◎ドゥテルテ大統領は11月15日に上院議の立候補届けを提出し、政界引退宣言を取り消していた。
2021年11月15日/フィリピン、首都マニラの選挙管理事務所、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の上院選立候補届(Getty Images/AFP通信)

12月14日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、来年5月に予定されている上院議会選挙への立候補を取り消すと発表した。

現地メディアによると、ドゥテルテ大統領はマニラの選挙管理委員会で立候補届けの取り消し手続きを行ったという。また、ドゥテルテ大統領の元補佐官であるボン・ゴー上院議員も、14日午前に委員会で大統領選挙への立候補を取り消した。

ドゥテルテ大統領は取り消しの理由を明らかにしていないが、報道官は14日午後の声明で、「大統領は来年5月の総選挙が秩序あるものになることを望んでいる」と述べた。

ハリウッドスターのクリント・イーストウッド氏が演じた法律をほとんど考慮しない映画キャラクター「ダーティハリー」を模して「ドゥテルテハリー」と呼ばれているドゥテルテ大統領は、麻薬組織に対する数千件の超法規的殺人を容認し、軽微な犯罪を含む薬物関連の被疑者6,000人以上を殺害し、西側諸国と人権団体の強い懸念を引き起こした。

国際刑事裁判所(ICC)はこれらの違法な取り締まりを調査しているが、ドゥテルテ大統領はICC調査官の入国を許可しないと誓っており、調査は難航している。

マニラで活動するアナリストのリチャード・ヘイダリアン氏はAP通信の取材に対し、「ドゥテルテ大統領は政治的基盤を失ったように見えるが、自分の人生を守る次の一手を考えている」と語った。「ドゥテルテ大統領はあらゆる可能性を考慮し、作戦を練っています。今回の撤退は自分を守ってくれる後継者に配慮した可能性があります...」

ドゥテルテ大統領は娘のサラ・ジマーマン氏が大統領になることを望んでいたが、ジマーマン氏は大統領選ではなく、フィリピンの元独裁者フェルディナンド・マルコスの息子であるマルコス・ジュニア氏のランニングメイトとして副大統領選に立候補することを決めた。

ドゥテルテ大統領はマルクス家と親密な関係を構築しており、元独裁者をマニラの英雄墓地に埋葬することを許可し、マルクス家が隠し持つとされる資産の調査を終了すると示唆している。

娘の説得に失敗したドゥテルテ大統領は、元補佐官のボン・ゴー上院議員に大統領選への立候補を打診し、自分は副大統領選に出馬すると発表したが、この計画は10月初旬に中止された。

フィリピンの憲法は大統領の任期を6年1期限りとしている。ドゥテルテ大統領が万一副大統領選に勝利し、その後次期大統領が任期中に死亡もしくは何かしらの理由で無能力になった場合、再びドゥテルテ大統領が指揮を執ることになる。

ドゥテルテ大統領は11月15日に上院選の立候補届けを提出し、政界引退宣言を取り消していた。国の主要な人権団体は先月の声明でドゥテルテ大統領の立候補に深刻な懸念を表明し、「大統領は人権侵害の説明責任を回避することしか考えていない」と非難した。「あの男は上院で権力を維持し、ICCの調査を妨害し続けるつもりです...」

フィリピンの大統領選は来年5月9日に実施される予定。ドゥテルテ大統領と決別した与党PDP–ラバン党のマニー・パッキャオ上院議員も大統領候補のひとりである。

2019年9月3日/フィリピン、首都マニラの政府庁舎近く、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領と娘のサラ・ジマーマン氏(Getty Images/AFP通信)
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