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タイのタクシン元首相が出所、職権乱用罪などで実刑判決

タクシン氏は2023年、約15年ぶりに帰国した直後に収監された。
タイのタクシン元首相(Getty Images)

タイのタクシン(Thaksin Shinawatra、76歳)元首相が11日、首都バンコクのクロンプレム中央刑務所から釈放された。タクシン氏は職権乱用などにより実刑判決を受け服役していたが、刑期1年のうち約8カ月を終えた段階で仮釈放が認められた。刑務所前には早朝から約300人の支持者や関係者が集まり、同氏の出所を歓迎した。

白いポロシャツ姿で姿を現したタクシン氏は、娘で元首相のペートンタン(Paetongtarn Shinawatra)氏ら家族と抱擁を交わし、支持者に笑顔で手を振った。その後、自宅へ向かう車中で報道陣から声を掛けられると、「長い冬眠をしていたので、今は何も思い出せない」と冗談交じりに語った。

タクシン氏は通信事業で巨額の富を築き、1998年にタイ愛国党を創設した。2001年に首相に就任すると、国民皆保険制度や地方インフラ整備、農村支援政策などを推進し、地方の低所得層から絶大な支持を得た。一方で、強権的な政治手法や一族支配への批判も強く、都市部の中間層、王党派、軍部との対立を深めた。2006年には軍事クーデターによって政権を追われ、その後は海外で事実上の亡命生活を続けていた。

タクシン氏は2023年、約15年ぶりに帰国した直後に収監された。最高裁は首相在任中の職権乱用や利益相反などの罪で禁錮8年を言い渡したが、その後、ワチラロンコン(Maha Vajiralongkorn)国王(ラマ10世、Rama X)による恩赦で刑期が1年に減刑された。しかし収監から数時間後、胸の痛みや高血圧などを訴えて警察病院へ移送され、長期間にわたり特別病室で療養していたことから、「特権的待遇ではないか」との批判が国内で高まった。

これを受け、最高裁は2025年9月、病院滞在の一部は服役と認められないと判断し、刑務所への再収監を命じた。最高裁は必要性の低い手術などによって入院期間が不当に延長されていたと認定した。タクシン氏は再び収監され、11日まで約8カ月間を刑務所で過ごしていた。

今回の仮釈放は法務省が高齢受刑者らを対象に行った審査の一環として決定された。当局はタクシン氏について、「刑務所内での態度が良好で、再犯の可能性は低い」と説明している。今後4カ月間は保護観察下に置かれ、電子監視装置を装着した上で、バンコク市内に居住し、定期的に保護観察官へ報告する義務を負う。

近年のタクシン派は以前の勢いを失っている。娘のペートンタン氏は2024年に首相に就任したものの、翌年に憲法裁判所の判断で失職した。また、タクシン派の中核であるタイ貢献党も直近の総選挙では苦戦を強いられた。それでも地方を中心に根強い支持基盤は維持されており、今回の釈放はタイ政治に影響を及ぼす可能性がある。

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