバドル人が約20万人いるとされ、トランプ政権が他国向けTPSの打ち切りを進める中、将来的な立場悪化への不安が広がっている。

ブケレ氏は移民抑制への協力を通じてトランプ政権との関係強化を図る一方、米側も中南米での移民管理を進める上でエルサルバドルを重要なパートナーと位置付けている。しかし、その協力関係が人権や法的手続きの軽視につながるとの批判も強まっており、今後も国際社会の議論を呼びそうだ。

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