◎輸出制限は国内の需要を満たし価格を抑えるが、輸出で収益を上げている農家や企業は打撃を受ける。
2022年4月2日/マレーシアの市場(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

マレーシア政府は23日、国内の食料価格高騰と鶏肉が不足していることを受け、6月から鳥の輸出を制限すると発表した。

ロシアのウクライナ侵攻による食料価格の高騰はアジアの市場に深刻な影響を与えており、インドは小麦、インドネシアはパーム油の輸出を停止した。

一部の専門家はアジアの脆弱な国々が国内の食料価格を抑えるために、より多くの貿易制限をかけると懸念している。

マレーシアの市場では鶏肉の価格が高騰し、現地メディアによると、一部の小売業者はひとりあたりの販売量を制限しているという。

同国のヤーコブ(Ismail Sabri Yaakob)首相は23日、「国内の価格と生産が安定するまで鳥の輸出を制限する」と発表した。

地元メディアによると、同国は毎月360万羽を出荷しているという。

シンガポールは国内で消費する鶏の3分の1をマレーシアから輸入し、国内の加工場で処理、販売している。

シンガポール当局は23日、市民に冷凍鶏肉を購入するよう促した。冷凍鶏肉は長期保存が可能で、市場で販売されているチルド鶏肉(調理済み含む)より安価で入手しやすい。

また当局は、「チルド鶏肉の供給に一時的な混乱が生じるかもしれない」と警告し、消費者に買いだめを控えるよう促した。

ロシアのウクライナ侵攻で世界の食料価格は高騰し、特に小麦、大麦、トウモロコシの消費量の多い発展途上国に大きな影響を与えている。

世界銀行は先月、食料価格の記録的な高騰により、何億もの人々が栄養失調や飢餓に直面する可能性があると警告した。

ウクライナは小麦の主要輸出国のひとつであり、ロシアの侵攻で南部の港湾都市が封鎖されて以来、その輸出量は激減している。

港湾都市が封鎖された結果、収穫済みの小麦は行き場を失い、今年の小麦収穫と作付けに影響が出始めている。農家は貯蔵タンクの小麦が出荷されないと次の小麦を収穫できず、作付けもできない。

ウクライナのスヴィリデンコ(Yuliia Svyrydenko)第一副首相は23日、BBCニュースのインタビューの中で、「国際社会はウクライナに滞留する数百万トンの穀物を国外に輸出できる安全な通路を確保すべきだ」と語った。

世界食糧計画のビーズリー(David Beasley)事務局長もダボス会議(世界経済フォーラム)の中で、「ロシアのウクライナに対する輸出妨害は世界の食料安全保障に対する宣戦布告である」と語った。

ビーズリー氏は第二次世界大戦以来、最悪の食料危機が侵攻していると警告した。「推定4億人がウクライナの穀物に支えられています。それに肥料不足、干ばつ、燃料価格の高騰を加えると、地球は地獄の様相を呈することになるでしょう」

インド政府は今月初めに小麦の輸出を原則禁じ、価格を押し上げた。

パーム油の価格も主要生産国のインドネシアが自国の食用油の価格を抑えるために3週間輸出を禁じたことで高騰した。この禁止令は23日に解除されている。

輸出制限は国内の需要を満たし価格を抑えるが、輸出で収益を上げている農家や企業は打撃を受ける。

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