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印パ水利条約は「有効」、ハーグ仲裁裁判所、インドに履行命じる

インダス川水利条約は1960年に世界銀行の仲介で締結され、インダス川とその主要支流の水利用についてインドとパキスタンの権利を定めている。
インドのインダス川(Getty Images)

インドとパキスタンの間で河川の水資源を分配する「インダス川水利条約」をめぐり、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は8月31日、条約は現在も完全に有効であり、インドは一方的に履行を停止できないとの判断を示した。インドは2025年4月、係争地カシミール地方で発生した観光客襲撃事件を受け、パキスタンとの緊張が高まったとして条約を停止していた。今回の判断は両国関係が悪化する中で水資源をめぐる対立に国際的な司法判断が示された形となった。

インダス川水利条約は1960年に世界銀行の仲介で締結され、インダス川とその主要支流の水利用についてインドとパキスタンの権利を定めている。長年にわたり両国が複数の戦争や軍事衝突を経験する中でも維持されてきた重要な合意であり、パキスタンでは農業用水の約8割が同条約の対象となる水資源に依存している。

インドは2025年4月、カシミール地方の観光地で26人が死亡した襲撃事件をめぐり、実行犯の一部をパキスタン人と特定したとして同国を非難。パキスタン政府は関与を否定したが、インドはその後、条約を「保留」状態にすると表明した。さらにインドがカシミール地方の水力発電事業で貯水能力を高める工事を進めたことから、パキスタンは条約違反の可能性があるとして法的措置に踏み切った。

仲裁裁判所は今回、インドが条約を停止する法的な根拠はなかったと判断した。また、インドがカシミール地方で建設を進める水力発電所について、ダム壁や取水施設など一部の工事を制限する暫定措置も命じた。今後、世界銀行が任命した専門家が条約に適合した建設計画かどうかを審査し、2027年7月までに判断を示す予定だ。

一方、インド政府は今回の判断を受け入れておらず、仲裁裁判所の管轄権そのものを認めていない。インド外務省は8月31日、2025年に決定した条約の保留措置は引き続き有効であり、今回の命令はインドの主権的な判断や進行中の事業に影響を与えないとの立場を示した。これに対しパキスタン側は、条約の有効性が確認されたことを歓迎した。

インダス水系は両国の農業や生活を支える生命線で、水資源の管理は安全保障や外交と直結している。今回の判断によって条約の法的地位は明確になったものの、インドが判断を拒否しているため、実際の履行をめぐる対立が直ちに解消される見通しは立っていない。

核兵器を保有する両国が水資源をめぐって再び緊張を高めれば、カシミール問題を含む地域の安全保障環境にも影響を及ぼす可能性がある。

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